医学情報について、元の論文情報を精査し、総合的に検討した、

世界でも信頼性の高いコクランシステマティックレビューという論文集があります。


製薬業界の資金ではなく、独立機関として、世界中のボランティア医師の協力により、

本当に必要な医療のための情報を整理したものです。


そのレビューに乳がん検診(マンモグラフィー)の報告があります。


乳癌検診については、何度もブログで説明していますが、

乳癌が死亡原因として亡くなる人の一部を減らすかもしれませんが、

癌で死ぬ人を減らせないし、総死亡も減らせません。


つまり、命を救うことはできずに、過剰診断と偽陽性・偽陰性の莫大な損害を生み出すシステムです。


(利権業者にとっては莫大な利益を生み出すシステムでもあります)


実は、厚労省の委託事業 Mindsにおいて、

いくつかのコクランレビューの要約の日本語訳は一般に公開されていますので紹介します。



http://minds.jcqhc.or.jp/n/med/7/med0006/T0011405


乳房X線撮影法による乳癌のスクリーニング(2013 issue 6, Update)  


** 一部抜粋引用 **


主な結果:


適格な試験8件を同定した。ランダム化によって比較可能な群を設けられなかったため、試験1件を除外した。適格な試験では、年齢範囲39~74歳の女性600,000例を解析に組み入れた。


ランダム化が十分な試験3件では、13年後の乳癌死亡率に関して統計学的に有意な低下は認められなかった[相対リスク(RR)0.90、95%信頼区間(CI) 0.79~1.02)。


ランダム化が最適とはいえない試験4件では、RRが0.75(95%CI 0.67~0.83)を示し、乳癌死亡率の有意な低下が認められた。試験7件すべてを統合した場合のRRは、0.81(95%CI 0.74~0.87)であった。

乳癌死亡率は、主として死因の差別的誤分類のため、スクリーニングに都合の良いバイアスがかかった信頼性の低いアウトカムであることが判明した。


ランダム化が十分な試験では、


乳癌を含む10年後の総癌死亡率(RR 1.02、95%CI 0.95~1.10)


または


13年後の総死亡率(RR 0.99、95%CI 0.95~1.03)に対する


スクリーニングの効果は認められなかった。

腫瘍切除および乳房切除の合計件数は、スクリーニングを実施した群のほうが有意に多く(RR 1.31、95%CI 1.22~1.42)、乳房切除の件数も同様であった(RR 1.20、95%CI 1.08~1.32)。放射線療法の使用も同様に増加したのに対して、化学療法の使用については、差異は認められなかった(試験2件のみに関してデータが入手可能)。



女性に対してスクリーニングの案内を行う際には、利益と有害性の両面を十分に説明する必要があります。スクリーニングプログラムを受けるかどうかを検討する際に十分な説明を踏まえて判断できるように、エビデンスに基づく誰でもわかる小冊子を数ヵ国語で作成し、www.cochrane.dk で公開しています。


試験の実施以降、治療が大きく進歩し、乳癌に対する認識が高まったことから、現在ではスクリーニングの絶対効果は試験結果よりも小さい可能性が高いと思われます。


最近の観察研究は、行きすぎた診断が試験結果よりも多く行われていることのほか、進行癌にかかる割合がスクリーニングによってほとんど低下しない、あるいはまったく低下しないことを示しています。




併せて残念なツイートを紹介します(宋美玄さんと、そのご友人のNATROM氏)


https://twitter.com/mihyonsong/status/705186916258349056





あのNATROM氏も、全死亡の重要性は理解しているようですね。

仲が良いのですから、数字音痴の宋氏へ初歩から指導して欲しいものです。




なお、わかりやすいように、数字を丸め、

1000人が10年検診するケースを考えると、下記表のようになります。


http://press.psprings.co.uk/bmj/january/cancerscreeningedit.pdf

BMJ 2016;352:h6967 doi: 10.1136/bmj.h6967 より





※ 少し残念なのは、検索でヒットしないよう「言葉」を選んでいることと、

乳がん検診という一般市民が知るべき情報なのに、医療提供者向けのページに隠していること。


逆SEO対策?? 

市民に真実を知られたくないという意図が透けて見えます。


mammography マンモグラフィを、非日常的な用語「乳房X線撮影法」へ翻訳し、

Screeningを検診と訳さずに、一般人に馴染みのないスクリーニングとそのまま使っています。


検索に重要なキーワード、検診、マンモグラフィという言葉を意図的に避けています。


<補足>

子宮頸がん検診については、ランダム化比較試験が行われていないので、

コクランレビューは存在しません。


<関連記事>


◆ がん検診で死亡率は減少しない(BMJ論文)

◆ NATROM氏のウソ~情報操作(乳がん検診の過剰診断を過小に見せるトリック)

◆ 教育という名のマーケティング~小学生への洗脳教育「がんのひみつ」