あなたは、肩や腰、ひじやひざなどが痛いとき、どうしますか?
 湿布を貼りますか? 使い捨てカイロを貼りますか?
 大多数の人は、当然のように湿布を選ぶはずです。
 でも、それはどうしてでしょう?
 そう質問すると、「痛みをとめるためです」「炎症を起こしているのだ
から、冷やすのはあたりまえじゃないですか」という声が返ってきます。

 しかし、本当に、痛みは無理やり、とめなければならないものでしょう
か?

 痛みには、人間にとって大切な役割があります。
 痛みに対して、上手に対処することが大切なのです。
 そうすれば、結果的に何年も続いていたような痛みが治まり、さらに
は痛みの出ない体になっていきます。そのために何よりも重要なの
が、「体を温めること」なのです。
 
 だからこそ、「湿布はやめてください。カイロのほうがいいですよ」と、
私は声を大にしていいたいのです。それが、この本を書きたい、書か
ねばならないと思った理由の一つです。

 そして、冷やす生活習慣、痛みが起こる生活習慣を改め、本当の意
味で体が元気になり、エネルギーにあふれた生き方に方向転換するた
めのお手伝いをしたいというのが、もう一つの理由です。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 最初は、小さな疑問から始まりました。
 整形外科医時代、レントゲン所見と臨床症状が、どうしても一致しな
いケースが多かったのです。レントゲンを見ると、ひどい状態なのに、
症状は大したことはない。レントゲンでは、左側に変化が強いのに、症
状は右側に出ている。こんなことは日常茶飯事でした。

 たまたまレントゲン所見と症状が一致した患者さんには、鬼の首を取
ったように変化している部位を指さし、「これが症状の原因ですよ」と説
明します。一方、所見と症状が一致しない患者さんには、適当にごま
かすしかありませんでした。

 経験を重ねるに従い、説明をごまかすことは上手になります。しか
し、自分の心の中では、引き裂かれるような感情が強まっていくばかり
でした。

 「こんなことを、男子一生の仕事にはできない。続けられない。」
そうした気持ちをおさえられず、とうとう整形外科から脱出したのが、
若き日の私でした。

 整形外科では、その名のごとく、「かたち」を大事にする分野です。古
い衣を脱ぐことに悪戦苦闘する一方、新しい発見の日々にワクワクとし
たものでした。

 では、その「はたらき」とは?  「はたらき」をよくするには?

 その答えを求めて、一人旅に出ました。何年も、行ったり来たりのくり
返し。

 そして、とうとう答えに出会うことができたのです。それが、西原克成
先生の『顔と口腔の医学』との出会いでした。西原先生に親しくご指導
いただき、さらに自らの経験を合わせて、今回、書籍という形にまとめ
ることができました。

 痛みに対して、“エネルギー=質量のない物質”の視点で対応してい
く。私は、これを「整形外科を超える」という意味で、「『超』整形外科」と
名づけました。

 現代西洋医学や整形外科を否定するものではなく、目に見える
「かたち」から、目に見えない「はたらき」にまで視野を拡大しようとする
志です。

 けっきょくのところ、私にとっての痛みの原因を探す旅は、人体観、健
康観をより本質的に深めていくことでした。人体の「はたらき」を高める
ことを具現化する旅ともいえます。


(坂井学=著、「『体を温める』とすべての痛みが消える」より抜粋
「体を温める」とすべての痛みが消える―腰痛、ひざ痛、股関節痛、間欠性跛行が治った! (ビタミン文庫)/坂井 学
¥1,440
Amazon.co.jp