近藤誠さんの著作「ワクチン副作用の恐怖」に対し、批判投稿を送ったとしてPRしている岩田健太郎氏。しかし、自身のブログでは、近藤誠氏に対し、「教祖」と「根拠に基づかないレッテル貼り批判」を行っている。そこで彼がどんな人物なのか少し調べてみると驚きの事実が判明した。

 

「アメリカにいたぼくはエビデンス・ベイスド・メディシン(※)をバリバリ学んでいたが、日本の医療界は数周時代遅れに見えた。」

 

※ エビデンス・ベイスド・メディシン(根拠に基づく医療、EBMと略されることが多い。エビデンスそのものではない)

抗がん剤の標準治療のようにエビデンスを無理やり患者に押し付けるのではなく、エビデンスを吟味し、患者の意向と、医療環境と、医師の経験を踏まえて、患者への満足度と、医療効果を狙う治療の選択のあり方をいう

 

EBMを学んだ彼はどのような医療を行っているのか、検索してみると面白い文献を見つけた。

 

「インフルエンザ診療における意思決定モデルの開発現象と治療に立脚した診断方針の試案」

日本東洋医学雑誌  Vol. 64 (2013)  No. 5  p. 289-302
岩田 健太郎1),  野口 善令2),  土井 朝子3),  西本 隆4) 
1) 神戸大学大学院医学研究科微生物感染症学講座感染治療学分野 2) 名古屋第二赤十字病院総合内科 3) 神戸市立医療センター中央市民病院感染症科 4) 西本クリニック

 

まず、エビデンス関連の記載を抜粋・要約すると、

 

・インフルエンザの迅速検査キットは、感度が低く偽陰性(見逃し)が多い

・インフルエンザは、症状で判別するのが現実的である

・タミフル(ノイラミニダーゼ阻害薬(NI))は、有病期間を1日程度減らすとされているが、死亡等の重症者を減らせない

・タミフルの効果は、ハイリスク患者に対する試験で認められたもので、広く一般患者へ適応するのは困難

・インフルエンザに漢方薬が効くというエビデンスは貧弱

・タミフルは全世界の7-8割が日本で使われ、乱用されている

・迅速検査も日本だけで乱用されている

・フランスのように、インフルエンザにタミフルを使わず、自宅療養する国でも、新型インフルの死亡率は低かった

・解熱剤(NSAIDs)は脳症を引き起こすリスクがある

 

エビデンスに関する記載に特筆することはないのですが、その後が驚きです。

 

 

 

とりあえず、多くの患者(具体的には、高血圧単独以外の多くの既往、65歳以上、2歳未満、妊婦、産褥期等)をハイリスクとみなし、タミフルをバンバン使う方針です。

 

 

 

 

 

一方、タミフル(オセルタミビル)の<添付文章>にはこう記載されています

  • 1歳未満の患児(低出生体重児、新生児、乳児)に対する安全性及び有効性は確立していない
  • 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人に投与する場合には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。動物実験(ラット)で胎盤通過性が報告されている。]

 

次に、ハイリスク以外の患者には、選択肢を提示して自分で選ばせる方針です。

 

そうすると、当然情報不足からタミフルを選択する人が増えるわけですが、おかまいなしということでしょう。

 

ハイリスク患者以外で、タミフルを希望する患者には、高熱などの症状がある人は、希望すれば誰でも、検査もせずに処方しますということです。臨床症状的にインフルエンザかどうか疑わしい場合(事前確率50%以下)に限って迅速検査をするとしていますが、結局は多くの事例でタミフルを使いましょうとなるでしょう。

 

十分な説明がなければ、無治療を選ぶ人は稀でしょうから、結局は軽症、低リスクでも、検査陽性ならタミフル、もしくはエビデンスに乏しい漢方となるでしょう。

 

EBMをバリバリ学んだと自負する人の治療方針と言えるのでしょうか? 医者の責任放棄ともいえる逃げの意思決定マニュアルではないのか? 無駄な迅速検査を減らすといった大義名分を悪用し、検査陰性となる症例を減らし、タミフルをどんどん処方するためのトリックではないでしょうか。このフローでは、検査の乱用を減らしても、無駄な治療は減りません。

 

EBMというには、具体的な効果の程度や有効性(NNT)などを考慮し、治療の不利益も提示して判断したほうがよいと思うのですが。

 

 

