(36) アーノルド・バックス(1883-1953):ヴィオラ・ソナタ(1922)

 バックスとの遭遇はまずは交響曲第4番だった。Chandosへの録音で、イギリス音楽ファンにはたいへんに評判になっていた。私も聴いてみたが、さっぱりよさがわからなかった。
 ケルトの伝統に影響を受けたというが、曲の肌触りは印象派的。しかし、ドビュッシーやラヴェルと比べると遙かに地味で晦渋。以後、バックスの交響曲は7番まで録音が登場し、いまではNaxosで全曲が廉価盤で手にはいるようになった。
 バックスのヴィオラ曲はすべてライオネル・ターティスのためのものといっていいだろう。ヴィオラ・ソナタの他には、管弦楽伴奏盤もある幻想曲、ヴィオラとハープのための幻想ソナタ、演奏会用小品がある。
 さて、ヴィオラ・ソナタは緩急緩の3楽章制。ピアノの断片的な打弦の上でヴィオラが弱音から主題を歌い出していく。この入りながんとも味がある。寡黙な紳士が訥々と語るような。華麗な経過句(これがあまり華麗に聞こえないのがバックスらしい)をへて、主題が確保される。ターティスの好んだ低音域が思う存分駆使されている。
 第2楽章は怒ったようなスケルツォ。ピアノも音符が多くて難しそうだ。
 終楽章はモルト・レントで曲は地味な方へと沈み込んでいく。
 女性のヴィオラ奏者には素晴らしい人たちがたくさんいるが、この曲に限っては、何だか男性奏者が弾くのが相応しいような気がする。
 ディスクはまずはNaxosにいい録音があるので、これがお勧め。マッジーニ四重奏団のヴィオリスト、マーティン・アウトラムとジュリアン・ロルトンのピアノ。
 それからターティスの録音を紹介しておこう。古いものだが、結構聴きやすい。

Bax: Viola Sonata; Legend; Trio in One Movement; Concert Piece

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Lionel Tertis: The Complete Vocalion Recordings (1919-24)
Tertis
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