(64) クインシー・ポーター(1897-1966):ヴィオラ協奏曲(1948)

 クインシー・ポーターという名前はクインシー・ジョーンズやコール・ポーターを連想させるので、クラシックとポピュラー音楽とを股にかけた作曲家のように勝手に思い込んでいた。ところがどっこいバリバリにアカデミズムにいた作曲家である。
 イェール大学を卒業、1年間、パリに留学後、ニュー・ヨークでエルネスト・ブロッホとヴァンサン・ダンディに学んだ。1923年にクリーヴランド音楽院で教職に就くが、1928年に作曲に専念するために辞め、再びパリに渡り3年間を過ごす。1931年にクリーヴランド音楽院に戻り、その後、ヴァッサー大学、それからニュー・イングランド音楽院で教鞭を執り、最後はイェール大学の教授職を1965年まで勤め上げる。
 作品は2曲の交響曲、9曲の弦楽四重奏曲、ハープシコード、ヴィオラ、2台ピアノなどのための協奏曲など「絶対音楽」が多い。

 1948年作のヴィオラ協奏曲はパウル・ドクトールにより初演され、被献呈者であるウィリアム・プリムローズはそのあとで演奏した。
 4楽章20分の作品だが、最初の3楽章、アダージョ、アレグロ、ラルゴは続けて演奏される。ヴォーン・ウィリアムズあたりを連想させる民謡風の息の長い旋律がヴィオラによって延々と奏される。協奏する管弦楽は色彩的だが、ヴィオラの音を隠さないように周到に配置されているようだ。それが延々と歌うヴィオラの音楽を単調なものにしないようにしている。第2楽章アレグロは緩序楽章中の挿話のように聞こえる。第3楽章には情熱的なカデンツァがある。そして、第4楽章アレグロ・ジュストは快活な舞曲となる。
 決して威圧的にならない、爽やかな風のような協奏曲である。

 ヴィオリストはエリーシャ・ネルスン。アラスカ生まれ。フロリダ・フィルハーモニーの主席ヴィオラ奏者を務めた後、クリーヴランド管弦楽団のメンバーとなった。
 このディスクはポーターの音楽に惚れ込んだ彼女によって録音された、ヴィオラ音楽全集。ソロとピアノ、ヴァイオリン、あるいはハープとの二重奏が収められている。さすがに全体が同じような調子で、聴き通すといささか飽きる嫌いはある。
 指揮とピアノとヴァイオリンはジョン・マクラフリン・ウィルスン(ギタリストにあらず)。
 ネルスンのサイトで試聴可。

Quincy Porter: Complete Viola Works/Quincy Porter

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