特定小型船舶操縦免許の取得&履歴限定の解除について
総トン数20トン未満の船舶を操縦するためには、航行する海域に応じて一級または二級小型船舶操縦士の資格が必要になりますが、釣り船や屋形船、海上タクシーや海洋散骨など、【お客さん】を乗せた船の船長をする場合、小型船舶操縦士の資格の他に,「特定操縦免許」の資格が必要です。 要するに、自動車の運転免許で言うところの二種免許にあたる資格だと思ってもらえるとわかりやすいと思います。 ※当然ながら、「自家用運航」の際はこの資格は不要です。例えば、友だちと釣りに遊びに行く、家族で花火大会の遊覧で船を出す場合など。 ※「特殊小型船舶操縦士(水上オートバイ)」のみの受有者は、この特定操縦免許の取得はできません。 |
令和6年4月1日の法改正
これから新規で取得する方は「7時間座学」と「4時間座学」と「4時間実技」の合計15時間の講習を2日間受けてもらう必要があります。これに加えて、最後に修了試験に合格して、特定操縦免許を取得できます。
なお、この「修了試験」について不合格の場合は、合格基準に達するまで補講・再試験が行われます。
既に特定操縦免許を持っている方
現時点で取得済みの方は、令和8年4月1日までに「4時間座学」と「4時間実技」の合計8時間を受け、最後に修了試験に合格して、新特定操縦免許への切り替えが必要です。この切り替えを行わないと、令和8年4月1日時点において特定操縦免許は失効することになります(ただし、失効後にこの「切り替え(「移行講習」と言います)」を行えば復活します)。
実技講習免除の制度について
3か月以上の乗船履歴があれば、実技講習を免除できます。この「実技講習」の受講料が地域差もありますが、大体8~12万円程度と高額になっています。そのため、免除が可能な方は免除することを強く推奨していますが、免除対象になっていないケースが多く、「なんとかならないか」というご相談をよく頂きますが、できないのが現状です。
※例えば移行講習の場合に【「遊漁船業(または不定期航路事業)を今から開業して船長業務をする」or「船長として遊漁船業者等に勤める」+船長として3か月乗船する】と言う方法を取れば、なんとかできなくもない、ということになるでしょうがあまり現実的でもないと思います。
実技講習の免除の要件
- 遊漁船業または不定期航路事業等の、
- 船長として、
- 3か月の乗船履歴
です。この3つ全て該当する必要があります。
すなわち、例えば免除ができないケースの例示としては、
- 自分のプレジャーボートを所有していてずっと乗っている
>遊漁船業または不定期航路事業等の乗船ではないため - 長いこと漁師として漁業を営んでいる
>遊漁船業または不定期航路事業等の乗船ではないため - 屋形船で食事の配膳、綱取りなど乗組員として船長の補助をしている
>船長としての乗船ではないため - 遊漁船で中乗りとしてお客さんのフォローなど船長の補助をしている
>船長としての乗船ではないため - お客さんを乗せない代行での海洋散骨船の船長をしている
>遊漁船業または不定期航路事業等の乗船ではないため
(不定期航路事業の届出をしている場合を除く)
ざっくりと書きましたが、これらのケースの場合は実技免除は現行の制度上不可ということになります。
「実技免除の乗船履歴」のカウントについて、国交省が「遊漁船と小型旅客船」に限っているためです。
※「実技免除の乗船履歴」については後述する「履歴限定の解除」に必要な乗船履歴とは異なり、その航行区域が沿海以遠(平水でもOK)である必要はありません。
※なお、新規で特定を取得する方は上記の理由から実技の免除はできません(そもそも特定を持っていないと遊漁船等の「船長」ができないからです)。
履歴限定の制度について
新特定操縦免許では、小型旅客船・遊漁船に船長として乗船できる航行区域が平水区域に限定されます。
沿海区域以遠を航行するためには、一定の乗船履歴によって限定解除を行う必要があります。
(出典:国土交通省ウェブサイトより)
この手続きについて、高松海事事務所では代行・ご相談承っております。
詳しくは、まずはこちらをご確認ください。
ご相談・確認等は上記ご確認のうえ、まずはご自身がどのパターンに当たるのか等をご確認のうえでお願いします。
