(44)アレッサンドロ・ロッラ(1757-1841):ヴィオラ協奏曲

 イタリアのパヴィアで生まれたアレッサンドロ・ロッラはミラノでヴァイオリンとヴィオラを習い、15歳で自分自身が作曲したヴィオラ協奏曲のソリストとしてデヴューし、大成功を得る。パルマの王立管弦楽団のヴィオラ奏者、アカデミア・フィルハルモニカ・パルミジアーナの第1ヴァイオリン奏者など務めつつ、各地で活躍。1802~1833年、ミラノ・スカラ座のコンサートマスターを務め、このオーケストラの技術を大いに高めた。ロッラの門下にはパガニーニがおり、タルティーニとパガニーニのあいだを埋めるミッシング・リンクなどともいわれる。もっともパガニーニを実際の教えたかどうかは疑問もあって、教えたとしてもごく短期間だったらしい。
 作曲家としても多作で、生涯に600曲ほど作曲しており、12曲の交響曲、20曲のヴァイオリン協奏曲、15曲のヴィオラ協奏曲などがある。ヴィオラ関係の室内楽では78曲のヴァイオリンとヴィオラの二重奏曲、32曲のヴィオラ2挺の二重奏曲、4曲のヴィオラと通奏低音のためのソナタ……、とても聴ききれない。
 ロッラの作品は、古典派の協奏曲の中にあって極めて独創的とはいえないのだが、シュターミツ親子、ベンダ、ホフマイスター、シュペルガー、ディッタースドルフ、ツェルター、ヴァニュハル、ヨーゼフ・シューベルトなどのヴィオラ協奏曲を集めてみても、15曲に及ぶか及ばない数ということになると、ロッラにはここに登場していただかないわけにいくまい。ロッラのヴィオラ協奏曲の成立年代はわかっていないが、恐らくパルマのオーケストラのヴィオラ奏者をしていた1882~92年ころにほとんど書かれたのではないかといわれている。
 15曲のヴィオラ協奏曲を録音しようという果敢なレコード会社はないようだが、イ・ムジチがマッシモ・パリスをソリストに立てて、ロッラ作品集を出していた。変ホ長調の協奏曲に変ホ長調のコンチェルティーノ、それからディヴェルティメントとロンドといった小品。ロッラの作品はL. インツァギとL. A. ビアンキによる作品目録が作成されており、BIというナンバーがつけられている。このCDの変ホ長調協奏曲はBI.545。別にヴォドール・ナジがヘ長調の協奏曲を録音しているが、これはBIナンバーの記載がない。変ホ長調協奏曲はオペラ・アリアの器楽版のような華麗さが特徴。ヘ長調はもっと器楽的だ。他に、イ・ソリスティ・ヴェネティのロッラ作品集がEratoにあって、そこで変ホ長調BI.546が収録されているらしいが、私は未聴である。
 下に紹介したCDは、ハ長調BI.541、ニ長調BI.543、変ロ長調BI.547が収録されたもの。ファルリツィオ・メルリーニというヴィオリストが弾いている。
 曲の印象はおおむね「モーツァルト風」なのだが、ヴィオラ・ソロはモーツァルトのヴァイオリン協奏曲よりはいささか技巧的だ。左手のピツィカート、半音階の上行下降スケール、極度に高いポジション、オクターヴのパッセージなど、パガニーニのお家芸はロッラが初めてヴァイオリン奏法に導入したのだという。もっともロッラのヴィオラ協奏曲ではパガニーニのヴァイオリン協奏曲ばりのアクロバットが聴かれるわけではない。
 ハ長調協奏曲は冒頭のユニゾンの旋律が垢抜けないが、ヴィオラが登場するとこの旋律をダブル・ストップで弾くという技巧を見せる。全体で33分ほどの当時としては長い部類の作品だろう。ニ長調と変ロ長調は20分前後で、もっとリラックスした感じで、ロマン的な芳香が漂う。12曲すべてを聴けたわけではないし、どれか1曲がぬきんでて優れているわけでもないので、特定せず、ロッラのヴィオラ協奏曲として掲げておくこととする。
 ヴィオラ・ファンの皆さま、どうかこのディスクを買ってください。よく売れたら、ロッラのヴィオラ協奏曲集第2弾をTactusがリリースしてくれるかも知れません。

Rolla: Viola Concertos/Alessandro Rolla

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