何の目的もなくスタートした一人旅。
予定では5日間の日程で関西から九州に向けて旅行する予定だった。行ったことのない場所へ旅に出れば、何か見つかると思っていた。横浜から夜行バスにのって朝6時半に京都に到着。一通り冬の京都を満喫した僕は、宿に帰って次の日の宿を決めようと思っていた。世の中は3連休のど真ん中。次の日の宿もなかなか見つからず、高級ホテルに泊まるか、カプセルホテルにとまるか2つに1つの選択を迫られた時、ふと思った。

≪「僕はなんのために旅に出たんだろう?」≫
 
 カプセルホテルに泊まってまで行きたいところもなく、そこそこ贅沢に、おいしいものでも食べながら土地の名所を回るような旅を想像していた。でもそこにあったのは、中、高、大学とほとんど部活しかしてこなかった自分への焦りだけだった。「インカレ出場」等の明確な肩書を持っていない部活に4年間部員として、あるいは主将として時間を投じた。中途半端な気持ちでやってきたんじゃないと胸を張って言えるが、同時にアクティブに動き回る周囲への焦りをあった。
翌日に東京へ帰ること決め、ホテルの部屋で一人、目標について考えた。

≪「これまでの人生で自分は目標の大切さを認識したことがどれだけあっただろう?」≫

 去年の11月に行った内定先のSansanでのインターンを思い出した。1か月のインターンで私は、目標を立てないと無駄な時間や、体力を使ってしまうことがあること、その目標も明確に立てないとチェックができず次につなげることが出来ないことを、多くの先輩方に教えていただいた。とても印象に残っているのは「日報」だ。
僕はアルバイトの塾講師でも日報のようなものを書く。その日にどのような目標で何をしたのか授業内容などを書くのである。でもこれをめちゃくちゃ重要と考えたことはなかった。次回の授業日に自分が前回授業の内容を思い出せる範囲であれば、特に問題ないと思っていたし、面倒な仕事とさえ感じることもあった。

≪インターンで学んだこと≫
 
 でもSansanの日報は違った。指導してくれる先輩は、「自分がその日立てた目標に対してどのように考え、アプローチできたのかその時に思ったことを含めて書いて。それが他の人の気づきにもなるから。」とおっしゃっていた。そもそも自分が今何をやっているのかも明確に分かっていなかった私にとって、それはとても難しかった。言葉が先行してしまって自分が思っていることよりも、どうしたら文章としてまとまるか考えてしまうのだ。結局、僕は日報を書くだけで1時間も2時間もかかることが何度もあり、先輩にもたくさん迷惑をかけた。一番早く書けたときは、終業時間前に仕事が一段落し、何を書こうかぼんやりと考えられた時だった。
 
 僕がインターン中に携わった仕事の中で感じたことをもう1つ書いておこう。インターン中に、僕はある部署の仕事を3倍効率化する、というミッションを与えられていた。そのため、仕事にどれだけの時間がかかっているのか調査し、そこから効率化へのヒントを得ようと考えた。仕事の所要時間を調査した後、私は調べ上げたデータをどのように分析すれば3倍へのヒントがみつかるのか、ということではなく、とりあえず調べてみたら何か出るんじゃないか?と思ってデータを調べてしまった。調べ上げた結果を分析してみて、僕はそもそも自分の調べ方では比較したい項目の半分しか比較できないことに気づき、もう一度調べなおしになる羽目になって先輩にも迷惑をかけた。常に大きな視野で物事の進捗を見ておかないと、目の前の仕事が果たして必要なものなのか疑う視点を失ってしまうのである。

 今回の旅は、その時の失敗にもよく似ている。とりあえず行ってみたら何か見つかると思っても、行ける場所は限られているのである。
インターン中に先輩からされた話で印象に残っている話が一つある。
「例えばあなたが自分の今いるところから茅ヶ崎に行きたいとする。でも、茅ヶ崎にいくためには、電車でも、バスでも、歩きでも、色んな方法があるでしょう?その中でどの方法でも茅ヶ崎には行けるけど、自分にとって何が最適な方法か考えてから行動した方がいいよね」と。
茅ヶ崎に行くことすら決まってない旅は、最適な方法も思い浮かばないかった。

≪じゃあ今回の旅は失敗だったのだろうか?≫

 こんなことを言うと、本当か?と言われてしまうかもしれないが、僕にとって今回の旅は重要な意味を持つと思っている。その理由を書いておきたい。
 今日は、朝から観光に出かけようと思っていた。もう今夜帰るのだから、出来る限り観光した方がよいかと思って、「京都 穴場」でググって穴場を巡ろうかとも思った笑
でも僕はこの文章を宿泊したホテルの近くのスタバで書いている。わざわざ京都でである笑
この文章を書き終えようとしている今、僕の心はとても充実している。なかなかこんな時間は今までとれなかった。インターンが終わってから、絶対この経験を文章に起こそうと思っていた。でも、卒論の締切迫る中ほぼ何もやってなかったり、アルバイト先の塾でもかなり受験が迫ってきて忙しくなったりと、なかなか時間がとれなかった。とれなかったというより、やらなくても誰にも咎められないことだった。

 自分が何を思っているのかを文章に残しておくことはとても大切だと思う。日々生活する中で何か感じたり、思ったりすることはあっても、なかなか文章にしようとはしない。面倒くさいからだ。あるいは考えているだけで満足してしまうから。
でもその時間がないと、今回の僕の経験のように何度も同じことに気づく。気づいたはいいけど、それが仕事でも、人間関係でも、取り返しのつかないことになってしまうと困る。

 今回このような経験をして、僕は自分が「計画を立てずにアクションを起こそうとする」性質を持っていることに気づいた。そしてこれは自分が生きていくにあたって上手く付き合っていかなければならない性質だと思っている。九州まで出来る限りの資産を投じて旅を続けても得られなかっただろう自分の弱みであり、強みにもなるところだと思う。

 僕は来週からパリに旅行に行くので、その時に実践しようと思うことがある。
行きたいところ、見たいものを決めて計画を立てよう。出来る限り具体的に計画を立てて、今回の旅と何が違うのか比較しようと思う。