ヤマハミュージックコミュニケーションズ
夜会 VOL.13 24時着 0時発

かの有名な夜会だけど、CDも買ったことがなかったので、まったくの初体験。ミュージカルは時々観るけれど、コンサートはしばらく行っていない。なぜコンサートに行かないか?盛り上がるのが苦手というだけなので、むしろミュージカルより落ち着いて観られる夜会は、一度行ってみたかったイベント。

実際、観終わった年配の女性が「ミュージカルの曲が終わるごとの拍手は興ざめする。夜会にはそれがないのがとてもいい」と言っていたが、それには激しく同感。夜会ではラスト以外に拍手がまったく入らない。観客の態度って大事だと思う。


◎中島みゆき『夜会VOL.14 24時着 00時発』  瀬尾一三音楽監督 於:青山劇場


夜会は、当初から「言葉の実験」といわれているが、今も実験。つまりストーリーがあるようなないような、主題があるようなないような、やや難解な構成で、もちろんストーリーをここに書くのは非常に難作業である。

そもそもストーリーを求めるのはおかしな話で、あくまで観るべきは不思議な世界観(舞台セットも素晴らしい)、聴くべきは中島みゆきの歌唱力と曲の持つ重さ。

今回は前回に引き続き、「命のリレー」 を中心とした構成だったが、この曲を生で聴くだけでもある種の価値はあったかと思う。この人が紡ぐ日本語の重さ、世界観の大きさには、圧倒される。

それだけに自ら「言葉の実験」という夜会全体が、実験の域を出ていないことがちょっと残念でもあり、だからこそ、夜会は続いているのかな、とも思う。

しかし今は当日券もある。少し飽きられたのだろうか。ポピュラリティを持たせる必要はない。難解なら難解でいいと思うが、やや中途半端なのだ。非常に泥臭い、リアリティのある表現や演出があるかと思えば、無国籍で現実感を離れた幻想的な場面もある。後者で統一して、もっと音楽を聴かせる構成にしてほしい。芝居の部分は正直厳しい。リアリティがあればあるほど、ベタさが際立つ。ただ、曲数は昔より増えたと、常連の人が言っていた。

ところで青山劇場より、オーチャードホールの方が企画に合っていると思うが…。

中島みゆき, 瀬尾一三
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