地政学は外交政策の基本 | 朝倉新哉の研究室

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地政学とは、

ウィキペディアには、

>地理的な位置関係が政治、国際関係に与える影響を研究する学問である。

>地政学とは地理的な環境が国家に与える政治的、軍事的、経済的な影響を
>巨視的な視点で研究するものである。
>イギリス、ドイツ、アメリカ合衆国等で国家戦略に科学的根拠と正当性を与えることを目的とした。

とあります。

地政学を学問だと言っていますが、果たして地政学が学問といえるのか、疑問です。

しかしそれは、とりあえず置いておきます。

大事なのは、アメリカ、イギリス、ドイツといった国々が、地政学の知見に基づいて、

外交政策や国家戦略を推し進めている、という点です。

地政学を知らずに、外交を進めるなどありえないのです。

鳩山氏が、”東アジア共同体”などと言って、日米同盟から日中同盟への移行を目論んだり、

日米同盟を破棄して、日本は独立すべきだ、などと言う人もいます。

地政学を知っていたら、それがどれほど愚かなことかが、わかります。

地政学を知っていれば、そのような考えは出てきません。

日中同盟は絶対ありえないし、日米同盟を破棄することもありえないのです。

(アメリカの国力が現在の半分以下になればありえますが)

地政学は外交政策の基本なのです。

同時に国家戦略の基本でもあります。

外交政策を策定するうえで、基本的な枠組みを提供してくれるのが地政学です。


現代地政学の祖は、マッキンダーです。(サー・ハルフォード・マッキンダー)

マッキンダーの地政学のことを、通称、”ハートランドの理論”と呼びます。

マッキンダーの理論は、以下の言葉に集約されています。

「東欧を支配する者はハートランドの死命を制する。
 ハートランドを支配する者は世界島の運命を決する。
 そして世界島を支配する者はついに全世界に君臨するだろう。」

ハートランドとか、世界島とか、聞きなれない言葉があって、何のことかわからないと思います。

世界島とは、ユーラシア大陸とアフリカ大陸をひっくるめた呼び方です。

スエズ運河が出来るまでは、ユーラシアとアフリカは陸続きでしたから、

1つの巨大な”島”だったわけです。

ハートランドとは

国家戦略研究
『地政学入門』曽村保信 中公新書より

ピボットエリアと書いてある部分がハートランドです。

マッキンダーは最初、ハートランドではなく、ピボットエリアと呼んでいました。

マッキンダーは英国人ですから、”船乗りの視点”で世界を見ていました。

世界島という概念も”船乗りの視点”でユーラシア、アフリカを見た場合の呼び方だったわけです。

ハートランドは”船乗りの視点”で見ると、”船では行けない地域”なのです。

”船では行くことができない”、これは、”英国が影響力を及ぼすことができない”ことと

同じことを意味しています。

”海洋文化の影響が及びにくい地域”とも言えます。

こちらをご覧ください。

国家戦略研究
『遊牧民から見た世界史』杉山正明 日経ビジネス人文庫 より

この”中央ユーラシア”という括りと、ハートランドは、同じではありませんが、

両者が周辺地域に与えた影響はよく似ているので、取り上げました。

中央ユーラシア(≒ハートランド)に巨大勢力が現れ、周辺地域を圧迫する…。

その例として

国家戦略研究
『遊牧民から見た世界史』杉山正明 日経ビジネス人文庫 より

歴史の教科書には、漢王朝は、巨大国家であったように書かれていますが(確かに大きいですが)、

この図で見ると、かなり匈奴に圧迫されている印象を受けませんか?

もっと端的なのは、モンゴル帝国です。
国家戦略研究
『遊牧民から見た世界史』杉山正明 日経ビジネス人文庫 より

モンゴルは、全ユーラシア制覇の一歩手前までいっていたのです。

当時、アフリカには、モンゴルに匹敵する軍事力をもった国などありませんから、

モンゴルがユーラシアを制していたら、アフリカまで征服して、”世界島完全制覇”を成し遂げていた

でしょう。

実は、第一次世界大戦のときも、似たような状況にありました。

『地政学入門』曽村保信 中公新書によると、

>>>
ドイツが勝っていたら、いったい世界はどういうことになっていたか?
おそらくドイツは、そのシーパワーにとっても世界最大の基地を獲得して、
ユーラシアとアフリカをふくめた世界島に君臨していたにちがいない。
これは、ドイツの戦争哲学およびその工業力や内陸輸送の能力等に照らしてみても
明らかである。
>>>

*”シーパワー”という言葉は、別の機会に説明します。

マッキンダーは、”船乗りが行けない内陸部”に巨大な勢力が出現して、周辺地域を征服していくと、

やがては、世界全体が征服されてしまう、(そうなったら英国も生きていけなくなる)

と考えて、”船乗りが行けない内陸部(英国の影響力が及ばない地域)”である

ハートランドを危険視し、この地域の動向を常に監視すすべきだ、と考えたのです。

イギリスの外交の基本にあるのは、このマッキンダーの考えです。

イギリス同様、ユーラシア大陸の近くに浮かぶ島国である日本も、

マッキンダーの考えを踏まえた外交を展開しなければなりません。

イギリスと日本は、ユーラシア大陸の近くにある島国である、という地理的条件が同じです。

「地図を見れば、その国の外交政策がわかる」という言葉があります。

(うろ覚えですが、ナポレオンの言葉だったと思います)

地理的条件によって、どんな外交を展開すべきかは、大体決まってくるものなのです。

地理的条件が似ているイギリスと、日本の外交方針は似たものになって当然です。

イギリス外交の基本となっている”マッキンダー地政学”を知らなくては、

日本は、”外交はできない”と言っても過言ではありません。



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