最近名前を聞かない面々が続々と・・・・


監督フィリップ・カウフマン、

医師トマシュにダニエル・デイ・ルイス、

トマシュの愛人サビーナにレナ・オリン、

トマシュの妻テレーザにジュリエット・ビノシュ・・・・


いやあ、久々に観賞しました。

昔観たときはなんともラブシーンだらけでどちらかというと、

「エロティック」とかにジャンル分けされるような内容の映画だと思ったが、

今回見ての感想は思い切り「歴史」ものだったということ。


3時間超えの本作だったが、今回とても興味深く見ることができました。


原作は未読。

このタイトルは当時話題になった。


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20世紀恋愛小説の最高傑作らしい!

これはぜひとも読んでみたいです。



そしてこのパッケージ写真も相当話題に・・・・


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もういっちょ!

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今回はサビーナという人物が非常に気になった。

なぜサビーナはいつも帽子をかぶってるのだろうか・・・帽子

ただのコスプレか?と思ってたものだ(恥)

以前はよくわからなかった。


祖父の祖父から受け継いだ帽子を肌身離さず持っているサビーナ。

帽子は非常に重要なアイテムだと思う

トマシュとサビーナの関係はただのセックスフレンドのようでもあるが、

同士のような密接な間柄。

言葉や感情だけでは言い表せぬものだと思う。

二人は一心同体なのか?

トマシュは脳外科医。

彼はいつでもどこでも自分の好みの女性には「服を脱いで」と口説く。


出張した先の療養施設の食堂で働くテレーザ。

プールで泳ぐ彼女を一目みるなり、いつものクセが出るトマシュ。


獲物を狙う黒ヒョウのようにしなやかに後を追うダニエル・デイ・ルイス!

久々に見たけれどやっぱりいいね!

身のこなしがとっても優雅。

ひとつひとつのしぐさがバレエを見てるようだわ。


なんか好きなショット。


プールでのこのショット!なんか好きだわ。

多分、この裸の男達はキッチュ=通俗さを表しているのかなと思う。

それを見下ろすトマシュはそこには属さない存在ということかな?

しかしテレーザのほうが上手だった!

彼女もまたトマシュのインテリぶりにひかれて退屈な田舎から彼のいる町におしかけちゃう。

そしてはじまった同棲生活。


自分の愛人であるサビーナにテレーザの職探しを頼むトマシュ。

普通なら泥沼になりそうなのに、サビーナとテレーザは

独特な関係になっていく。


画家のサビーナの紹介でカメラマンの職にありつくテレーザ。


でも食堂のウェイトレスだったテレーザが

いきなりカメラマンとして活躍できるかってところはどうなんだ?・・・

しかもいい線いってるっていうのはご都合主義な気も・・・・(苦笑)


二人の女性はお互いにトマシュという存在を通して親友となっていく。

二人でふざけあって裸の写真を撮りあうところなんかも印象的で官能的。

レナ・オリンの妖艶さと聡明さ、ジュリエット・ビノシュの清楚でいて愛に一途な怖さ。

二人の女優がとても美しい。


そんな遊び人のトマシュだったが、テレーザに押し切られて結婚する。

それでもサビーナとの縁は切ることのできないトマシュ。

1968年のチェコスロバキアを舞台にしていることから

プラハで起きた自由を求める民衆運動、いわゆる「プラハの春」についても描写されている。

ソ連軍を中心とした共産主義国家の軍事介入が始まり、

美しいプラハの町に戦車がやってくる。

実際の映像とつなぎあわせてあって見事

すると画面がざらついたモノクロに変る。
実際のニュースフィルムとうまくつなぎ合わせたシーンは素晴らしい。

そんなこだわりもうまいなと思った。

逃げまどう民衆。


そんな時にもカメラを離さないテレーザ。

歴史の目撃者でもある彼女は痛みを一身に背負っているのだ。

彼女の人生はいつも重さに耐えていると言ってもいいだろう。


西側の人間に公表を頼んだ自分の写真が、

告発するための決定的な証拠として使われるというシーンも、

昔見た時はあんまり気にしなかったところだった。



カメラを通して歴史を映す

トマシュは医師としてだけではなく、

共産主義の役人たちを皮肉ったオイディプス論なども書いていた。

その記事が後になって秘密警察に目をつけられていくという

後半もやっぱり怖いよね。

いつどこで監視されているかわからないという。


自己批判をせよと当局に迫られるトマシュだが、

それを拒み、医師としての職を奪われてしまう。


窓拭きとして働くトマシュ、パスポートまで奪われてしまう

プラハでは自由は全くないけれど、ここでも浮気はやめないんだな。(笑)


激動の時代を生き抜く・・・・

トマシュは花から花へ飛び回るチョウのよう、でも確固たる個というものはしっかり持ってると思う。

それがテレーザとの出会いで心地よい重さを与えられ、

本当に幸せになっていくというラブストーリーでもある。


一方のサビーナ、彼女は芸術家であり、心はいつも自由だ。

何ものにも束縛されない人物。

トマシュととてもよく似ている。

でも愛国心もあると思う。

それを象徴するのが祖父の祖父から受け継いだ帽子。


彼女は軍事介入が始まると軽やかにスイスに亡命する。

そこでであったフランツという男と愛し合い、彼女もトマシュを忘れるかと思いきや、

フランツはサビーナの帽子を嫌うのだった。


奥さんと別れ、サビーナの元に転がり込むフランツを彼女は愛することができない。

彼のとった行動は軽すぎるのだろうか?

耐えられない軽さとは西側諸国の軽さとも受け取れる。

フランツに知られないように家を引き払い、アメリカへ旅たつ決心をするサビーナ。

トマシュとサビーナはお互いの体が溶け合うかのように抱き合う。

これが最後と知って・・・

「フランツはわたしの帽子が嫌いなのよ」

「この帽子を見ると泣きたくなるよ」

二人の会話・・・

二人の自由な恋愛関係はとっても軽く思えるけれど、

そんなことないのだなと感じるシーン。


祖国が祖国でなくなるっていったいどういうことなんだろうか?

東欧の複雑な歴史を垣間見るたびに思ってしまう。


トマシュとテレーザは農場でひっそりと新しい人生をはじめる。

トマシュはようやっとふわりふわりとする存在から地に足つけて根を生やそうとした、

この地でテレーザと共に生きることを決心したのだろう。

その矢先に事故死してしまう二人。

この事故ももしかしたら当局の仕業かもしれない、今見るとそう思う。


その直前のトマシュの言葉には重みがあると思った。

「なんて幸せかと思って・・・」



幸せそうな二人に・・・


ラストがアメリカの地にいるサビーナで終わるというのも余韻が残る。

彼女の元には二人が事故死したという知らせがくるのだ。

サビーナは異国の地で、今も自分の帽子をかぶっているのだろうか・・・


タイトルの中の「軽さ」とか「重さ」というより、

人生の自分の存在の意義といったものを今回考えさせられた。



追記;ダニエル・ディ・ルイスは今年、アカデミー賞で主演男優賞に輝きましたね。

    一時期は靴屋になるなんて言ってたときもあったけど・・・・(苦笑)