映画「幕末太陽傳」を見る・・・巻 | 乾パンのブログ

乾パンのブログ

ブログの説明を入力します。

現宝塚歌劇団雪組トップコンビ、ちぎみゆ(早霧せいな・咲妃みゆ)のサヨナラ公演に

『幕末太陽傳』が決まって叫びでしたが・・・

 

日本映画の傑作として知られる川島雄三監督「幕末太陽傳」ですが、

何年か前にNHKBSで放送されたのにあまり興味がなくてBDにダビングせずに

HDDから消去してしまいましたあせる

 

なんとしても実際に雪組公演を観劇する前に「勉強」しておきたいと考えまして、

正月に東京に帰った時に、DVD「『幕末太陽傳』デジタル修復版」を買ってきましたテレビ

 

 

6,000円ちょっとの定価で購入。

著作権切れで昔の映画が安く見られる世の中で6千円は高い・・・ですが、

修復版だから高価なんですねぇ汗

 

 

あらすじ等は割愛しますが・・・

 

良くできた面白い映画だなぁという第一感。

とにかく話の流れがスピーディーで小気味よい。

多く語られていますが、落語の影響が大きいようです。

 

話の枕に現代(=昭和32年)の品川(北品川=品川宿)の映像を流して、

売春防止法施行寸前のカフェ街(赤線地帯)の現状を説明しつつ、

江戸時代末期の遊郭だった品川宿をラップさせる。

 

時代劇ですがスムーズに話に入り込めます。

この映画のラストシーンはフランキー堺演ずる居残り佐平次が撮影所のセットを飛び出し、

現代の品川の町を江戸時代の恰好で走り抜ける、一種のメタ構造的オチにしたかった・・・

らしいのですが、そんな結末でもおかしくはなかったと思いました。

 

川島監督のこの構想を、制作やスタッフ・役者が猛反対して、このようなラストシーンになったようですが、

その後に一様に「監督の言う通りにすれば良かった」と後悔しているのが、また面白いところ。

 

それから感じるのは時代考証の綿密さ。

その辺りはDVDに付いていた小冊子で解説していますが、いろいろ驚きました。

遊郭で遊ぶには様々な作法やしきたりがあったようで、今では失われた記憶であります。

 

幕末期は天然痘が大流行していて、運良く生き残ったとしても痘痕が生涯残り続けたようですが、

ちゃんと表現されていました(一説によると3割の人々が何らかの腫瘍眼病を患っていたようです)

 

「北の吉原、南の品川」と称されていたようですが、「ありんす」といった廓言葉は吉原の話であって

品川ではまた違ったしゃべり方だったんだ・・・

 

女郎の初めてのお客に対しする、斜に構えた座り方とか、

教えて貰わないとどういう意味だか全く分からない。

きっと分かる人だけ分かる、考証がいろいろちりばめられていると察します(私は分からないけど)

 

でもそれでいて現代的エッセンスを巧みに加えて、

監督の考えている風味をふんだんに取り入れているわけで、凄いなぁと私は感嘆しました。

 

一種の「喜劇」であり、題材や音楽もコミカルなのですが、

(画面が白黒なのもあり)一種独特の暗さも感じます。

 

佐平次は労咳(結核)を患っており、始終コホンコホンと咳を繰り返しています。

もう自分の寿命が尽き掛けているのを十分に自覚していながら、

それを忘れようと八面六臂の活躍をしてみせ、何とか「最期の日」を先延ばししようと懸命に生きる・・・

やはりよく言われているように現実逃避を色濃く滲ませますね。

笑いと寂しさ、儚さは紙一重です。

 

それから失われつつあるものの最後の煌めきを表現しているのかなはてなマーク

江戸の世と品川宿廓街、現代の赤線地帯の終末、

そして燃え尽きようとしながら最後の輝きを見せる居残り佐平次。

だから一種の儚さと感慨と暗さを感じたのです。

 

印象に残ったのは、高杉晋作(石原裕次郎)、井上馨(三谷英明)、久坂玄瑞(小林旭)らの

尊皇攘夷の志士たち。

西洋人に敵愾心を抱きながら、西洋の懐中時計を持ち紙巻きタバコを吸う。

西洋文明に対する興味と親しみは持ってるんだよなぁ

 

その柔軟性と実直性と節操の無さはてなマークがあるからこそ、

次世代の日本を切り開く原動力になったのだビックリマークと思わせる演出でした。

(あの紙巻きタバコ、フィルターが付いていたけど時代考証完全無視。

あの小道具としてのタバコは監督のこだわりだろうなぁ・・・)

 

私でも名前を知っている昭和期に活躍した俳優さんが多数登場してましたが、

左平次の子分のちょい役で西村晃、熊倉一雄等が出演。

熊倉さんの声を聞きたかったのですが、セリフのないホントのちょい役でした。

 

 

正直、この映画を宝塚歌劇でやるのかぁ・・・です。

ちぎみゆのサヨナラ公演でこれか叫び

 

実際にあった遊郭「相模屋」を舞台としたグランドホテル方式ですが、

本家グランドホテルに比べたら、佐平次の比重がかなり大きい

 

特定のヒロインは居なくて、遊女おそめ(左幸子)、遊女こはる(南田洋子)のWヒロイン制。

ライバル同士の2人の女郎を巡る騒動が物語の中心です。

 

当時の女優としての「格」から、左幸子さんの方が先に名前が来ますが、

むしろヒロインとすれば南田さんのこはるの方がヒロインらしいとも言えるわけで、微妙です。

(左さんも南田さんも物故されましたが、現在では南田さんの方が有名だしね。)

 

女優陣ではその2人の外は、女中おひさ(芦川いづみ)、相模屋のおかみ(山岡久乃)、

やり手おくま(菅井きん)の3人しか役らしい役はなかった。

(山岡さんは宝塚OGなんですねぇ、知らなかったです。)

 

このうち、おひささんは良い役で宝塚娘役で言えば若手路線新進娘役に宛うような役柄。

やり手おくまはヒメにピッタシだにひひ

その5人以外の娘役は、遊女と町娘と旅人とドレス姿の異国人の、いわゆるモブ扱いだなぁあせる

 

現在の雪組に扱いのデカイ路線娘役はいないし、Wヒロイン的役柄をどう割り振るのかはてなマーク

おそめ→みゆ、こはる→異動してくる真彩、おひさ→りさorみちる・・・が順当かなぁ!?

個人的には、おそめ→あんり、こはる→みゆ、おひさ→真彩・・・の方が、合ってる気がするがべーっだ! 

 

男優陣では佐平次の次の役は高杉晋作でこれは間違いなく、だいもん(望海風斗)でしょうな。

路線男役陣は尊皇攘夷の志士仲間とかかなはてなマーク

 

脇役陣では

相模屋主人(金子信雄)とか、番頭さん(織田政雄)とか、手代さん(岡田真澄、若い得意げ)とか、

相模屋の若旦那さんとかが印象的でしたなぁラブラブ!

 

どんな配役で来るだろうなぁラブラブ

もちろん長い映画をそのまま舞台で表現できるわけないのですが、

小柳奈穂子先生の作品ですから、期待したいです。

 

後は・・・ チケットが取れるかどうか・・・ですね。

非常に厳しいだろうなぁあせる

 

 

P.S.

好きなエピソードは、若旦那とおひさカップルの駆け落ちのエピソード恋の矢

しっかりもののおひさとちょっと情けない若旦那さんの間を取り持つ

フランキー佐平次と高杉裕次郎が良いねチョキ

 

「滅びの美学」と言うべきこの映画では一片の清涼剤のようでした。