履歴限定の解除について
履歴限定解除については制度としての仕組みがかなり複雑になり、また、ハードルも高めになりますので、事前にご自身がどのパターンに当てはまり、限定を解除できるのかを正確に把握する必要があります。
コチラで詳細を記載していますので、ご確認ください。
ご相談・確認等は上記ご確認のうえ、まずはご自身がどのパターンに当たるのか等をご確認のうえでお願いします。
ご相談対応状況について
2024.8.10現在、この制度についての電話相談がかなり増えており、対応がしきれなくなっています。ですので、大変お手数ですがご相談の前にまずはコチラで詳細を記載していますので、ご確認ください。そのうえでご自身がどのパターンに当たるのか等をご確認のうえでお願いします。
1つの電話で10~20分程度の時間を要してしまうため、最初から1つ1つを解説した上で手続きをご案内するのは難しい状況となっています。そのため、お電話を頂いても「まずはホームページを見てからもう一度お電話ください」という対応になってしまうかもしれませんので、ご理解のほどお願いいたします。
なお、手続きや書類作成は依頼せずに「自分で手続きはするけど、単に相談・質問だけしたい」というケースの場合はすべて有償での法律相談扱いになります。
(1時間 ¥10,000円)
特定操縦免許に係る履歴限定の制度と問題点
新特定操縦免許では、小型旅客船・遊漁船に船長として乗船できる航行区域が平水区域に限定されます。
沿海区域以遠を航行するためには、一定の乗船履歴によって限定解除を行う必要があります。
特に移行講習の方は気を付けないといけないのですが、小型船舶の遊漁船や遊覧船等の一般的なケースとして、船長としての資格を取得後に「では、船長業務よろしくお願いします」ということで1人で遊漁船や遊覧船の船長として出船するようなケースが多いかと思います。
※誤った知識で履歴限定解除をせずに平水区域限定の特定操縦免許(以下「特定限」と言います)を取得してしまうと以降に困ってしまうことが起き得ます。例えば「マリーナ(等)から『先に特定限で取っちゃってから1年間乗って、履歴限定の解除をすればいい』と説明を受けました」という内容のお話を伺いますが、そもそもとして「沿海以遠での遊漁船などでの乗船履歴」が必要なので、一度特定限を取得としてしまうと、例えば上記のケースだと限定以遠での履歴のカウントが困難になってしまいます(特定限だとそもそも遊漁船等の船長として限定以遠を航行できないからです。)。
これは例えば1人船長での遊漁船や旅客船事業者は、沿海区域での操業が困難となってしまう不合理な内容と思慮するところ、やはり制度自体が大きく問題なので、いずれ改正されるのではないかという期待と予想をしているところですが、少なくとも現行のルール上ではこのような制度になってしまっているので、十分な注意が必要となります。
履歴限定の解除について
履歴限定解除については制度としての仕組みがかなり複雑になり、また、ハードルも高めになりますので、事前にご自身がどのパターンに当てはまり、限定を解除できるのかを正確に把握する必要があります。
このページでは、ケースとしてもっとも多い「船員法非適用」の事業船&プレジャーボートの船長について解説します。
(または「船員法適用だが船員手帳を持っていない(厳密に言うと違法)」の事業者も実態として多くいますので、それらの事業者も含むものとします)
大きく見るとパターンは以下のようにように区分できます。
遊漁船 | 釣り船、渡船、シーバスガイド船など | 自営 | 自身で遊漁船を経営 |
雇用 | 遊漁船業者に遊漁船主任者兼船長または中乗り(上乗り)として雇われている | ||
漁船 | 漁船登録を受けて、漁業者として就業 | 自営 | 自身で漁船を所有、漁業者として操業 |
雇用 | 漁業者に雇用されている | ||
不定期航路事業 | 旅客不定期航路事業の許可または、人の運送をする内航不定期航路事業の届出をしている事業者 | 自営 | 自身で旅客船事業を経営している |
雇用 | 旅客船事業者に船長または甲板員として雇用されている | ||
プレジャーボート | 事業としてではなく、プライベートで船舶を所有、使用している。 または許認可を必要としない事業として使用している。 |
