日本版CIAについて | 朝倉新哉の研究室

朝倉新哉の研究室

全ては日本を強くするために…

やあ、みなさん、私の研究室へようこそ。

対外諜報機関(日本版CIA)を作ろうという動きがありますが、
心配していたことが、起こっているようです。

>>>
2015年3月5日(木)

なぜ、日本はCIAをつくることができないか

PRESIDENT 2015年3月16日号

テロ組織IS(ISIL)による日本人人質事件を受け、
対外情報機関(日本版CIA)の設置に注目が集まっている。
米中央情報局(CIA)や英国秘密情報部(SIS、通称MI6)など
海外の諜報機関は日本でもよく知られているが、
日本にはそうした海外で諜報活動を行う単独の機関がない。
今回の事件でも、
人質の情報とISILとの交渉はヨルダン、トルコ政府に任せ切りだった。

その反省から、
自民党のインテリジェンス・秘密保全等検討プロジェクトチーム(岩屋毅座長)
が日本版CIAの設置に向けた調査を開始することを表明。
安倍晋三首相も2月5日の国会で
「(日本版CIA設置については)政府でも議論しており、
 国会の理解をいただけるよう期待したい」
と述べるなど、設置に意欲的だ。

戦後の日本は“平和国家”を看板に掲げ、
海外での諜報活動は内外からも求められてこなかった。
2001年の9.11同時多発テロ事件を契機に、
日本でも諜報機関設置が論議されるようになったものの、
警察庁、外務省、防衛省、公安調査庁など関係省庁間の主導権争い
 が原因でストップしている」(官邸関係者)
というのが実態だ。

こうした経緯を踏まえ、安倍首相は
「諜報機関をつくるなら、トップは役所への帰属意識が強い人ではダメだ」
と周囲にそう漏らしているという。

官邸関係者によると、首相は
「警察庁の外事畑出身で国際問題に詳しい北村滋内閣情報官を評価している」
とされ、
北村氏がトップを務める
内閣情報調査室(内調)を母体にした諜報機関
を首相が考えているフシがある。
北村氏は11年12月に内閣情報官に就任し、
今回の人質事件では海外諜報機関とのカウンターパートを務めた人物だ。

だが北村氏率いる内調は警察庁の牙城。
内調は、
内閣の重要政策に関する情報収集と調査、分析を行う機関で、
警察庁、防衛省、外務省、経産省などの出向者からなる混成部隊だが
「中核は警察庁であり、
 外務省から出向の次長に警察サイドが重要情報を上げない、
 といった噂が絶えない」(内調関係者)
のが実態だ。

今回もまた、省庁間の縄張り争いが原因で構想倒れに終わるのか。
>>>

http://president.jp/articles/-/14675から引用。
(赤字強調はブログ主による)

”省庁間の主導権争い”
”省庁間の縄張り争い”

対外諜報機関を作るに当たっては、
こういう懸念があることを、
当ブログの2012年5月17日の記事で、述べていました。

>>>
佐藤 そもそもインテリジェンスの世界では、組織よりも人なんです。
   人材を育てるのが先で、組織をつくるのは最終段階。

   まず器をつくって、そこに自分たちをはめ込もう
   というのは、典型的な官僚の発想です。
   それは同時に、インテリジェンスからもっとも遠い発想でもある。
   いま新しい情報機関をつくることになったら、日本の最悪の面が出てきますよ。
   警視庁と外務省の綱引きになる。
   そこに公安調査庁を持つ法務省も割り込んで、
   三つ巴の縄張り争いが始まるのは間違いありません


手嶋 すでに、その情報機関をイギリス型にしようといった声も聞こえてきますが、
   イギリスのSISは機構上外務省に属しています。
   その場合は日本でも外務省の統制下に置かれることになります。

佐藤 だから、霞が関周辺で「イギリス型で」という声を聞いたら、その時点で
   「ああ、外務省の息のかかった人ね」とわかる
   要は外務省のアンブレラの下に置くという結論が先にあるわけです。
   一方、「CIA型で」という声を聞いたら、「ああ、警察の人ね」とわかる
   現在の内調を強化して、警察直結の組織をつくるという発想なんです。

   こういう組織文化があるかぎり、どうやってもこの綱引きは起きるんですよ。
   このスキーム(図式)をぶち壊すのは政治家にしかできない

   官僚が縄張りを守ろうとするときは、尋常ならざるエネルギーを発揮しますからね。
   そういうことをさせないためには、
   組織をつくる前にワンクッション入れたほうがいいんです。
   急がば回れで、まずは人材の育成から始める。
   国際スタンダードの本格的なインテリジェンス能力を備えた人間を5年間で50人、
   インテリジェンスを理解する人間を200~250人ほど育てることが急務です。
   それだけのパイを作っておけば、そこから新しい組織をつくることができるでしょう。
   その5年間に、器についての研究もすればいいんです。
>>>   

『インテリジェンス 武器なき戦争』佐藤優 手嶋龍一 幻冬舎新書 から抜粋して引用。
(青字強調はブログ主による)