そして、この論文の1年後に、タミフルのエビデンスに重大な問題があったことがBMJ、コクランで公開され、重症化を防ぐエビデンスはないとして、世界中でタミフルは無用な薬として認識されます。 

 

http://www.npojip.org/sokuho/no168-3.pdf

http://www.bmj.com/content/348/bmj.g2545.long

 

コクランによる結果の公表は2014年でしたが、2011年の時点において、ロシュ(タミフル製造元)の臨床試験について、公開されていない試験が多数があることが日本の研究者より指摘され、岩田氏がこの論文を書いた2012年当時には、ロシュに対し情報公開を強く迫る活動が行われていました。この経過は、薬害オンブズパースン会議にも公開されていますし、岩田氏ほどの専門家であれば、この動きは当然にご存じのはずです。しかし本論文では、タミフルの疑義については一切触れられていません。

http://www.qlifepro.com/news/20130409/roche-to-offer-a-flu-remedy-tamiflu-all-clinical-data-promise.html

 

 

 

そして、2017年には、製薬会社の影響力が大きいWHOですらタミフルを格下げしました。

http://www.bmj.com/content/357/bmj.j2841/rr

 

 

一方の漢方についてのエビデンスですが、そのエビデンスの貧弱さは、ホメオパシーと同レベルです。

 

(漢方とインフルエンザのコクランレビュー)

http://www.cochrane.org/ja/CD004559/inhuruenzanidui-suruhan-fang-yao

 

(ホメオパシーとインフルエンザのコクランレビュー)

http://www.cochrane.org/ja/CD001957/inhuruenzayainhuruenzayang-ji-huan-noyu-fang-oyobizhi-liao-womu-de-tositahomeopasinoosirokosinamur

 

私は漢方も、ホメオパシーもどっちもプラセボ効果と推測していますが、プラセボとしての効果を期待して用いるならば、害のないホメオパシーの方がマシだと思います。

 

ちなみに、スペイン風邪では、積極的治療(アスピリン大量投与)が大量死をもたらし、

https://academic.oup.com/cid/article/49/9/1405/301441

薬効のないホメオパシー治療で死者が少なかったとされています。

http://jphma.org/fukyu/overseas_090806_Spanish_grippe.html

 

漢方のエビデンスは不十分ですが、保険診療として認められる既得権益があるので、あまり批判を受けません。一方、ホメオパシーは保険診療にはならないので、目の敵として徹底的にたたかれます。薬効がないと批判するホメオパシーで治ってしまえば、医師の面目は丸潰れですし、収益源の患者を奪われます。

 

要は、医者と製薬会社に金が落ちるかどうか、医師の権威を守れるか、患者不在の医師都合によるホメオパシー排除なのです。

 

なお、誤解の無いように言っておきますが、私はホメオパシーを擁護するつもりも、非難するつもりもありませんので、ホメオパシーに関する批判・問い合わせはご遠慮下さい。

 

ただ、ホメオパシーを非科学として批判をするのであれば、高価な漢方調剤や有効性の乏しい漢方薬、過去には違法行為で処分も受けた怪しげなオーソゴニストについても非科学として批判しないと、ただの利権確保の情報工作としての批判を免れないと言っておきます。

 

 

最後に、岩田氏自身がどう対処しているのか探してみると、こんな記載を見つけました。

https://medicalnote.jp/contents/150330-000037-AGJIKX

 

くすりも飲まずに治すことも

自分はよく海外出張に行きますが、海外では地域によって漢方が妙な誤解を生んでしまうこともあり、漢方薬を持って行きにくい場合があります。このため海外で風邪になってしまった時は、布団をかぶって暖房をしっかりかけて、できる限り厚着をして風邪を治します。

先日海外出張したときに風邪を引いてしまったことがありました。このときには飛行機の中で一人だけ厚着をして寝て、5時間で治すことができました。あたたかくするだけでも、十分に麻黄湯と同じ効果を得られるのです。

 

効果が乏しく、害のある薬は、自分には使いませんよね(笑)

 

 

<まとめ>

バリバリEBMを学んだ岩田健太郎氏は、患者にはエビデンスに疑義のあるタミフルや漢方薬を勧める一方で、自分にはEBMを活用し、薬を飲まずに治していた。

 

 

 

◆ 村中璃子(中村理子)氏は2009年の新型インフルエンザにも関与した宣伝屋(子宮頸がんワクチン)

 

◆ ワクチン副作用の恐怖 ~ 近藤誠氏に恐怖する小児科医と産婦人科医