自営 | 自身で上記3業種以外のボートでの商売を経営 |
雇用 | 上記事業者に船長として雇用されている | ||
※いずれも航行区域が「沿海以遠」での運航が大前提となります。ですので、同じ遊漁船でも例えば湖川など平水区域を航行区域とする場合(バスフィッシングガイドなど)は乗船履歴としてカウントができません。 |
まずは、ご自身がどのパターンに当てはまるのかをご確認ください。
必要書類について
必要な書類は上記のケースによって多岐にわたります。
① | 船舶検査手帳の写し(漁船の場合は漁船の登録の謄本でも可) | |||
② | 証明する乗船期間のうち任意の1ヶ月分の運航実績を示す書類(※1) | |||
③ | 自営 | 第4号様式申請書 ←ダウンロードできます。 特定操縦免許制度に係る乗船履歴証明書(自己証明用) →ご依頼頂いた場合は弊所で作成します。 |
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雇用 | 第3号様式申請書 ←ダウンロードできます。 特定操縦免許制度に係る乗船履歴証明書(一般用) →ご依頼頂いた場合は弊所で作成します。 |
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④ | 自営 | マリーナ等証明(※2)または漁協等証明(※3) | ||
雇用 | 労働基準法第15条に基づく労働条件通知書の写し等、当該船舶の乗組員として職務を行ったことを証明する書類 | |||
乗船期間中の出勤簿その他勤務の状況を確認出来る書類 例:出勤簿の写し、給料明細の写し、源泉徴収票の写しなど |
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⑤ | 小型旅客船 | 海上運送法に基づく事業許可申請書又は事業登録申請書、事業開始届出書 例えば、 ・旅客不定期航路事業許可事業者であれば許可書等のコピー ・人の運送をする内航不定期航路事業者であれば届出書のコピー 紛失している場合は旅客課等の申請した窓口でコピーをもらってください。 (本来は申請後の書類は「行政文書」なので、くれと言って出してもらえるものではないのですが、このようなケースの場合は実務上、もらえることが多いと思います) |
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小型漁船 | 漁業法に基づく農林水産大臣又は都道府県知事による漁業許可証の写し | |||
遊漁船 | 業務規程(表紙、別表1及び別表2)の写し |
(※1)証明する乗船期間のうち任意の1ヶ月分の運航実績を示す書類について | |
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各事業形態等によってケースは異なると思いますので、ご自身のケースがどのような事業形態にあたり、どのような書類が出せるかをよくご検討ください。 以下は例示になります。 ※いずれも無いような場合、どのような書類であれば申請が通るか国交省に問い合わせてみてください。 問い合わせ先 【国土交通省海事局海技課小型班(03-5253-8655)】 |
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小型旅客船 | 以下の通常運航時に記録している書類のコピーなど (わからない場合はお手元の安全管理規程をご参照のこと) ①運航可否判断の記録 ②船舶点検簿 ③発航前検査チェック表 ④旅客名簿 ⑤アルコール検査記録簿 |
小型漁船 | 都道府県に申請した漁船登録の検認の際に添付した水揚げ高等を記載した添付書類など |
遊漁船 | 以下の通常運航時に記録している書類のコピーなど (わからない場合はお手元の(新)業務規程をご参照のこと) ①出航前検査記録簿 ②アルコール等検査記録簿 ③乗務記録 ④実務研修記録または実務研修の証明書 ⑤利用者名簿 |
自営業者の証明「マリーナ等証明」、「漁協等証明」について | |
