※ネタバレ含みますので注意してください



このゲームはイメージエポックの「JRPG宣言決起会」で発表された、
「JRPG第1弾タイトル」作品です。
日本産RPGを揶揄して「JRPG」と言われている現状、
そのJRPGを「良い意味で」受け取られるように作品を創り、
自らパブリッシングしていくという決意を表明したわけです。


これはもう期待するしかありませんよね!
ファミ通のクロスレビューも33点と高得点ですからね!!
そんなわけで予備知識はほどほどに、発売日に買ってきてプレイして、
ようやくクリアしたため、レビューをまとめることにしました。


まず、最初にノーマルモードかイージーモードかを聞かれます。
ノーマルを選択すると難しいよ!ということですね。
これは期待感マンマンでノーマルを選択しちゃいますよね。
イージーはストーリーを楽しみたい人向けだそうです。
ちなみにセーブデータがある場合でも、起動時には必ず「ロードゲーム」ではなく、
「ニューゲーム」が選択されるという珍しい仕様ですが、
これは「プレイするたびに気持ちを新たにせよ」というメッセージに違いありません。


モードを選択すると、最初にイベントシーンが流れます。
イベントシーンはとても大事なので、決してスキップできません。
もちろん2周目でも許されません。
イベントシーンを飛ばす野郎はJRPGなんか遊ぶ資格はありませんよね!
もちろん、JRPGのイベントらしく、
キャラクターが喋ってる間は敵は攻撃してきません。
まるで水戸黄門!時代劇のワビサビを表現しているわけですね。
大聖堂に戻ってくると、サーシャが「絶対に許さない、絶対にだ」と、
大事な人を殺された悲しみよりも、許さない気持ちだけを前面に突っかかってきます。
ボクも許さない気持ちも徐々に芽生えてきました。
ゲーム内キャラとプレイヤーの一体感を追求したわけですね!
イベントの詳細は避けますが、全般的に三文芝居マニアが大喜びする内容になっております。
死亡フラグがビンビンに立ったのを見かけたら、「お察しください」


おおっと、三文芝居マニアじゃない皆さん、これはゲームですからね。
JRPG宣言決起会、21世紀のJRPGですからね、とても期待しますよね!



それではシステムについて説明します。
まず、アイテムは「セルフサーチングシステム」になっており、
HP回復系だろうが、パラメータ増減系だろうが、決して並び替えできず、
自分の目で探すシステムになっています。
これはきっと主人公ウォルフが整理の苦手な人で、これを再現したものだと思われます。
このような裏設定をも匂わせるのはきっと中高生にはビンビンくるものがあるのではないでしょうか。


次にゲームの根幹の一つ、スキルシステムですが、これは一言で言うと、「世界樹の迷宮」のシステムです。
本作には「世界樹の迷宮」の広報をされていた宇田洋輔氏がプロデューサーをされていますし、
そもそもアトラスからイメージエポックに移った新納一哉氏がいるわけです。
どのようなやりとりがあったかは知りませんが、
JRPG第0弾は「世界樹の迷宮」であったことは疑いようがありませんね!
「世界樹の迷宮Ⅲ」では既に新納氏はいませんでしたし、
実質的にはアトラスお父さん(他人)からスキルシステムを借りてきたようなものです。
これはまさに宮崎吾朗監督がお父さんから絵柄を借りてきた「ゲド戦記」を彷彿とさせます。
なんという愛でしょう!
21世紀のJRPGは愛をテーマにしているのですね。
ちなみにキャラごとに用意されるスキルは固定でキャラメイクなんかできませんしそんなこと私が許しません。


攻撃の属性には「紅」「蒼」「黒」「白」の4つの属性があるが、

別に考えなくてもなんとかなります。
一部に物理属性の攻撃をしてもダメージの少ない敵もいますが、
ダメージ0ではないので、これもなんとかなります。
これは現代のJRPGにおける「属性の氾濫」に対するアンチテーゼといえましょう。


次に、本作独自の「SPシステム」について。

SPは、HPがなくなった場合に、SPが減っていくというものです。
「ロマサガ」のLPを思い出すといいと思います。
SP技というのもあって、SPを消費する必殺技もあります。
SPがなくなると、そのキャラクターは二度と生き返りません!
SPを回復する方法は唯一、キャラクターが死んでしまったときに発動する
「イーリアの秘法」で、生存者のSPわずかに回復するだけです。


