本音を言う。
僕は、増田俊樹の監督した『おやすみアンモナイト』『沈黙の隣人』はあまり好きな作品ではなかった。
率直なところ、増田俊樹を見くびっていた。

映画はその絵の美しさで人を魅了する。そしてそこに物語が入り込み、その絵は昇華されていく。

僕は映画というものをそんなふうに考え、そういった作品が本当に好きだ。
海外で言うなら、ジュゼッペ・トルナトーレ、日本で言うなら大林宣彦といったところであろうか。

増田俊樹の監督した『トウキョウ・守護天使』をDVDで拝見させていただいた。
本当に冒頭から引きずりこまれた。最初から最後まで釘付けだった。
素直に増田さんに、絶賛の言葉を述べた。
そして、僕は増田さんを見くびっていた事を率直に言い、そしてお詫びした。

脱帽であった。圧巻であった。
そこには、自主っぽい絵の安っぽさの微塵すらなく、ただただひたすら美しい映像の中に、本当に純粋に演技する俳優が物語を紡いでいた。

僕や増田さんをとりまく映画監督は共通の知人も多いが、そんな周囲を見渡した中でも、この作品は、僕の中では本当にトップスリーに入る。
いや、一番良いな。

同じ事務所だからとか、お世辞抜きで、客観的に良い。
映画は好きか、嫌いか、の世界であり、自分の中にある「良い」という世界観と合致するかどうかだけだと思う。

何だろう、増田さんの思いとか、いろんなものが伝わってきて、本当に涙すら零れんばかりであった。

本当である。

それにしても出演している俳優が皆良かった。
外れなく良かった。

それは、演技しない潔さがほとばしっていたからだと思う。
下手なら下手なりに等身大の自分を持っていけば良い。
それが、演技の潔さだと思う。

神楽坂恵の田舎くささが本当に僕はすばらしいと思った。
『童貞放浪記』の彼女もそうだったが、ひたむきな演技をする俳優が僕は好きだ。

この『トウキョウ・守護天使』を観て、僕はひたむきに演技をして行こうと思った。

増田さんにありがとうと言いたい。

近藤善揮