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                     第六章 母の気力
               
 

 

「あはーっ、わて、ねとんねん!」母の気力、その(45)


2006/9/21(木) 午後 0:32
 某月某日 母の生活のリズムを崩さないことが、私の最大の課題である。「仕事との両立は至難の技」だ、恥も外聞もなく、捨て身でかかった母との暮らしだ。その結果、後ろ指を指され、仕事がパーッになり、家計が破綻しようとも、、、。

「どうしたん、起きるんか~」母が寝間で、ゴソゴソする音が聞こえた。

「ま~だ」

「今日もなあ、え~天気やでぇ、学校(デイ施設)行ったら、お袋ちゃんの好きな歌、唄えるでぇ」午前8時前だ。そろそろ、母を起こさないと、学校に間に合わない。

「そうか~、あめふってへんか~」

「ほらぁ、見てみぃや、こんなえ~天気やでぇ、青天やぁ」と、私は、母の部屋のカーテンを広げて見せた。

「あっ、ほんまやね~、え~てんきやな~」

「そうやろう、さあ、お茶も用意してあるし、一緒に飲みましょかぁ」

「うん、、、もうちょっと、しんどいねん」

「そうか、ほな、もうちょっとな~」この間に私は、洗濯機を回しに洗面所へ。

「にいちゃ~ん、にいちゃ~ん、どこや~」と、母の声がする。見ると。母が起き出して、四つん這いになって、リビングへ這い出て来ていた。

「わっ、危ないでぇ」母の和室の部屋と、リビングには数㎝の段差があるのだ。母は、丁度、四つん這いでその段差を跨ぐ格好になる。

「べーっ、べー、っ」と、母が唾を吐き出し始めた。

「あっ、そんなとこで、唾、吐いたらあかんやん」

「はいてないっ!、おしっこやねん」大急ぎで、畳、カーペットを、ティシュとタオルで拭き取って。

「そうか、分かった、はい、行きましょか」と、母を抱き起こし、おトイレへ。済ませて、そのまま洗顔し、リビングの座椅子へ母を座らせる。午前8時20分ごろだ。(学校これで、間に合うな~)と、私。

「ほら、甘いリンゴジュースやで~、目え覚めるから、飲んでみ~」と、母に朝食を促す。

「そうか~」と、母が。

「あっ、にいちゃん、これな~、あまいわ!」

「そうやろう、これも、なあ、ケーキパンやでぇ、食べてみぃ」

「こんなんしたんか~」

「僕も食べたよう、美味しかったわぁ」

「これっ!あまいな~」

「そうか、美味しいやつやろう」こんな、やり取りをしながら、母に朝食をさせる。頃合いを見計らって、私も出勤の身支度を。と、母が座椅子でダラーッとしている姿が見えた。

「お袋ちゃ~ん、お袋ちゃん、どうしたぁ~」母が、座椅子にふんぞり返って、うたた寝をしていたのだ。

「あはーっ、わて、ねとんねん」と、母がニッコリする。

「あーぁ、ビックリしたなあ、今日は、ご機嫌さんやな~」

この日の母は、一日中ご機嫌で、学校での話を何度も繰り返して聞かせてくれた。

 

 

 

ト書き:90うん歳の母を看ていると、私は何時も、その「気力」に感心するのだ。