劣悪な待遇の非正規雇用なのに仕事は正規並みという矛盾 | インターネット非正規雇用労働者組合

劣悪な待遇の非正規雇用なのに仕事は正規並みという矛盾

さらに非正規雇用者の詳細な実態を(独)労働政策研究・研修機構 から

多様化する就業形態の下での人事戦略と労働者の意識に関する調査」という調査が

公式発表されているのでここを足がかりに探って行きたいと思います。


調査結果の中に有効回収を得られた事業所に対して正規と非正規の実態の差異を

問う非常に興味深い質問が多数なされています。

ここから非正規雇用者が正規と比較してどのような状況におかれているか

使用者である事業所の観点から客観的に読み取ることができます。


まず一番興味深かったのは、貴事業所には正社員とほとんど同じ仕事に従事している非正社員がいますか?

という質問です。この調査結果を見る限り一般に印象論として漠然と広まっている

非正規雇用は正規に劣る仕事内容を担当しているという概念が覆されます。(下記左側のグラフ)



なるほど調査結果を見る限り全ての非正規が正規と同じ仕事をしているわけではありません。

しかし、約50%の事業所において、その事業所の従業員の半数に満たないが正規と同一の

仕事内容をしているという非正規雇用者が一部いて

約10%の事業所においてその事業所の従業員の半数を超える多数の非正規雇用者が

正規と同一の仕事をしているという回答がなされています。


この結果から60%の事業所で正規と同一の仕事をしている非正規雇用者の存在が確認できます。

この質問対象事業所には非正規雇用者を使用していない事業所が4割近く含まれている事を考えると

非正規雇用を活用しているほとんど全ての事業所で正規と同じ仕事をしている非正規雇用者の存在が

実態として浮かび上がってきます。


尚、この質問ではこの調査が定義する派遣社員や請負社員は非正規雇用として含まれていないようです。

なぜ含まれていないのか理由はわかりませんが推測されるのは派遣社員や請負社員は

あくまで社員という正規であって間接雇用という形態をとっているだけなので

正規と同一の仕事をして当たり前という考え方なのでしょうか?

使用する事業所の視点から見れば派遣社員や請負社員もどう考えても非正規雇用であるわけですから

ちゃんと調査に含めてほしかったと思います。非常に残念です。


さらに派遣社員や請負社員を除く正規と同一の仕事をしている非正規雇用者を雇用形態別に見てみます。

(上記、右側のグラフ)

まず契約社員や嘱託社員の約50%以上が正規と同一の仕事をしていると事業所が回答をしています。

これは100人正規と同じ仕事をしている非正規雇用者のうちその50%を契約社員や嘱託社員が占めている

という実態を表しています。そして見逃してはいけないのは

正規と同じ仕事をしている非正規雇用者のうちアルバイトやパートと思われる正規に比べて簡易な作業をしていると

思われているパートタイマーと臨時雇用者のあわせて20%までもが正規と同一の仕事をしている言う実態です。


アルバイトやパートの賃金の実態を考えると同一賃金・同一労働の観点からこれは理不尽極まりないと

断言してよいのではないのでしょうか?この回答結果には憤りを感じざるを得ません。




上記左側のグラフは事業所が正規とほとんど同じ仕事に従事している非正規雇用者を

活用している主な理由について回答を得たものです。

54%もの事業所が正社員の数が減り、非正規雇用が正規の仕事をする必要が出てきたため

回答しています。これはもう確信犯で事業所が非正規雇用に正規の仕事をさせているという事です。


これまでの正規雇用が非正規雇用に置き換えられている実態をここでも裏づけるような回答結果があります。

上記右側のグラフでは3年前に比べて非正規雇用が減少したのはわずか7%の事業所しかないと回答しています。

むしろ90%の事業所は非正規雇用が現状維持か増加していると回答しています。



この調査には多数の質問がありますので全てをここでは紹介することはできませんが

非正規雇用者の実態や非正規雇用者を活用している事業所がなにを考えているかの

参考資料として今後も内容を紹介して行こうと思います。


最初にはっきり断っておきたいのはこの調査結果は全国の従業員数30名以上の事業所10,000 所

(株式会社帝国データバンクのデータベースから業種・規模別に層化無作為抽出)と

事業所調査対象事業所で働く労働者100,000 人に対して

事業所調査対象事業所に1事業所あたり10 人(原則として正規従業員5 人、非正規従業員5 人)への

調査票配布を依頼した物で有効回収できたのは870の事業所で(有効回収率:8.7%)

従業員数は5,704 人(有効回収率:5.7%)という回収率の少なさが目立つものだという事です。


ですが政府関係機関である独立行政法人が公式に一般公開している資料であるという観点

ある種の傾向を表していると仮定してひとつの参考資料として見ていきたいと思います。
この調査結果以外にも参考資料を見つけだし、多角的に非正規雇用者の実態を今後も洗い出して行きたいと考えています。