よく晴れていた。
16時に待ち合わせをして、母校へ向かう道を歩いてではなく、車で向かった。
家は、昔と変わらず立派で大きくて暖かく見えた。
誰かが、まだ明るいな~と言った。
大きな窓に反射する西日を見たのか・・・
ピンポ~ンと押す前にAのお姉さんが出てきた。
小柄でとってもかわいいお姉さん。
横浜の山手にある某女子高に通っていてとても頭の良い人だった。
数年前に結婚して近所に住んでいるらしい。
玄関に入ると、タイムスリップしたような感覚になった。
あの時とまったく変わってない。
ピカピカでひろ~い。
ただ、お姉さんは向かって右側の部屋に私たちを案内してくれた。
昔は左側の和室で遊んでいたのだけれど。。。
右側の部屋は、やはり広い和室で2間続きのようだった。
そして、その奥に大きなご仏壇があった。
仏間なのか。。。写真などは飾っていなかった。
暖房はしっかりはいっていたけれど、とても冷たいと感じた。
そして、笑っているAがあの日のままの姿でそこにいる気がした。
ご両親にご挨拶をしてお線香をあげた。
私は、お線香の香りが嫌いだ。
この世界の香りではないと、そんな気がするから。
学生時代のお礼をして、亡くなって直ぐに来る事ができなかった事のお詫びした。
そして、Aの思い出話はしないで、当たり障りのない話だけをして、30分ほどで家を出た。
また遊びに来てねと言われた。
きっとこれが最後だろうと、みんな思っていた。
まだ時間が早かったので、るみちゃん(仮名)が海でも行こうか?と言った。
横浜は、便利なとこでちょっと走れば海がある。
近場だと工業地帯になるけどそれはそれで夜はきれいだし、湘南まで行けばそれなりに絵になる。
もう1人の子が逗子というところに住んでいるので送りがてら行こうという事になった。
車の中は、相変わらず静かだったのでYがGReeeeNの『キセキ』をかけた。
・・・Yって昔から曲のチョイスだけはうまいよね。
・・・そうそう。服のセンスはなくていつもN(私)に選んでもらってるのにね。
みんなやっと笑った。
A君は、きれいな顔の男の子だった。
かっこいいというより、きれいで細くて突っ張ってるけど、やさしい子だった。
曲が『愛唄』に変わった。
ファンモンに変わりミスチルの頃には油壺というとことに着いた。
ここは、岩場が多い。
るみちゃんが、手袋を出した。
A君にお誕生日にもらったと言っていた。
私は、シルバーのクロスのネックレスと手紙を出した。
シルバーなので色が変わっていた、、、時間の長さが刻まれているようだった。
・・・芝居がかってる。。。こういうの嫌いなんだな。
・・・今度いつ来れるかわからないし、今日だし。。。いいんじゃない・・・
私は、できるだけ小さく手紙をちぎって波に流した。
一瞬で消えた。
・・・あっという間に解けちゃうんだろうね。
・・・それでいいんじゃない?
・・・これは、流れないね。
・・・深く沈む。
・・・魚が食べたら大変だし。
・・・じゃあ、うめれば?
岩をどけて下のほうに埋めてまた岩を戻した。
・・・手袋は?
・・・これは、、、、もってる。そのうちなくなるかもしれないし・・・
Aは、高校を卒業して半年で交通事故で亡くなった。
単独の事故だった。
それが救いだとお父さんが言った。。。
・・・自分は死なないと思ってるからな。
・・・18や19では死は遠い存在だよね。
・・・でも、生きてるって言う事は死ぬことなんだよね。
食事する気も起きなかったので、スタバでちょっと話して解散した。
・・・またね。
みんなまたね。。。と言った。
家に着いて、急遽帰ってきたYはそのまま研修先に帰らないといけなかった。
・・・大丈夫か?
・・・大丈夫だ。
・・・気をつけて行ってきて。
・・・珍しいこというな?
・・・月がきれいだから
・・・またね。。。
1つが終わってまた何かが始まる。
ありがとう。。。
今日も月がきれいです・・・
完