(65) ヨハン・バプティスト・ヨーゼフ・マクシミリアン・レーガー(1873-1916):3つの無伴奏ヴィオラ組曲作品131d(1915)

 マックス・レーガー。大変な大食いだったらしい。食った分だけ吐きだしたというべきか、作品も多い。しかしジャンル的には偏っていて、室内楽とオルガン曲が目立って、交響曲に分類されるのはシンフォニエッタだけで、協奏曲はピアノとヴァイオリンしかなく、どちらも長い。
 他方、室内楽の充実ぶりはブラームス以上であろう。ただしあまり親しみやすい旋律はない。晦渋でときには無調に近づくほどである。だいたいシェーンベルクがこの1歳年長の作曲家を大変評価していた。
 私見ではレーガーの作風はおよそ3つの傾向があると思う。ひとつは相当に甘美な後期ロマン派スタイル、これはそんなに多くない。《A. ベックリンによる4つの音詩》などである。
 もうひとつは半音階的な晦渋なスタイルで、多くの作品がここに属する。
 そして、擬古典的というか擬バロック的なスタイルで、モーツァルトやベートーヴェンの主題の変奏曲とフーガや弦楽器の無伴奏作品などがある。もちろんこの3種は明確に分かれているわけではなくて、半音階的なスタイルの先行楽章に、フーガの終楽章を据えた弦楽四重奏曲などもある。

 弦楽器の無伴奏作品ではバッハより1曲多く書いたという、7曲の《無伴奏ヴァイオリン・ソナタ》、作品117と作品131aの2集ある《無伴奏ヴァイオリンのための前奏曲とフーガ》、《3つの無伴奏ヴィオラ組曲》、《3つの無伴奏チェロ組曲》があるが、いずれも晩年の作品である。晩年といっても40代なのだけれど。
 《3つの無伴奏ヴィオラ組曲》は131dという作品番号が与えられているが、aが《無伴奏ヴァイオリンのための前奏曲とフーガ》、bが《古風な様式による3つの二重奏曲》、cが《3つの無伴奏チェロ組曲》である。

 レーガーは死の5カ月前、作品131のプロジェクトの4番目《無伴奏ヴィオラ組曲》の構想をジムロック出版への手紙の中で述べている。無伴奏ヴィオラ曲はバッハも書いていないというのが気に入ったようだ。4つめの組曲を書こうという構想もあったようだが、レーガーの死に阻まれてしまう。
 3曲は、ト短調、ニ長調、ホ短調という調性で、いずれも楽章数は4、演奏時間は10分強くらいである。バロックの対位法的な要素と現代的な動機作法とが組み合わされており、ことさらバッハをまねているわけではないのだが、レーガーの背景にバッハが透けて見えてくるところがある。
 悲劇的な第1番、明朗な第2番、陰鬱な第3番といった感じで各曲の性格わけもなされているようだ。

 第1番だけを収録したディスクは結構あるが、3曲揃いは恐らくタベア・ツィンマーマン盤、今井信子盤、深井碩章盤だけだろう(Da Camera Magnaのレーガー室内楽全集を除けば)。

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Reger: Music for Viola/Max Reger

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komponisten.at


 「だけだろう」などと書いたら、ログちゃんさんのご指摘だ。
 
 小林秀子盤、一応カタログでは生きているが、ドイツのjpcでは見あたらないので入手困難かも。

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 ビアンキ盤。廃盤のようだ。

Reger: Violin Sonata No. 7; The 3 Viola Suites/Max Reger

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 ブカチ盤。廃盤の様子。

Martinu: Sonate No. 1 pour Alto et Piano/Rebecca Clarke

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 フランク盤。fnacでは買えます。

Reger: Suites for Solo Viola Op.131 d/Max Reger

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 コーテーズ盤。mp3ダウンロードのサイトがあるが、USAからしか使えないと。

3 Suites & Sonata/Reger
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 ロバートスン盤。これも廃盤。

Max Reger: The 2 Serenades; The 3 Suites/Michael George

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 ついでに楽譜はこれ。シンプルにみえて、なかなか弾くのは難しい。