バングラデシュの思い出
バングラデシュ滞在の最後の日。
ダッカ中心部の国会議事堂を訪れた。
西日に照らされて表情を変えていく様は、幻想的で美しかった。
混沌としたダッカにあって、ここだけは異彩を放っていた。
あたりでは市民や観光客が、
思い思いの時間を楽しんでいる。
遠慮がちにこちらを見ていた少年たちが、
写真をとろうと話しかけてきた。
それから一緒に屋台の名物を食べようと。
バングラデシュ風お焼き。
美味しさが笑顔になって現れる。
それに気づいたのか、少年が残っていた
自分のお焼きを1つ分けてくれた。
食後の甘いチャイを飲んでいると、隣の少年が言った。
僕らはあまり英語が出来ないから、
バングラデシュの良さを伝えられない。
せめて食べ物でここの思い出を残して欲しいと。
当たり前のように、お焼きの代金も受け取らなかった。
俺の半分の年もいっていない若い少年たち。
この人の良さはどこからくるのだろう。
彼らのような少年が、この国のかけがいのない観光資源だ。
帰りの機内、眠ろうと目を閉じれば、
真っ先に彼らの顔が浮かんできた。
バングラデシュ編 終