康安殿の執務室に戻った王とヨンは、
パク・ギュビンの処遇について話をしていた。
そばにはドチ、チェ尚宮が控えている。

此度の件でパク・ギュビンは王妃を陥れ、王を翻弄した。
罪状は明白。死罪は免れない。
だが、王は命を下せないでいた。

『簡単に決断を下せぬ王だと蔑んで貰っても構わぬ。
   だがな、今回のことは
   全て私が至らぬばかりに起こったこと。
   私のたったひとつの言葉が、
   あの者を強行に走らせてしまっただけなのだ。
   だから、罰を受けるならば、
   あの者ではない。この私なのだ』

― 王様…   わたくしは貴方様のそばで、
    貴方様と共に生きたかったのです
    ただ、わたくしは罪を犯した
    罪を犯したら裁かれねばなりません
    わたくしは其れだけの事を致しました

俯き、ぽつりぽつりと語ったギュビンの想いが
王の心に痛みを残していた。
彼をひとり残して行ってしまったことが
王の心に後悔というも文字を刻み付けている。

『どんな事情であれ、此度のことは
   罪に問わねばならぬ。
   だがな、私はあの者の私を想う気持ちだけは
   理解してやりたいのだ。』
『王様…』

王の気持ちも分からなくもない。
元での唯一人の友だったのだ。
その男が此度の首謀者。
いたたまれぬ想いは察してあまりあるまい。
だが、此度の件は、
奇皇后が王の身辺を探らせる間者として
ギュビンを潜らせることであり、
またギュビンの師がイイニムであり、
ウダルチ内にもユンウを潜り込ませていた。
此れは、目を瞑るには
あまりにも容易にはいかないことだった。

現状を報告しても、王はまだ決断出来ずにいた。
王がこうなれば皆どうすることも出来ない。

沈黙だけが執務室に流れていく。
ふとヨンの脳裏にウンスが思い浮かんだ。

― 何故イムジャが…

それはウンスが何の気なしに発した言葉だった。

「ねぇ、彼の元での名前は
   王様がつけてくれたんでしょう?
   黒風なんて素敵ね」

― そうだ
    彼女はそんなことを言っていた
    そうか…、それなら…

『王様、ひとつ聞いて
   いただけますでしょうか…?
   ……………』

ヨンは思い付いたある案を王に話し始めた。







参加しています。
いいね、↓ポチっと頂けたら嬉しいです。