莫大な利益をあげる派遣会社、搾取される派遣労働者の過酷な現実
本来は違法として禁止されている人材供給業
その例外として特別に派遣会社は派遣法によって雇用責任を負う事によって
本来違法であるはずの人材供給業を合法として行う事を許されていますが
合法であっても労働力を商品として上前をはねるピンハネ業の一種である事はなんら変りありません。
今回は派遣会社が企業から受け取る派遣料金から
いくら派遣会社の取り分を中間マージンとして差し引いて派遣労働者に賃金として支払っているのか
厚生労働省が公開している報道資料から探ってみたいと思います。
上記左側のグラフは派遣会社の売り上げを、上記右側のグラフは派遣会社が派遣料金から受け取る中間マージンと
派遣労働者に支払う賃金を一般労働者派遣と特定労働者派遣に分けたものです。
(尚、一般労働者派遣と特定労働者派遣の違いを簡単言えば登録型で仕事のあるときだけ派遣会社に雇用される
のが一般労働者派遣で派遣会社に常時雇用されているのが特定労働者派遣です。
同じ派遣労働者でも特定派遣労働者のほうが恵まれた待遇にはありますが仕事が取れなくなったり
仕事が出来なくなればすぐに解雇される厳しさは派遣労働者である限りなんら変りはありません。)
平成17年度に派遣会社があげた売上は総額で4兆円を超えます。
これは派遣会社が派遣先企業から受け取った派遣料金の総額です。
いかに派遣労働者市場が経済的に大きな市場に成長しているかが伺えます。
この4兆円の莫大な売り上げの中から派遣会社は8時間当たりの中間マージンとして
一般労働者派遣の場合、31%(8時間当たり派遣料金である15257円の31%は4739円)
特定労働者派遣の場合、39%(8時間当たり派遣料金である23038円の39%は8775円)
のあわせて平均35%(8時間当たり中間マージン6757円)を差し引いた残りを派遣労働者へ賃金として支払っています。
もちろんこれはあくまで平均に過ぎずさらに細かく言えば派遣業種によって中間マージンにはさらに違いがあります。
平成17年度で企業から派遣会社に支払われた4兆円の派遣料金の総額から
35%の約1兆4200億もの中間マージンが派遣会社の取り分となっています。
派遣法では派遣会社の中間マージンに対する規制はなく派遣労働者にも直接公開する義務もありませんので
この数値は通常はブラックボックスとなり派遣労働者からは隠蔽されています。
この派遣会社の中間マージンである約1兆4200億全てとはいいませんが
派遣労働者が企業に直接雇用されればその労働の対価として派遣労働者に
支払われる莫大な賃金が中間マージンとして派遣会社の手に渡っているのです。
35%にも達する比率はサラ金の金利にたとえても
既に規制されている異常な高金利に匹敵し常識的にありえない馬鹿げた比率です。
これが自称先進国であり世界第2位の経済大国である日本の派遣労働者が置かれている現実です。
これでは国家が法によって公式に派遣労働者を奴隷化しているといわれても仕方ありません。
国に対してただその無責任さに不信とともに怒りを通り越して情けなさすら覚えます。
派遣会社は合法であるがゆえに社会的に無条件にその存在が肯定されてしまうので
偽装請負などの明らかに違法な人材供給業と違い注目されません。
しかし、社会的な問題性は合法という建前によって隠蔽されているだけで
派遣労働者の賃金をピンハネするという
人材供給業が持っている悪質な問題の本質はなんらかわりません。
派遣会社側は派遣労働者に対して雇用を握り、解雇権をもつ優越的な地位を持っています。
派遣労働者より強い立場の派遣会社のピンハネから立場の弱い派遣労働者を保護するためにも
派遣法に一定の中間マージン比率の規制を加え一刻も早く派遣法を改正すべきです。
出展
厚生労働省 →報道発表資料
平成18年12月26日 労働者派遣事業の平成17年度事業報告の集計結果についてより