「SPは大事」「マルチエンド」と発売前から聞いていたため、
SPの残存数やキャラクターの生存数でマルチエンドが分岐されるのは容易に想像できました。
きっと、SPが死ぬほど削られる攻撃が後半から頻出してくるのだと身構え、
私は必死にSPを守り抜きました。
SP技の使用なんてもってのほかです。
そして私は最終章までSP消費を総計10未満に抑えることに成功しました!!
私はSPを守ることに成功したのです!!
ノーマルモードでも、SPが死ぬほど削られる攻撃なんか別になかったけど、
達成感を味わうことが出来ました。
最初からこれを見越していたのですね。まさに、してやられた!って感じです。


この達成感を味わった後のラスボスなど、オマケみたいなものです。
SP技を使い、2~3ターンでラスボスを葬りましたが、
普通にトゥルーエンディングが拝めました。
SP技は個別エンドやバッドエンドを見たい人用に作られた技だったんですね。



次に、「敵対心のコントロール」について。
本作では「敵対心のコントロール」が非常に重要な要素になっており、
敵ごとに、こちらのキャラクターに対する「憎悪(ヘイト:hate)」が設定され、
もっともヘイトが多いキャラクターに攻撃してくるというものです。
ゼノブレイドのヘイトシステムのようなものです。
本作ではこのシステムが非常に重要であり、ヘイトの調整を誤ると、
あっという間にHPがなくなり、SPが削られてしまいます。


あまりにも重要であるがゆえに、攻撃対象が変更されるたびに、

「敵の狙いが変わりましたっ!」とアナウンスをしてくれます。
「攻撃」→「敵の狙いが変わりましたっ!」→「攻撃」→
「敵の狙いが変わりましたっ!」→「攻撃」→「敵の狙いが変わりましたっ!」
→「攻撃」→「敵の狙いが変わりましたっ!」は日常茶飯事です。
画面上でヘイトの値を確認するためには
コマンド画面で△を押さないと表示されませんし、表示されてもみづらいわけですが、
アナウンスをみていればこんなものは表示する必要はありません。
ましてや名前の横のスペースにアイコンで表示すればいいんちゃう?
などという、安易な発想をするなどは、もっての他です。
ヘイトの状況も覚えていられない程度の記憶力の人は脳トレでもやってろってことです。



それではシナリオを進めるための工程について話しましょう。
主なシナリオとしては、王都にいた3万人いた住民が残り2千人まで殺されてしまい、
わずか1日で、残る住民を可能な限り救い、東西南北の開かれた門を閉じながら、
最終的にある方法を使い、脱出を試みるというものです。
門が開かれた状態で、なおかつ中央の大聖堂はまだ攻め込まれていないのに、
93%の住民が殺されているという状況、さらに、ゲーム内ではほとんど遺体を見かけないことを考えると、
90%ぐらいの住民は門の外で殺されたものと推測されます。
門外の大きな施設(東京ドーム級)でなんらかの催し物が開催されていて、襲撃されたのでしょう。
なかなか想像力をかきたてられる設定にまたまたググっとくる人も多いのではないでしょうか。


残りの2千人を救うためにはミッションを選択しなくてはいけません。

奪還任務と救出任務があり、奪還任務は「地域の奪還」を、
救出任務は「救出と地域の奪還」を行います。
奪還任務はバッドエンド用のものなので、普通は選ばない方が良いです。
一番最初に「奪還任務と救出任務どっちでもええんじゃよ?」的なニュアンスで選択肢がでてきますが、
これはヌルゲーマーをどん底に叩き落すためのものですのでご安心ください。
ちなみに後で奪還任務を選ぼうとすると、「えーっ!?奪還任務選んじゃうの!?キンモーッ☆」的な
返しをされてしまいますが、ドMユーザーは是非奪還任務を選ぶといいでしょう。


シナリオについてはここでは多くは語りません。
なぜなら、本編においても多くは語られていないからです。
伏線を張っても消化しない、矛盾なんて気にしない、
「昔なんかあった気がするが、今はそんなことはどうでもいいぜ!」を地で行く
まさに「漢の中の漢」のためのシナリオと言えましょう。
JRPGといえば、少年少女の苦悩が描かれるのが基本ですが、
主人公のウォルフは基本的に行き当たりばったりで周りに支えられてるだけですし、
ラシュディに至っては「あ、いたの?」というぐらいメインシナリオは出番がないですし、
セレスは「もう戦えない!」と言って引きこもった割には小一時間で割とあっさり復活します。
人間は一日では変われないということを我々に教えてくれているのですね!
イージーモードは何のためにあるのかって?すまないが、君が何を言ってるかわからない。



