2024年5月
世界パラ陸上が神戸で開催された。
ここで2位に入ればパリパラリンピックの出場が内定。去年パリで開催された世界パラ陸上で4位以内に入れず、出場枠を持っていない私にとってはとても大切な大会だった。
練習ではいい記録が出せるようになってきているのに、本番でうまく調子を上げられない、良いパフォーマンスができない、楽しめない。
そんな数年間を過ごしてきた。
何か変えなければ、また同じことの繰り返しになってしまう。そんなのは絶対いやだ!変わりたい。
と思い、今年からメンタルトレーニングを始めることに決めた。1月のことだ。
やると決めたものの、メンタルトレーニングとは具体的にどんなことをするものなのは分かっていなかった。
ただ弱い自分を変えたい。やってみたい。
その気持ちだけで飛び込んだ。
メンタルトレーナーの先生と初めての面談の日。
私は本番になるとこうなってしまう、こういう気持ちが湧いてくる、だから本番で力を発揮できる選手になりたいんだ、など、私が課題だと思っていることを先生に伝えた。
先生は、それってメンタルが弱いのかな?と言った。
それだけ楓ちゃんがそのことを大切に思っているから、力を発揮したいと思っているから、その気持ちも出てくるんじゃないかな。その気持ちって悪じゃなくて、楓ちゃんを頑張ろう!と思わせてくれる大切な気持ちでもあるよね。と話してくれた。
先生の話す言葉が、ひとつひとつ私の心に入ってくる。
そしてメンタルトレーニングとは、自分の取り扱い説明書を作ることなのだと教えてくれた。
なるほど。それって、、、すっごく面白そう!!
それからメンタルトレーニングが始まり、自分と向き合い続けてきた。
まだ始めて4ヶ月目だったが、その効果がはっきりと実感できた神戸世界パラ陸上になったのだ。
大切な大会ほど、様々な感情が押し寄せる。
勝ちたい、負けたくない、○m跳びたい、、、
その気持ちと一緒に戦うために、名前をつけた。
そして今を見続けた。
その結果、人生で1番楽しかったと言える試合になった。
本当に本当に本当に楽しかった。
ここ数年心から楽しめなかった私、去年の世界選手権で大失敗した私、その私が大舞台で自己ベストが出せた。銅メダルが取れた。
こんなに嬉しいことはない。
日本開催ということもあり、大歓声を浴びて試合ができたことも本当に楽しかった。
みなさんも私と同様、心から楽しんでもらえただろうか。
銀、銅、ともに4m66。
5本目までは私が銀メダルポジション。
ラスト6本目。兎澤選手のジャンプが、私の2番目の記録を上回り抜かれる。(同記録の場合、2番目の記録で順位が決まる)
私の6本目。ギリギリを攻めたがファール。
銅メダルとなった。
ここで勝てていたらもっと良かったのだけれど、でも、でも、私は全てを出し切った。
そう思えることがこんなにも幸せだなんて、こんなにも嬉しいなんて。知らなかった。
幸せだと心から思った。一生忘れない銅メダル。
今回メダルをかけた面白い戦いができて、改めて思った。
私は世界のトップで戦い続けられる選手でいたい。
面白い試合をしたい。見ている人に楽しいと思ってもらえる試合をしたい。
今回の神戸は世界ランキング上位3名が出場していなかった。
だからこそ、私はメダルを取れた。
私よりも上のランキングの選手もいた中で、メダルが取れたことについては自分を褒めてあげたいが、トップ選手たちがいなかったからというのもまた事実。
だからこそ私はもっともっと強くなりたい。
面白い試合ができる選手であるために。
自分自身も楽しむために。
さあ、いよいよパラリンピック。
パラリンピックは何が起こるかわからない。
私は私の最高のパフォーマンスをする。
それだけなのだ。
頑張ってきます。