緩やかに進行する雇用の劣化の中で近年現れた不気味な非正規雇用の増加傾向とは? | インターネット非正規雇用労働者組合

緩やかに進行する雇用の劣化の中で近年現れた不気味な非正規雇用の増加傾向とは?

完全失業率が改善しても増加する非正規雇用、減少する正規雇用 の記事のなかで

有効求人倍と正規・非正規雇用の推移を取り上げました。


記事の中では統計データの始まりが1990年となっていて

現時点で入手できている1984年からのデータを一部分を抜き出して

活用したものになっています。


そのため前回の記事パートタイマーの求職者数が増え始めた 1980年代との

比較・考慮が容易にできません。


年代を遡って1984からの統計数値を用いて、さらに別の角度である全雇用者数における

正規・非正規雇用者数の推移や正規・非正規雇用者比率を加えて調査してみました。





上記の(左側)の正規雇用者数の推移のグラフの中で

1984年に3333万人だった正規雇用者数は1990年代中盤には3800万人前後の高水準で推移し

1997年に3812万人のピークを記録した後1999年から減少し始め

2006年には3340万人と1980年代の水準に戻っています。

正規雇用者数の推移だけに注目するとここ20年超で正規雇用者数は元の水準に戻っただけです。


しかし、雇用の質の角度から見るために全雇用者数における正規雇用者比率を注目すると

1984年の84.66%から2006年には66.76%と全雇用者数に占める正規雇用の割合は

ここ20年超で17.84%も低下しています。


しかも、この低下傾向は1984年から2006年まで緩やかに継続しており

バブル景気の前後に横ばい傾向になった時期を除いて雇用の質の悪化が

目先の好不況に関係なく、20年超と言う長期間に渡って潜在的に進行していた事が解かります。


緩やかな雇用の質の悪化傾向を裏づけるように

上記(右側)のもう一つのグラフが非正規雇用者数の1984年からの右肩上がりの傾向を表しています。


ここ20年間で全雇用者に占める正規雇用の減少率は17.84%と2割弱ですが

非正規雇用の増加比率は15.34%から33.24%と倍以上に増加しており

その数も1984年の604万人から2006年には1663万人と約1000万人の増加となっています。

1984年の全雇用者数は3936万人、2006年は5002万人と約1000万人増加してますが

その増加の要因は非正規雇用者の増加であると言う事が言えます。



上記のグラフは全雇用者数(紫)を正規雇用者数(青)と非正規雇用者数(赤)に加えた物です。
日本の雇用事情は現時点で入手できる1984年からの統計データから見ても

遡る事20年間、緩やかに不気味に悪化し続けているのです。



さらに非正規雇用者数の増加を20年の長期に渡って雇用形態別で見ていくと近年、

目だって異質な傾向が現れています。下記グラフの2002年前後を境にご覧ください。



非正規雇用の雇用形態別の増加要因の主役は

1984年~2001年までのパート・アルバイトが712万人の増加と

派遣社員・嘱託・その他の増加数である44万人を遙にその数で圧倒していましたが

2002年~2006年は明らかにその傾向が変化しており

パート・アルバイト人口が頭打ちになり、派遣社員・嘱託・その他の数だけが増加していく傾向にあります。

(この2000年から2006年の詳細は過去の記事 で取り上げていますのそちらをご覧ください。)


2002年と言えば正規雇用者数も減少傾向の真っ只中にあり

近年の緩やかな景気回復の中では正規雇用が減少して、派遣社員・嘱託・その他の非正規雇用が

替わりに増加しているという事実が浮かび上がります。


この新たな傾向が何を意味しているのかまでこの統計数値だけでははっきりとは

その詳細まではわかりませんが、なんとも不気味な傾向です。

いろいろな推測は出来ますが、この事は今後も頭に入れながら

調査を続けていかなければならないと思います。


尚、2001年までは労働力特別調査、2002年からは労働力調査と類似の別調査から

グラフの元になる統計データを合成しているため、

このような傾向が出ているのではないかと言う考え方も出来ます。

たしかに2001年と2002年の急激な派遣社員・嘱託・その他の増加要因は

そこにあるのでしょうが、派遣社員・嘱託・その他の数がアルバイト・パートよりも増えていく

2002年からの傾向はそれだけでは説明が出来ない、近年の大きな特徴だと思います。


出展

 平成18年度の労働経済白書 (第1節  雇用・失業の動向 P24)の表の数値

 総務省統計局  労働力調査詳細結果 2006年 1~3月平均 ) 表1 就業状態,年齢階級別15歳以上人口 (エクセルファイル)