本作はわずか1日の出来事を示した作品ですが、
ミッションをクリアすることでしか、時間は経過しません。
戦闘を何千回やっても時間は経過しません。
このことは「君たちが遊んでいるのはゲームである。ゲーム以上の何物でもないのだよ」という
メッセージをひしひしと感じます。
ミッションをクリアする度に救出人数が表示されますが、
ミッション成功率などの概念はないため、ミッションを選択する時点で、救出人数が確定してしまうわけです。


最低でも千人は救出しないとバッドエンディングになってしまう仕様のため、

あまりにも救出人数の少ない選択肢を選ぶと大変なことになってしまいます。
データをセーブしておいて、救出人数が少なかった場合はミッション選択前に戻る…
というようなチキン行為をしない限りは「リアルラック(運)」のみが重要になります。
「ゲームといえど、結局はプレイヤーの運こそが真に重要であるのだ」というメッセージもここから伺えます。
このゲームを遊ぶときは『不運(ハードラック)』と『踊(ダンス)』っちまわないように注意しましょう。
是非チキン行為などをせずに、幸運(グッドラック)と踊(ダンス)ってばしっと救出してやりましょう。


ミッション自体は優しい仕様になっており、

基本的に「マップ上に書いてある●へ移動し、敵を倒すだけ」という簡単なものになっています。
□ボタンを押すといつでも全体表示され、というかむしろ全体マップだけみながら移動するのが基本です。
マップから自キャラを表示するカーソルがちょっとはみだすことがありますが、これは
「男たるもの、道からちょっと外れるぐらいが丁度いい」ということを示唆しているわけです。
探索任務なのに、既に探索された後だった。なんていう人は何もわかっていません。
マップを見ているユーザは神であり、ウォルフ達は神に導かれし者として表現されているわけです。
とにかく「マップ上に書いてある●へ移動し、敵を倒す」「マップ上に書いてある●へ移動し、敵を倒す」
「マップ上に書いてある●へ移動し、敵を倒す」「目標をセンターに入れてスイッチ」
「目標をセンターに入れてスイッチ」「目標をセンターに入れてスイッチ」
これを忘れなければ大丈夫でしょう。
あとはミッションごとの三文小芝居をみて楽しむなり好きにするがいいでしょう。
ちなみにマップはトバルNo.1のダンジョンみたいにシンプルなものですので、
風景を楽しんだりという要素は基本的に全くありません。
居住区域のマップに着くと、ついつい良かった探しをしてしまいそうになりますが、
硬派な漢にはそんなものはいりません、むしろASCII文字だけでダンジョンを表現してもよかったぐらいですね。


特定のキャラクターが同行するミッションをクリアすると、

キャラクターと仲良くなることが出来ます。
仲良くなると、「誓い」を交わすことができ、「誓い」を3度交わすと、
終盤に、そのキャラクターと「最後の約束」をすることができるようになります。
「最後の約束」を行っていないとバッドエンディングになってしまうため、
ここだけは注意した方がいいと思います。
え?なんで三回も誓う必要があるのかって?
「仏の顔も三度まで」ってことですよ。これ以上は言わなくてもわかりますよね?



ここで「最後の約束」とありますが、タイトルが「最後の約束の物語」とある通り、
極めて重要、最もインポータントなものなのであります。
私はサーシャと「最後の約束」をしました。
予約特典に書いてあるものを引用すると、


『契りを結ぶ相手が年若く且つ小柄な異性であった場合は、
自らの腰の上に乗せるなどして肉体的・精神的な包容力を意識すること。
相手の肉体への負担を強く考慮すること。』


とあります。
期待に胸を膨らませつつ、「最後の約束」ッッッッ!!!
ウォルフッッッ!!
サーシャを軽く抱きしめッッッ!!
軽く抱きしめッッッ!!


軽く抱きしめッッッ!!


軽く抱きしめッッッた!!!


軽く抱きしめたぞ!!!


あれ?終わり?


自らの腰の上に乗せるなどして肉体的・精神的な包容力を意識なんてせず、
相手の肉体への負担を強く考慮せず、
オープニングアニメにあるような接吻などせずとも
可能ッッッッ!!!
「最後の約束」は可能ッッッッ!!!
これが現実ですッッッッ!!



