Reger: The String Quartets; Clarinet Quintet

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 レーガーの5つの弦楽四重奏曲はベルン弦楽四重奏団による全集(cpo)で聴いていたが、ドゥロルツ四重奏団に全集があったとは不明にして知らなかった。このリイシューが出て初めて知ったのだ。

 吝嗇で有名なレーガーは(しかもファースト・ネームがマックスなんだから)、アウトプットも半端ではなく、とりわけオルガン曲と室内楽はかなりの作品数に上る。室内楽では、管楽器の曲こそ少ないが、無伴奏弦楽器のソナタや組曲から六重奏までよりどりみどりだ。
 様式的にも、バッハの偽作のような無伴奏弦楽曲から、後期ロマン派的和声の爛熟を体現した多声室内楽までとても複眼的。
 とはいえ、ピアノ五重奏やピアノ四重奏など、ピアノのはいった室内楽はどうも音がごちゃごちゃしていて晦渋な印象が強く、鬱陶しくてあまり聴く気にならない。
 それと比べると弦楽四重奏曲は、もっと風通しがよくて、レーガーの室内楽のなかでは私はよく聴く。通し番号は振られていないが便宜的に番号を付けると第1番と第2番(作品54-1と2)はレーガーにしてはかなり軽妙なところがある。ところが第3番(作品74)になると50分近い演奏時間となってまさに大食家のアウトプット。20分近い第1楽章は途中でフーガも出てきて、複雑この上ない。フーガといえば、第4番(作品109)も第5番(作品121)も終楽章はフーガになっていて、これが楽しい。
 ベートーヴェンやモーツァルト、あるいはバッハやテレマンの主題による変奏曲の最後にお約束だといわんばかりにフーガを配したレーガーの面目躍如というところだ。ドゥロルツの演奏はともするとギクシャクと奇妙な印象になりがちなレーガーの旋律を何とも自然に弾ききっており、相当に共感を寄せているのではないかと思える。

 ベルン弦楽四重奏団が作品番号なしの若書きの四重奏曲(終楽章だけコントラバスがはいる)をカップリングしていたのに対して、本盤はライスターとのクラリネット五重奏曲がカップリング。何度かこの曲を録音しているライスターの最初のヴァージョンである。ブラームスでもまだまだ生々しいと思われる方は、レーガーのこの枯淡の境地を。