ミサは公園で、きらきらかがやく不思議なかけらを見つけた。
鏡のかけらのようにも、銀色の宝石のようにも見える。
ギザギザの縁をしていて、なにかが割れたものなのは間違いない。
公園の中のなにかかもしれない。
ミサはかけらを持ったまま、公園を歩き回った。
ブランコはどこもこわれていない。
すべり台もいつも通りだ。
砂場にはとくに異常はない。
持って帰ってママに聞いてみることにした。
「なあに、かけらって。どこにあるの?」
ミサが差し出したかけらは、ママには見えないようだった。
「ミサちゃん、嘘はだめよ」
ママに言われて、ミサは悲しくなった。
お花とおしゃべりしたときも、うさぎが話したときも、ミサは嘘つきだと言われた。
ミサは銀色のかけらを、おもちゃ箱にそっと隠した。
それでも気になって、気になって、夜ベッドに入っても眠れない。
起き上がると、なんだか部屋の中が明るかった。
電気はついていない。
カーテンの向こうから光が差し込んでいるのだ。
いつの間に朝になっていたんだろう。
ミサは不思議に思ってカーテンを開けた。
そこに、お月様がいた。
「私のかけらを返してください」
ミサはびっくりして、思わずカーテンを閉めた。
お月様がしゃべった。
ううん、それよりも、なんでお月様がうちの前にいるんだろう。
ミサは、こんなことを喋ったら、また嘘つきと言われると怖くなって、もうカーテンを開けられなかった。
次の夜も、次の夜も、カーテンの向こうは明るく光っていた。
きっとお月様がやってきているのだと思ったけれど、嘘つきになりたくなくて眠ったふりをした。
そうやって何日か過ごす間に、光は少しずつ弱くなってきた。
きっと、お月様が新月にむかっているんだろう。
そう思ってお月様マークがついているカレンダーを見てみると、今は満月に向かっている時期だということになっている。
じゃあ、どうして光が弱くなってるんだろう。
その夜、ミサはカーテンを少しだけ開けて、光のもとを見た。
そこにはやっぱりお月様がいて、少しだけ光っていた。
でも、とても弱々しい光で、今にも消えてしまいそうだった。
「あ!」
ミサは小さく叫んだ。
お月様の真ん中に穴が開いていて、そこから闇夜が顔をのぞかせていた。
このままではお月様が闇夜に変わってしまうだろう。
ミサはおもちゃ箱からかけらを取り出して、窓を開けた。
ぽーいと放ると、かけらは真っすぐ飛んでいき、お月様の穴にはまった。
すると、お月様はキラキラと輝きだした。
「かけらを拾ってくれてありがとう」
そう言い残して、お月様は空に帰っていった。
朝になって、ミサはママに言った。
「私ね、お月様とお話ししたよ」
「ミサちゃん、嘘はだめよ。お月様は喋らないわ」
嘘ではないと、ミサは言わなかった。
誰になんと言われても、自分はお月様とお話ししたのだ。
その証拠にお月様には、かけらがうまくはまらずに、ずれた穴が残っている。
大人はそれを、クレーターだよなんて言うけれど、ミサにだけはちゃんと、あのかけらの形に見えるのだった。