登場人物は作者に嘘をつく | かんちくログ

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1発屋どころか、まだ1発も打ち上がってませんが。勝負は、これから。

先日の講座で登場人物の人物像をふくらませていくワークの際に、わたしは、「登場人物は作者に嘘をついたり隠し事をしたりするので、本当にその答えで合っているのか、疑って本当のことを聞きだしてくださいね」と、言った。
 

それはわたしにとって、経験的にいつもそうなので、疑問にも思わず、何も気にしていなかったのだけど、最後に「なぜ自分で作った登場人物なのに嘘をつくんですか?」と質問をもらって、初めてこのことについて考えることができた。質問をもらうって本当に勉強になる。

 

なんでだろって少し考えて、「わたしたちは普段からよく、自分で自分に嘘をつくから」という答えが自分の中から出たとき、答えた自分が「ああ、そうか!」と思った。

 

わたしたちは、プライドを保ちたかったり、情けない自分を認めたくなかったり、そのほかいろんな理由で嘘をつく。そしてその噓を自分で信じ込んでしまう。嘘をついていると行動に矛盾が出る。

 

小説家になりたいと思っているのに、小説を書かなかったり (小説家になりたいんじゃなくて今の仕事を辞める大義名分が欲しいだけかもしれない)。今の暮らしが自分に合っていて満足していると思ってるのに、他の人に嫉妬したり(本当は満足していないのかもしれない)。旅行が大好きでしょっちゅう行ってるのに、旅行先でそわそわして落ち着かなかったり(本当は旅行が好きなんじゃなくて現実に目を背けたいだけなのかもしれない)。人の世話をするのが好きと言いながらストレスを抱え込んでいたり(いい人に見られたいだけで、本当はひとりでいるのが好きなのかもしれない)。

 

だから自分が作った登場人物も、作者に対して、ええかっこする。ええかっこしてる登場人物の小説には魂が宿らない。本音が見えない。よそいきのたてまえで書かれた小説なんて誰も求めていない。本当はそうじゃないだろう、本音を見せてみろ、と、登場人物をいじめて、裸にする。追い詰められたとき、登場人物はまばゆく切実な命の光を見せてくれる。本物のセリフを口にする。それが人の心を打つのだと思う。

自分で自分に嘘をついていると、矛盾した行動を起こす。そんなときは、登場人物の心を探るのと同じように、紙に書いて自分の心を探っていく。

 

わたしが最近ずっともやもやしているのは、仕事や人間関係が増えすぎて優先順位がわからなくなってること。ずっと電子書籍しか出せていないので、小説家として出版界に認められていないコンプレックスがあって(出版界というものの実態があるのか知らないが、想定しているのは大手出版社の発行する本を出すことやどこの本屋の棚にも並んでいることや多くの人々が名前を知っている作家であること)、それを解消するためには、大手出版社の公募の賞に応募して受賞を勝ち取ればいいわけで、他の仕事も約束も全部断って、公募用の作品をしあげることに全力を注げばいい

 

・・・のに、相変わらずわたしは、やったことない挑戦や面白そうな仕事や企画があると、すぐに飛びついて引き受けてしまう。おかげで、毎日締切に追われて、公募用の作品を書く暇がない。公募用の作品が書けないことに自己嫌悪して、引き受けた仕事にも迷いが生じる。わたしはいったい何をしたいのか。

などということを、紙に書いて考えてたら、わたしのしたいことは「人を喜ばせたい」が一番の動機だと思った。よい小説を書きたいという動機もあるけれど、それは学問とか芸術的にひとりで追及するのではなく、読んだ人に読んでよかったと思ってもらいたいという、相手ありきの要求で。

 

人を喜ばせたい→よい小説を書きたい→そのために実力をつけたい→いろんな経験がしたい。

 

が、本当にしたいことで、「小説家として認められたい」はコンプレックスを除くための欲求なので、本当はあまりしたくないのかもしれない。認められたらうれしいけれど。ダイエットと一緒だ。「おいしいものを食べたい」という欲求はどんどんやるけれど、「やせて見栄えがよくなりたい」という欲求は後回しになる。


てか、あー。ダイエットと一緒か・・・!

すっごいわかった・・・!!

 

「面白いことをどんどん経験したい」

→仕事どんどん引き受けている現状(食べすぎる)。

 

「公募の賞に出したい」

→ほかの用事を減らすか(食事制限)、執筆量増やすか(運動)しないと実現不可能。


ぽっちゃりしているわたしでも好きになってくれる人はいるけれど、

でもわたしが嫌なんじゃー!

 

という想いをどこまで持ち続けられるかですな。

とりあえずすっきりしたので、食べるものは量より質重視で少しずつ減らし、武者修行で身に着いた体力と筋力で公募の賞に応募しよ。あせらずにね。

 


ここまで読んでくれた人がどれだけいるかわかりませんが、

kossmag,の更新頻度が変わったので、わたしの連載「神様に会いにいく」は隔週更新になりました。わたしが音を上げたわけじゃないよ。でも助かった。

この願いが少しかなったのかもしれない・・・。

 

 

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