先日、発達障害の安定就労に、確固たる自己確立は欠かせないと書きました。周囲からの関わりや刺激に対して、ゆるぎない自分を持つことが、破綻や破滅をしない自分で居られる武器になるのではないかと考えるからです。しかし、実際多くの成人当事者さんに会うと、この自己確立が未成熟な方は多いように感じます。今日はその原因について、ひとつの仮説を立ててみたいと思います。
さて、今日の記事は当事者さんにとっては、
少し精神的負担があるかもしれません。
あまり精神状態の良くない方は、
読むのを控えていただいた方かもしれません。
【他者からみた自分を受け取ることで、自己は確立されていく】
さて、以前も書きましたが、定型発達であれ、発達障害であれ、
人のココロの中には多面的な自分が居ます。
真面目な自分、やる気のある自分、自堕落な自分、のんきな自分、
朗らかな自分、怒りっぽい自分、泣き虫な自分、
だらけた自分、欲ボケした自分、頼りない自分・・・・
しかし、人はその全てを外に出しているわけではなく、
接する相手や居合わせる環境によって、
どれかの自分を使って、もしくは組み合わせて、暮らしているようです。
こうした使い分けをするのが自我の役割で、
それを成長と共に造り上げるのが、自己確立です。
その完成には個人差がありますが、
発達障害があると、30代や40代になっても、
未成熟なままの方も、少なからずいらっしゃるように感じます。
こうした自己確立はどのように進むかと言うと、
他者との関わりから、周囲が自分に与える評価を自己検証したり、
自分が選択した態度が、周囲にどう反応されるかを受け取りながら、
自分を確立していくようなのです。
つまり外部からの情報の取入れが、カギになるようなのです。
【発達障害の自己確立が遅れる原因・・・ひとつの仮説】
では、なぜ発達障害があると、自己確立が難しいのでしょう。
これは仮説に過ぎないのですが、
「他者からの情報の取り入れに困難を抱えるがために、
自分を造り上げることが定型と同じペースでは進みにくい」と考えます。
例を挙げるなら、難聴の方が上手に話せないのに近い印象です。
つまり、人が話せるようになるために、聴覚は欠かせません。
自分が口から発する音を聞き取れることで、
適切な音量や発声の仕方を人は自然に学び、
自己調整を繰り返しながら、話す能力を身につけるのでしょう。
聴覚のない方でも、発音の能力もあり、
もちろん、話すことは出来るのですが、
独特の声の発し方の傾向があります。
これは、聴覚がないゆえに、脳に適切な情報が入らず、
発声・発音の学習が適切に行えないからだと考えるのです。
では、発達障害はどうでしょう。
これと同じことが起こっているのではと考えるのです。
発達障害を持っていると、認知の欠けや歪みが存在します。
また、他者から否定的な関わりが多いために、
自己否定的になりがちで、結果、人との関わりを避けることに陥りがちです。
こうしたことから、定型発達に比べて、
「他者からみた自分の評価」の情報が相当少ないか、
もしくは誤って受け取っているのだと考えます。
その結果、それなりに自分を作ってはみても、
それは中々他者に受け入れてもらえるようになり難く、
何度作っても、作り直すような事態になりがちなのでしょう。
このように外部からの情報の取り入れに問題があるがゆえに、
自己確立に未成熟がおきやすく、
現代のように厳しい競争社会や、世間の風潮があると、
安定就労が困難になると考えるのです。
【「理解ある支援が欠かせない」の本当の意味】
こうして考えると、発達障害に、「理解のある支援者が欠かせない」というのは、
何も成人発達障害に限ったことではなく、
幼児期・学童期や思春期・成人期と、とても大切なのだと感じます。
この仮説が正であるなら、成長過程に、
いかに肯定的な関わりをしてくれる周囲を持っているかで、
成人してからの自己確立度が変わってくるということを、更に裏付けます。
ぼくは「安定就労を目指す」のシリーズの冒頭で、
現代の20~40代の当事者さんには、
3割ほどの安定就労組みと、2割ほどのアルバイト組と、
残り5割の無職組に分かれていると書きました。
そしてそこに何の差があるかと言うと、5項目の条件を挙げています。
自尊心・判断力・ゆる真面目・客観性・自己確立です。
しかし、やはり一番大切なのは5番目の「自己確立」であり、
この項目は、他の4つの集大成でもあると考えるのです。
つまり、発達障害の安定就労を目指すところでは、
ゆるぎない自己をいかに確立するかが大きなカギを握っているということ。
その自己が確固たるものであれば、
特性上の困難を持った自分であっても、
破滅・破綻せずに、社会を生き抜いていけると考えるのです。
(ただし、確固たる自己確立といっても、
尊大型のような頑なさのことを言っているわけではありません。)
しかし、かといって、これは「しっかりしなさい」のような、
精神論を言っているのではなく、
発達障害の特性を充分踏まえたうえで、
その精神的特長や様相に充分配慮した環境で、
理解ある支援者との関わりであれば、
より造り上げやすくなると、ぼくは考えます。
では、その環境とは何なのか?
適切なかかわりとは何なのか?
どういった情報をもらえると、自己確立は進んでいくのか。
そこを考えていくことが、ぼくの今後の課題になるのかなぁと感じています。
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