□同じセリフでお話を書こう□…より使用したセリフ
№2
はぁ…。
冷たい指先に息を吹き掛ける。
見上げれば、季節外れの虹が輝いていた。





月夜の記憶
幼き眼に映る優しい笑顔
差し出された温かな手の温もりに心は震える


「姫様~!
 そのように急がれては、転んでしまいますよ!」
「大丈夫!それに、これを逃したら、
 次はいつ会えるか分からないんだから」

そう言うと、急ぎ目的の場所へと足を早めた

其処に着く頃には、ちらちらと淡雪が降り始めていた
上がる息をゆっくり整えると柱の影に身を潜める

一日に一度、会えるか会えないかのほんの一瞬

あの方に会いたくて、
離れた回廊のそばからそっと見つめるだけ

―今日はどんなお姿だろう   
 笑っていらっしゃるのか…それとも…

そんなことを想うだけでも胸が高鳴る

―会いたいな…
 貴方の声が聞きたい

あの時のお礼が言いたくて、習い始めた高麗の言葉
今はまだ言葉を交わすことも出来ない
だけど…
いつか…
いつか……

「はぁ…」

冷たい指先に息を吹き掛ける
見上げれば、季節外れの虹が輝いていた





Fin


昨年の乙♡パの企画〔同じセリフでお話を書こう〕で
グルに投稿出来なかったお話をアップしました。

此方は王妃様の淡い初恋話。
月夜の晩、出会った笑顔の素敵なひとが
江陵大君と知った宝塔失里。
彼女の、姫としてではなく、
ひとりの女の子としての淡い恋を書いてみました。



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