偽装請負という犯罪、人生をつまみ食いしたその罪を誰が償うのか? | インターネット非正規雇用労働者組合

偽装請負という犯罪、人生をつまみ食いしたその罪を誰が償うのか?

職業安定法 第六十四条  

次の各号のいずれかに該当する者は、

これを一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
~~(略)~~

九  第四十四条の規定に違反した者


(労働者供給事業の禁止)

職業安定法 第四十四条  

何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又は

その労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に

労働させてはならない


(労働者供給事業の許可)
第四十五条  労働組合等が、厚生労働大臣の許可を受けた場合は、無料の労働者供給事業を行うことができる。

職業安定法とは聞きなれない法律ですが、日本国憲法27条の労働権を実際に保障するために

労働基準法や労働組合法とともに定められた雇用者の生活に密着した重要な法律が職業安定法です。 

請負を偽った偽装請負は人材供給業であり、この職業安定法で明確に禁止にされ

罰則として懲役刑まである、どうやってもごまかしようの無い反社会的な犯罪行為であり

44条にあるとおり人材供給を行う者、人材供給を受け入れ指揮命令し労働させるものは

この国では反社会的な犯罪者なのです。




2006年は日本を代表するような大手製造業やその傘下のグループ会社でこの犯罪の摘発が

TVニュースなどで相次いで流れたこともあったので記憶にとどめておられる方も多いのではないでしょうか?

しかし、政界にも莫大な献金をし経団連の中心に名を連ねているトヨタやキャノンといった大手企業が行っている行為だから

きっとたいしたこと無い法令違反なのだろうとどこか適当に受け流していたのではないでしょうか?


経済の国際化の波の中、企業の法令順守(コンプライアンス)が叫ばれる今日

日本を代表するような大手企業であるトヨタやキャノンが懲役刑を科される法令違反を平然と犯しているのです。


この人材供給業というのを簡単にわかりやすく一言で言えばピンハネ業です。

働き手を欲しがる企業と働く場所を求める労働者を仲介するだけで必要な責任も労力払わず

労働者の賃金から上前をはねる決して許されない行為です。


極めて受け入れがたい哀しい話ですが、このような人材供給業が平然と横行し

労働者として働くよりもその労働者を食い物にしピンハネを行う人材供給業者が莫大な利益を上げるという

病的な世の中に陥ってしまっているのです。


労働者が受け取る賃金や保障はその労働者が労働の対価として受け取るものです。

その人個人としての人生だけでなく、家族や地域社会での活動を支えていく人生の糧でもあります。

その上前を不当にはねるという人材供給業は個人の人生だけでなく、家族、地域社会を蝕み、そして最終的には

国民国家迄を破壊せしめる行為だと言う事は職業安定法で懲役刑になっていなくても誰にでも想像ができる話です。


2006年10月13日の参議院 予算委員会の公式な質問の場でこの悪質な人材供給業者である

大手派遣会社コラポレート(大阪市北区)という国内最大の人材派遣会社クリスタルグループ(京都市下京区)の

中核会社の摘発についての質疑応答のなかでこのクリスタルグループの社長が信じられませんが

三権(司法・立法・行政)に対する挑戦ともとれる挑発的な言葉を実際にこう言い放っていた事が取り上げられました。


「業界トップになるには違法行為が許される」  

(林純一  人材派遣会社クリスタル社長)


そしていまや経団連のトップとなったキャノン会長、御手洗冨士夫氏は経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)で

公表された議事録でこう発言していたそうです。


「請負法制に無理がありすぎる。これをぜひもう一度見直してほしい」 

御手洗冨士夫 キャノン会長


自身が会長を務める会社で違法行為を犯しておきながら、真摯に謝罪するどころか

人材供給業を違法行為にならないように合法化しろと公言してはばからないのです。

このような人物を後継者とする経団連と前経団連トップのトヨタの奥田氏は到底まともな人物とは思えません。


かつて大企業の経営者といえば松下幸之助や本田総一郎といった

戦前の反省から企業は安易に国家法制度による保護に頼る事を戒め

製品の技術力を高め世界と戦い、今日の日本の繁栄を築いてくださった偉大な経営者達がいました。

しかし、今日の私達はこのような呆れた人物達が日本の大企業の中枢に居座って政治に莫大な献金をし

影響力を行使している事を失望をし、認識しなければなりません。


人材供給業者の被害者になり失われてしまった、

その人の人生や家族の生活、地域社会に対する罪を誰が償うべきなのでしょうか?


派遣法で許可されている派遣業もこの人材供給業です。

今回は派遣法の問題点や是非迄は控えさせていただきますが

派遣法で許可されている派遣はその存在が例え合法であってもあくまで例外的扱いであり

法制度の中身やありかた次第では人材供給業であるという観点からかなり問題となってしまう

物であると最後に付け加えさしていただきます。