見守るということ | 心に灯をともす物語

心に灯をともす物語

世に埋もれた出来事や名言を小さな物語として紹介します。読者の皆様の心に灯がともれば幸いです。

こんにちは

心に灯をともすおいどんです!






のお母様には二人の男の子がいました。

お兄ちゃんは脳に障害のある体で

生まれてきました。



そんなお兄ちゃんを二歳下の弟は兄弟げんかのたびに

「お兄ちゃんはばかだから。」

と感情をぶつけていました。



たとえ兄弟げんかだとしても

親として聞き捨てならないコトバを吐く弟を

叱ろうと思うのは当然のことです。



しかしこのお母様は違いました。



叱りたい、諭したい気持ちを何度も何度も抑え

弟に接し続けたのです。

弟の心の変化、人としての成長をじっと見つめ続ける

選択でした。




お兄ちゃんが小学校1年生の時のこと。

お兄ちゃんの誕生会に友達が集まってくれました。

ところが楽しいパーティの最中、お兄ちゃんが何に腹を立てたのか

急に友達に殴り掛かかってしまうのです。



それを見た小さな弟がこう叫びました。

お兄ちゃん!

殴るなら僕を殴って。

僕なら痛くないから・・・。



キッチンで料理を作りながら一部始終を背中で聞いていたお母様は

感動で震え振り向くこともできず

泣きながら立ち尽くしたそうです。




この弟が小学校にあがります。

一年生のクラスの隣の席は体の不自由な生徒でした。

手に障害があったのです。



体育の授業。

この子は体育着の着替えがなかなかうまくできず

授業に遅れてしまっていました。

無理に指導しない方がいいな・・・と担任の先生は

しばらく見守ることにしました。



ところがある日気づきます。

遅刻しなくなったのです。

不思議に思った先生はこっそり教室を覗きます。

するとそこには着替えを手伝っているあの弟の姿が・・・・。



心を打たれた先生は

本人を褒めそしてこの出来事を皆に知らせようと思いました。

しかし先生は思いとどまりました。



この子は褒められたいからやっているのではない。

親切というものは褒められるためにするのではない・・・。

クラスの生徒に何が最も大切なことかをわかってほしい。

これは言葉ではない。

この7歳の少年のこのままの行動を守ってあげることだ・・・と。



クラスに授業参観日が訪れます。

七夕の短冊づくりの授業です。

一人ひとり思い思いに願い事を書きます。

お母さんたちも笑顔でわが子の姿を見つめています。

ようやく出来上がりました。



それはそれは子供ごころに満ち満ちた

元気でほほえましいお願いがたくさん集まりました。

先生が嬉しそうに一人一人の短冊を紹介します。

紹介するたびにクラスのお友達やお母さんたちから

拍手が湧き起こります。



次は・・・と先生が言いかけた時、流れが止まりました。

先生が黙ったままぢっと短冊を見つめているのです。

どうしたのでしょう・・・。



先生は深く息をしました。

そして震える言葉を抑えながら読み上げたのです。

そこにはこう書いてありました。


神様
  となりの子の手を
   早くなおしてあげてください。



あの弟の短冊です。



この瞬間、先生の胸にはもう抱えきれなくなりました。

こらえきれず先生は着替えの手伝いの話を紹介したのです。

涙を流しながら先生は話しました。



廊下にあふれるくらいのたくさんのお母さんたちも

真っ赤な顔で聴き入っています。



その時です。

廊下から一人のお母さんが飛び込んできました。

自分の子が迷惑をかけているのではと、肩身の狭い思いで

廊下の隅で小さくなっていた手の不自由な子のお母様です。



そして弟に抱きすがって泣きながら叫びました。


ぼうや
  ありがとう!ありがとう。
   ありがとう。ありがとう・・・・


いつまでも廊下の外に響き渡っていたといいます。



この教室のどこかでもう一人・・・

涙で震えながら我が子を見つめていたお母様が

いらっしゃるはずです。



この弟のお母様です。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



この少年の心のチカラ・・・言葉のチカラを感じます。



               


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