茉莉花の香りが私を酔わす

簡単に身体は開くのに、心は開かぬ
美しい花を無理矢理押し入り、
想うがままに蹂躙した

なのに、その花は枯れることもなく、
更に艶やかに咲き誇る
私を求め、誘うように香り続ける

私を求めねだる声音や、
甘く香る吐息、
淫らに濡れる甘い甘い蜜も、
何もかもが私を捕らえて離さない


欲しいと願ったものは何時だって
誰かのものだった

欲しくても手に入れることは叶わなくて、
でも、無理矢理奪おうなどと
考えたことはなかった

それは、浅はかなことだから、
じりじりと焼ける我が身を呪いながらも、
我を忘れることはなかった

そんな私の前に現れた
唯一、誰のものでもない私だけの花

私だけを想い、
私だけには自らをさらす
愛しい愛しい私だけの女人


珍しいな、侍医

ある時、隊長とすれ違い様に
声をかけられた

何か?

普段あまり表情を出さない隊長が
ちらりと私を見る
探るような目で見つめられると
どこか落ち着かない

ほぉ…移り香…か

そう言って微かに笑う隊長は、
静かに去っていった


「移り香…?」

あちこちを探り、くんと嗅ぐと
微かに香る茉莉花の香り

―  そうか、彼女の香りがするのか

自分の身体から彼女の香りがすることが
こんなにも心が弾むとは思わなかった

私は気付かなかった
否、気付いてはいた筈だ

いつの間にか、こんなにも
茉莉花の虜となっていたことに



Fin




 

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