2012年5月17日の記事では、上記の文を引用して、
対外諜報機関という”器”を作るよりも、
対外諜報をやれる人材育成を先にやれ!
と述べました。
しかし安倍内閣は、器を先に作ろうとし、
しかもその器をどう作るかで、
各省庁が、主導権争い、縄張り争いを演じている、という
最悪の展開になっています。
これでは、対外諜報機関ができても、有効に機能するかどうか心配です。

しかし、日本はかつて、対外諜報で驚くべき実績を上げていました。

>>>
2015.3.1 09:11

【戦後70年】
マレー作戦「日本、完璧な諜報」 英秘密文書「最悪の降伏」分析


第二次大戦で
「東洋のジブラルタル」といわれたシンガポールが
日本軍によって陥落して73年。
チャーチル英首相が
「英国史上最悪の降伏」と嘆いた作戦の背景に、
「第五列」など「完璧な諜報活動」があったと、
英国側が分析、評価していたことが
英国立公文書館所蔵の秘密文書で判明した。
事前に地理や軍事力の情報を収集し、
植民地支配から現地人を独立させるため、支援して協力させていた。
戦前の日本のインテリジェンス(諜報)能力が高かったことが改めて浮き彫りとなった。

「マレーにおける日本のインテリジェンス活動」(KV3/426)によると、
英国の防諜機関のシンガポール支部は、
日本が情報収集活動を本格化させた1940年7月に報告書で
日本はマレー半島、とりわけシンガポールで完璧な諜報活動を展開している。
 精巧な組織が存在しているとは聞かないが
 国を挙げてかなり発達した諜報組織を持っている」
と警戒していた。

さらに41年4月、
「日本の諜報活動は、
 スパイとして生まれてきたような日本人全てが関わり
 彼らがこの国にいる限り続くだろう」
と在留邦人が総出で情報収集していることを指摘。
「あらゆる日本人を捕虜にし、国外追放する方法を検討すべきだ」
と結論づけた。

実際に同年12月8日に開戦すると、
在留邦人約3千人がインドのプラナキラ収容所に抑留された。

「英国史上最悪の降伏」について、
42年6月2日付の報告書で陥落時のシンガポール防諜機関の責任者は、
「少なくとも6人の内通者が日本の侵攻を手引きした」
と指摘、さらに同7月23日付で
「MI6」高官がMI5海外担当責任者にあてた書簡で、
「ここ数年日本は
 想定を超えて驚くべき『第五列』活動を毎日のように行った」
と指摘して現地人を味方につけた「第五列」を「敗因」とした。

そして、マレーでは、
全てのマレー人が
積極的か潜在的に「第五列」に参加している
との見方が広がるほど、
日本が活動を活発化させたにもかかわらず、
「英国側が重大に受け止めず官僚的態度に終始し、
 英将校らが不用意に重要事項を公然にしたことが悔やまれる」
(42年7月30日、MI5幹部報告書)としている。

日本の「第五列」活動が成功したことに関連して、
「アジアを通じて日本の仏教の僧侶たちが頻繁に情報収集しながら、
 反キリスト教の汎アジア主義を訴えた」
(42年6月6日報告書)と、
欧米白人の植民地支配からの解放を訴えたことを記している。 
(編集委員 岡部伸)

【用語解説】
マレー作戦 
日本軍は1940(昭和15)年夏ごろから
軍、外務省、民間企業や台湾総督府、南方協会などが協力して
マレー半島からシンガポールに至る
地理や英軍の軍事状況、衛生防疫などを徹底調査し、海南島で上陸訓練まで行った。
真珠湾攻撃の数時間前に
マレー半島北端に上陸した日本軍は、
55日間で1100キロを進撃し、42年2月8日、
ジョホール海峡を渡ってシンガポール島へ上陸し、15日に英軍が降伏した。

【用語解説】
第五列(fifth columnあるいはQuislings)
自国の中に存在する
仮想敵国および敵国に味方する勢力、裏切り者、スパイ、反逆者。
有事の際は
敵国に呼応して自国で破壊工作、情報詐取、攪乱(かくらん)、世論醸成、文化侵略
などを行う。
スペイン内戦で
4個部隊を率いてマドリードを攻めたフランコ派のモラ将軍が
市内にも呼応して蜂起する5番目の部隊(第五列)がいる
と言ったことが起源。
>>>

http://www.sankei.com/world/news/150301/wor1503010009-n1.htmlから引用。
(青字、赤字による強調はブログ主による)

イギリスといえば、世界最高クラスの諜報先進国です。
そのイギリスから、”完璧な諜報”と言われたのです。

>精巧な組織が存在しているとは聞かないが

>スパイとして生まれてきたような日本人全てが関わり

というのは、
対外諜報は、”器”を作ることよりも、人材育成が大事だ、
ということを示している、と言えるでしょう。

そのためには、日本版CIAを作るよりも、
まず、人材育成のための教育機関を作ったほうがいいと思います。
対外諜報のための人材育成機関、つまり、陸軍中野学校の現代版です。


















スパイ養成機関だった陸軍中野学校
http://yoshiharamasami.digi2.jp/page082.htmlより転載

イギリスが”完璧な諜報”と呼んだマレー半島での諜報活動は、
中野学校出身者の活躍を抜きにしては語れないのです。


日本版CIAより現代版中野学校の設立が先決!
ご賛同くださる方はクリックをお願いします。

人気ブログランキングへ