小椋 純一 (森林学) | 科学カフェ京都(特定非営利活動法人)

科学カフェ京都(特定非営利活動法人)

科学を身近に! 技術における意思決定の民主化を目指す

掲載が遅れて申し訳ありません。以下、当日のレジュメからの抜粋です。


鎮守の森の変遷

                   小椋 純一(京都精華大学)2006/07/08

 

1.はじめに

 鎮守の森(社叢)には、ふつうの森林には見られない珍しい樹木や巨木などがしばしば存在する。そのため、その自然が高く評価されることが多い。関東地方低地部を含む日本南部における典型的な鎮守の森は、常緑広葉樹林(照葉樹林)であり、それは古くから人の手があまり入ることなく続いてきたものと考えられることが多い。下記の本の記述も、そのような考えに基づくものである。

 

「入らずの森」にはどんな木があるの?

 

    ツバキの葉っぱを想像してください。葉っぱは大きくて、厚ぼったくて堅いでしょう。こういう葉っぱの木は、冬になっても青々としています。逆にいえば、寒い冬にも葉っぱが枯れないために葉っぱを厚ぼったく堅くした、といえるでしょう。

    これらの木は、落葉樹や針葉樹ではなく常緑広葉樹ですが、日本にあるそれは、葉っぱの表面がテカテカと光っているので、とくに照葉樹といいます。昔から日本に多かった植生です。寒い冬にも枯れないので、針葉樹などとどうよう、その多<が「聖樹」として尊ばれました。鎮守の森などはたいていこの照葉樹でした。こういった木は、ツバキのほかにカシ、シイ、クスノキなどがあります。亜熱帯から暖帯にかけて多い樹木です。

    しかし、今日、薪炭や建築用材などを確保するために、第二次大戦後、とくに昭和四十年ごろから、日本の山々にスギやヒノキなどが多く植えられるようになって、いまでは照葉樹は、鎮守の森以外にはあまり見られなくなりました。したがって、いまとなっては「入らずの森」の木は大切なものとなったのです。

 

『探求「鎮守の森」』上田正昭編(2004)より

 

2.鎮守の森の歴史

 しかし、古い歴史のある神社でも、ここ100年ほどの間にもその森の植生が大きく変わってきている例が少なくない。また、それ以前においても、植生が大きく移り変わってきたケースが多いと考えられる。ここでは、八坂神社(京都)、出雲大社(島根県)、厳島神社(広島県)などの例を示す。

主な文献

 国立歴史民俗博物館編(2006):日本の神々と祭り ―神社とは何か?―,国立歴史民俗博物館.

 鳴海邦匡・小林茂(2006):近世以降の神社林の景観変化,歴史地理学48-11-17

 滋賀植物同好会編(2000):近江の鎮守の森,サンライズ出版.

 財団法人糺の森顕彰会編(1985):鴨社古絵図展,財団法人糺の森顕彰会.

 大内規行・中村克哉(1993):大国魂神社社叢の研究,府中市教育委員会.


(当ページの都合上、レジュメの掲載を一部のみとさせていただきます。ご了承下さい。)