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自営業者の場合はでハードルが④の書類でハードルが上がります。よくご検討ください。 以下のマリーナ証明、漁協等証明は、申請書(上記の申請書(4号様式)に記載する必要があります。 |
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(※2) マリーナ等証明 |
マリーナ等船舶の管理者が追加証明を行う場合、管理記録又は領収書の写し等乗船していたことを明らかにしうる書類 (マリーナ等=他の船舶所有者又は居住する市町村の長若しくは係留施設の管理者) |
(※3) 漁協等証明 |
所属する団体(旅客船協会、漁業協同組合等)の長がその履歴を証明 「マリーナ等による乗船履歴の証明が困難な特段の事情があると認められる場合であって、申請者が所属する団体(旅客船協会、漁業協同組合等)の長がその履歴を証明できるときは、マリーナ等による乗船履歴の証明に代えて、当該所属団体の長による証明を提出することができるものとする」との国交省からのお達しが出ています。 |
上記以外 | 今のところはありません。国交省の案内では上記の2つに限るような書きっぷりになっているので、現状では上記2つのいずれかを用意できない時点で詰み、という不合理な制度設計になっています。 例えば、マリーナ等の証明者がおらず、また、特に漁協等にも所属していない場合。 とはいえ、上記に当てはまらない場合でも諦めずに最後に国交省に直接問い合わせしてなんとか方法が無いか打診してください。我々専門家である海事代理士も、窓口である行政機関である地方運輸局もすべて手探りで対応している状況です(2024.8.10現在)。 問い合わせ先 【国土交通省海事局海技課小型班(03-5253-8655)】 |
履歴限定解除の手続きについて代行します。
高松海事事務所では、特定操縦免許の新規取得、以降講習、履歴限定解除について対応いたします。
特に履歴限定の解除については要件・ハードルが高いです。内容がかなり複雑な構成になっていますので、お問い合わせ・ご相談の前にご希望の内容をまずはよくご確認をお願いいたします。
※履歴限定解除については、それなりの費用がかかります。ご自身ですべて書類をご用意される場合は、以下にお問い合わせのうえ、書類をご用意のうえ、弊所までご郵送ください。こちらでの対応はすべて有料となります。
【国土交通省海事局海技課小型班(03-5253-8655)】
費用について
履歴限定解除に係る手続きなど(以下の4パターンいずれかの対応になります) | |
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履歴限定解除に係る証明書類等の書類作成及び 法律相談並びに申請手続きの代行 |
15,000円~ 200,000円(税別) |
履歴限定解除の申請手続きを単発でご依頼頂いた場合 (ご自身で不備なく証明書類等をご用意頂いた場合) |
6,500円(税別) +登録免許税 |
特定取得または移行講習後の履歴限定解除の申請 (ご自身で不備なく証明書類等をご用意頂いた場合) |
1,500円(税別) |
履歴限定解除の手続きに係る法律相談のみ (書類の書き方、乗船履歴の計算の相談など) |
1時間 10,000円(税別) |
※難度の高そうな事案の場合、着手金を頂戴した上で着手させて頂きます。
ご依頼いただき、業務に着手した結果、乗船履歴が足らずに履歴限定の解除ができなかった場合でも着手金の返還はできませんのでご注意ください(着手金とは、海事代理士が依頼者の依頼に応じて事件処理に着手するために必要な金員で、結果のいかんにかかわらず返還されません。)。
特にプライベートで船を所有しているようなケースの場合、かなりハードルが上がりますので、報酬額はそれなりに高額になると思慮します。
履歴限定の解除 お申し込みSTEP1
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お申込み方法は,電話・FAX・ネットの3種類があります。
FAXでのお申込の場合,コチラのお申込みシートをご利用下さい。
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