約1年半前に、「ごあいさつ
」というシリーズを書いた。
それは、むーちゃんが公園で挨拶をしても挨拶をしても無視され続けるという内容だった。
ボク自身、あの経験は非常に大きく、今でも時折思い出すくらいだった。
…今回は去年の夏のお話。
なので、「ごあいさつ」から丁度1年が過ぎたころだ。
「最近、むーちゃんがご挨拶しないの」
マヨから聞いて驚いた。
マンションの見知った人に声をかけられても、何も返事をしないというのだ。
もともとむーちゃんには「挨拶しなさい」と教育をした事がない。
マヨやあーちゃん(お義母さん)から、習慣で見て学んでいた。
だから当たり前にしているものだと思ったのだが…。
言われてみれば、ボクと出かけた時も、かつてはうるさいほどだった「こんにちはー」を
聞かなくなった気がする。
「叱ってもね、直らないの」
ボクにとってそれがどれほどショックであるかは、あのシリーズを読んでいただけた方には
想像に難くないと思われる。
かつて腹を立てたあの子供たちのような事を、むーちゃんがしているとは!
ボクはすぐにむーちゃんを呼んだ。
そして事実確認をした。
「どうしてご挨拶しないの?」
まずはむーちゃんの言い分を聞いてみようと思った。
しかしむーちゃんの口からは、言い訳にもならない、話をはぐらかそうとするような内容しか
出てこなかった。
ボクはその態度に苛立ち、「ちゃんと挨拶をするように」ときつく叱った。
むーちゃんは仕方なさそうに頷いていた。
それからしばらくして、マヨに最近挨拶をするようになったか尋ねた。
答えはNOだった。
「私から何度言っても直らないの」
マヨが言ってもダメ、ボクから叱ってもダメ。
苦い気持ちになった。
ボクはもう一度話してみようと思った。
思い返してみると、前回叱ったのはやや感情的過ぎたかもしれなかった。
「ねぇ、むーちゃん。まだご挨拶できないんだって?」
責める口調ではなく、気軽に話しかけた。
むーちゃんはバツが悪そうにしながらも「うん」と言った。
同じ口調で理由を尋ねても、やはり大した事は言わない。
反抗期みたいなものだろう、と思った。
「ねぇ、むーちゃん。むーちゃんが今よりもっと小さい時、こんな事があったんだ」
ボクは「ごあいさつ」に書いた内容を話しながら、PCを立ち上げた。
そしてブログを見せた。
漢字ばかりで文章は読めないが、「むーちゃんがいろんな子にひたむきに挨拶する
イラスト」を真剣に見ている。
「この時ね、お父さんすごく悲しかったんだ」
そう説明すると、次のカット、また違うカットを指差して、
「この時も悲しかった? この時もお父さん悲しかった?」
と聞いてくる。
ボクはそのたびに頷いて「悲しかったよ。冷たい子ばかりだと思ったよ」と答えた。
そして「今のむーちゃんは、この子たちと同じだよ」と付け加えた。
「むー、ご挨拶する! ちゃんとご挨拶するよ!」
むーちゃんはそう叫んだ。
「そうだね。そうしようね」
ボクは微笑みながらむーちゃんの頭をなで、一方でその言葉が今だけではないかと
疑っていた。
翌日。夕食を食べている時、マヨが「今日はむーちゃんいっぱいご挨拶したんだよ」と言った。
マンションの管理人さん、○○号室のおばちゃん、郵便局に行った時も…と、挨拶した相手を挙げる。
マヨに褒められて嬉しそうにしながら、「明日もいっぱいご挨拶する!」と笑顔で宣言した。
その後、むーちゃんは出かけるたびにうるさいくらい「こんにちはー」を連発するようになった。
もとに戻ったのだ。
子育てって難しいというか、かつては腹を立てたよその子の仕打ちを、たやすく自分の子も
するようになるんだな、としみじみ思った。
そして、このブログも意外なところで役に立ったな、と新たな発見をしたのだった。