メインターゲットと思われる中高生に対し、「やっぱり大人は嘘つきだよ」ということを
否が応にも知らしめてくれ、「大人への道」を示したのです。
中高生のみなさん、頑張ってください!


とまぁ、ここまでがレビューとなります。


ここまで読んだからにはこの後の駄文も最後まで読んでいただきたいわけですが。


いやぁ、久々に素晴らしいゲームでした!
具体的には、お世辞にも良作とは言いがたく、かといってクソゲーオブザイヤーにノミネートする
ような品質には遠く及ばない程度の、ネタポジション的に非常にイライラする、
一番手に負えないタイプのゲームとしては最高峰といえましょう。


アイテムのソート不可、マップのカーソルずれ、罪の烙印Ⅱバグ、フリーズバグ、

などを見るに、「ゲーム開発は最後の1~2ヶ月の練りこみで急激に面白くなる」
という最後の練りこみを明らかにやっていないのは明白でしょう。
というか、デバッグ全然足りてないですよねこれ。
特に「敵の狙いが変わりましたっ!」は誰もつっこまなかったのだろうか。
お客さんでも、ゲームでもなく、納期と向き合っていたのでしょうか。


一番の問題は、「日本のJRPGを背負って立つんじゃい!」と大声で吹聴した結果がこれですかってことです。
何か一点、ただ一点でもいいから「尖がった」「21世紀の」「新しい」何かを期待していたんです。



だけど、何もなかった。



総合的なものを見ても、例えば上記に挙がっていた「世界樹の迷宮」なら、
あんこのエロh…ケレン味の効いた陰影が有名な日向悠二氏の「キャラクターデザイン」
おぱこn…ダイナミックで芸術的、重厚さと柔らかさの対比に定評のある長澤真氏の「モンスターデザイン」
FM音源時代より、新しい世界を切り開いてきた古代祐三氏の「音楽」
などに「世界観とシナリオ」「ゲームシステム」を加えて、
個々が高い(かつ尖がった)レベルのものを絶妙なバランスで調理できた結果できたものだったわけで。


このゲームには

「BLゲームっぽい無味無臭のキャラクターデザイン」
「何かとデジャブな感じのするモンスターデザイン」
「リアルで眠くなってしまった、お世辞にもイケてるとはいえない音楽」
「誰がどうみても出来の悪いシナリオ」
「明らかに調整不足、かつ基本設計からして失敗してるゲームシステム」
個々が低いレベルのものしかなかったと思うんです。
だけど、一点だけでも凄いものがあれば評価されたと思うんです。


これは個人的な主観なのでそんなことはないと思う人もいると思いますけど。

御影社長は次の記事にてこう述べられています。


http://www.4gamer.net/games/124/G012455/20110502001/


『売れなくても、良いものを作り続けて継続して3本やれば、

3本目で恐らく15万前後まで持っていける』


逆に言えば、

「最初に失敗した場合、その後どんなに良いものを作っても売れない」ということです。
これは「ルミナスアーク」シリーズで学んだことだと思います。
ルミナスアークはとにかくシナリオの出来が酷く、
ゲームシステムも決して褒められるようなものではありませんでした。
そして、続編は出来が良くなり、ルミナスアーク3では2画面を生かした秀逸なシステム、
キャラクターデザイン、シナリオ、全てが上質でしたが、売り上げは伴いませんでした。


御影社長、「最後の約束の物語」は本当にシリーズ化しても良い出来でしたか?

ルミナスアークで失敗した経験は「最後の約束の物語」で生かされましたか?


売れるゲームに最低限必要な要素は「コミュニケーション」ではないでしょうか。
「このゲームについて話したい!」「ユーザ同士で盛り上がりたい!」そう思わせる要素はあったでしょうか。
少なくとも、私はこのゲームについて良い意味で語り合えそうな要素は、
何一つ、見当たりませんでした。
メーカーとユーザとのコミュニケーションも、この内容でどうやってするんだろう?と思います。


ニコニコ動画に、このゲームの広告が表示されるを見るたびに、

(そういう内容のゲームだったっけかなぁ?)と首を傾げたくなります。



ゲームと真摯に向き合う。
JRPGと真摯に向き合う。
ユーザと真摯に向き合う。



これをユーザとの「最後の約束」にしてほしいです。


- 以上 -

(こんなゲームにこんな長文書くのはイメエポに頑張ってほしいからですよ!!!!)
(ゼノブレイドとマトモに向き合ったら死んでしまう説)

(明らかな間違いなどの修正依頼はTwitter @kaboo_factory までどうぞ)