今日は、「発達障害は増えた? 教育現場からの訴え」という新しいシリーズです。昨今、教育現場では子ども達の年齢によらず、発達障害児が増えていると言う声が、各所から上がっているようです。このシリーズでは、実際に発達障害は増えているのかと言う問いに対して考えていくと共に、「増えてきている」と言われているその背景に何があるのかについて、考えてみたいと思います。
さて、初回は、高校の教育現場から届いた声から、この問題を考えてみたいと思います。
さて、和歌山の教育委員会の報告が届きました。県下50の高校のうち、2割に及ぶ10校で、学習や行動に特別支援が必要と判断される子どもが10%以上在籍するというアンケート回答が得られたというのです。しかし、その一方で、全体の半分超の27校では、当該の在籍率は1%にも満たないという回答結果でもあったようです。このデータからは、発達障害と教育現場にまつわる別の問題が透けて見えてきます。
【調査結果が示すもの 学校ごとの認識差が浮き彫りに】
子ども達の中には、未診断も含まれるとのことです。教師側の視点で、感じるところでとったアンケートのようですね。数年前に、現在の文部科学省が小中学校向けにとったアンケートで、6%を超える回答があった事を考えると、その後もこの問題が改善されないままに、対象が拡大している様子を感じます。
記事の最後に、
小中学校や親との連携を求める姿勢が語られています。
また、親の理解を求めるコメントも。
先日の栃木県の記事(詳しくはこちら )にもありましたように、
そこにも大きな課題があるのでしょうね。
今現在、高校生である子達にも、
親にも気付かれずに、未診断の当事者さんが、
おそらくまだまだ多数いらっしゃるのでしょうね。
【普通科こそ、学校ごとの極端な認識差が・・・】
また、この調査を詳細にみてみると、別の問題も見て取れます。
学校ごとの障害に対する認識にかなり差があるようなのです。
定時制・通信制では学校ごとの分布に幅があるのに対して、
普通科では、二極化傾向が見られるとのこと。
・37校中6校(全体の約6分の1)
→生徒の10%以上が該当するとの回答
・37校中27校(全体の7割)
→0~1%未満しか在籍しないと回答
高学力の層でも、高機能広汎性発達障害の比率は決して低くないと知られている事からしても、この差は極端すぎます。つまり、学校よっては、障害を見つけてもらえずに、放置されている可能性も充分に考えられるわけです。新聞記事でも、「在籍率の低い学校では客観的な指標に基づいた実態把握が必要としている。」と述べられています。
【高校では、まだまだ特別支援教育が機能していない?】
また、高校で特別支援教育が機能しているかという問いに、
小中学校でのYes回答が7割にもなるのとは対照的です。
「高校での学校経営や授業を見直すべき」との回答は
56%にも及んでいるとの事。
高校レベルでの特別支援教育への対応が、
一向に、改善されない現状が浮き彫りになっています。
こうした高校での学校サイドの認識の低さを見ると、
昨年の受験制度で、発達障害への支援・優遇制度の利用者が、
全国で95人(0.0017%)にしか及ばなかった理由も、
はっきりするというものです。(詳しい記事はこちら )
こうした認識を根本的に変えていかないと、制度整備だけでは、
問題が解決していかないという現状が見えてきます。
【高校・大学での特別支援教育の認知の高まりを求む!】
僕が聞くところでも、大学も、極端だと聞きます。
一部の大学では、非常に発達障害支援に力を入れ始めているそうです。
でも、無関心なところもまだまだあると。
それに比べると、高校は総じて、意識の浸透がまだまだ低いと聞きます。
中学校に比べると、思春期の問題がひとヤマ超えて、
如実に問題行動になって現れるのが少ないからかもしれません。
でも本来は、この時期にコミュニケーションスキルや、
ソーシャルスキルを身につけておくか否か、
また、ある程度、理解してもらえる人々に囲まれた環境で、
しっかりとした自己確立が出来るか否かで、
当事者さんのその後の人生は大きく変わるように、
僕は感じています。
実際、高校時代に問題が顕著には現れなくとも、
その後、大学時代、また就職をしたい項の青年期に、
一気に問題が噴出すケースが多数あるのです。
この記事を通して、僕が思うのは、
単に、授業が順調かどうかだけではなく、
高校生が卒業後に適応していけるのかどうかにまで、
しっかりと目の行き届いた特別支援教育が、
浸透して行って欲しいということです。
さて、この記事は、「発達障害は増えているのか?という問い自身ではなく、「増えている」と言う声があがる背景の問題の方を掘り下げてみました。次回は、実際に「増えているのか?」の問いに関することに触れてみたいと思います。
和歌山県立高の10校で10%以上 特別支援が必要な生徒 県教育委調査より
http://www.agara.co.jp/modules/dailynews/article.php?storyid=209652
(2011年04月28日更新) 紀伊民報
和歌山県立高校の2割で、学習や行動に特別な支援が必要な生徒が推定で10%以上在籍することが県教委の調査で分かった。高校を対象にした調査は初めて。県教委は「特別支援教育が喫緊の課題と示された」としている。~(中略)~
推定在籍率は発達障害の診断を受けている生徒だけでなく、各学校で特別な支援が必要と判断した生徒を含む。在籍率の低い学校では客観的な指標に基づいた実態把握が必要としている。
小中学校から継続の課題も多い。「小中学校や保護者と連携した生徒の情報の共有化が必要。そのためには保護者の理解が不可欠で、早い段階から支援できる体制をつくりたい。生徒個々の情報を正確に把握することが最重要」と指摘している。
【告知です!】
日頃の生活を離れ、ゆったりと過ごすお時間はいかがでしょうか
同じ境遇を持つもの同士、悩みを語ったり、
判らないことを聞いてみたり、
互いの経験を交換し合って、問題をひとつひとつほどいていく・・・・
そんなグループを目指して、開催しています。
2011.05.13(金) 10:00~14:00
大阪市北区・中央区の貸し会議室にて開催!
少人数(10人)制 要予約
ゆったりとした時間の中で、
ココロとからだの調和を取り戻していく教室です。
無理な姿勢や激しい運動は一切ないので、
お気軽にご参加いただけます。
2011.5.12(木) 18:15~20:15
2011.6.15(水) 18:15~20:15
大阪市北区の貸し会議室にて開催!
少人数(6~8人)制 要予約