senchi


24―TWENTY FOUR― の人気に便乗したのでしょうが、映画のプライドみたいなものはなかったのでしょうか?もちろん時間的なものも含め、制約もあるでしょうが、映画の特性を生かした迫力や深みを出すことは可能だったと思うのですが、あのプロットではテレビでもOK。むしろ日本的にいうと、2時間ドラマの世界観でした。


『ザ・センチネル/陰謀の星条旗』  クラーク・ジョンソン監督 マイケル・ダグラス/キーファー・サザーランド主演


マイケル・ダグラス演じるギャリソンは、ベテランのシークレットサービスの護衛官。レーガン大統領を暗殺者から救った実績がある。そこに再び現在の大統領とその家族に対する暗殺計画が持ち上がる。その際、ギャリソンが犯人たちの罠にはまり、ギャリソン自身が内通者として疑われることになる。ギャリソンを追い詰めていくのが、トップ調査員・ブレキンリッジ役のキーファー・サザーランド。腕利きぶりは、「24」のジャック・バウアーに近いものがあるが、こっちの方がスマートな感じだ。ペアを組む調査員もセクシーな女性、エヴァ・ロンゴリア演じるジル・マリンだ。アメリカのTVドラマファンの私は、エヴァ・ロンゴリアを見て「あっ、ガブリエルがこんなところに出ている!」と思ってしまった。ガブリエルとは、彼女の「デスパレートな妻たち」 の役名だ。


ギャリソンは逮捕直前に逃亡し、本当の犯人探しに奔走するわけだが、このあたりも「24」の一部分とよく似たストーリー展開だ。ただ、その後の犯人の追い詰め方も単純で軽くて、そもそも真犯人(内通者)もあまり事前に描かれていないものだから、真実が明らかになっても、観ている者には誰それ?という感じ。犯人の大統領暗殺の意図や大義もはっきりしない。犯人像も描ききれていないからだ。内通者が首謀者に家族を殺すと脅されるのも、「24」での定番。


でもそんなことよりつまらないのは、ギャリソンが罠にはまったきっかけ。護衛官がファーストレディと不倫なんて非現実的すぎるし、同情の余地もない。だからいくらギャリソンが追い詰められても、「24」でジャックが追い詰められている時ほど、気持ちが入っていかない。逮捕されてもしょうがないでしょ、という感じになる。実際にラストで退職して見送られている様子もかっこよくないし、マイケル・ダグラスも仕事を選んだ方が良いような…。この映画でも、キーファー・サザーランドの方が良い役だったと思う。


キーファー・サザーランドファンなら、緊迫感はまったくないけど、安心して観られる映画だ。ジャックが映画で少しお休みして、気楽な任務についている感じ。ハリウッド映画のプロデューサーにお願いしたい。2時間で「24」並みの緊張感と深みのある作品を使ってほしい。「24」は長すぎて、寝不足になるから。

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14才の母

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日本テレビで10月11日(水)22:00からスタートした、志田未来主演の「14才の母」 を観ました。


今クールに目立つ社会派ドラマの雄は、これでしょう。「女王の教室」 のある種の成功がもとになっているのでしょう。同じ子役を主演に、今度は14才で子どもを産むというテーマへの挑戦です。臭いものに蓋をするように耳障りのよいテーマのドラマが多い中、この勇気と挑戦は歓迎です。どのように描かれるのかは今後ですが、第1回目はごく普通の14才の中学生・未希(志田未来)が1才年上の智志(三浦春馬)との関係を持ち、妊娠の兆候があらわれるまでが描かれています。ここまでで判断すると、いまひとつ引かれるものはありません。未希と智志が不良に絡まれるのが二人の関係のきっかけというのも陳腐だし、そもそも関係を持った場所、あそこはどこ?という唐突感。未希の性格も、「女王の教室」の神田さんそのままで、あまり成長していません。子役の演技の幅に配慮したのでしょうが、そう考えると、杉田かおる (←古い)は天才だったのだな…と思います。


それはそうと志田未来は、同世代の演技派といわれる子のなかでは、非常に正統派イメージの子役だと思うのですが、逆にその子どもっぽさが特異で目立つということに驚きます。彼女の無邪気で、罪のなさそうな感じが、おそらく今後の展開の中で生きてくるのだと思います。


以下は直接ドラマとは関係ありませんが…。

それにしても「母になるということ」「母性」がこれほど大きなテーマになる現代社会を、歴史の中で予想したでしょうか。本来、子どもを産むという根源的なことに、これほど社会が悩み、また女性を悩ませる社会は、必ずしも健全とは言えません。もちろん例えば江戸時代、女が子どもを産まない、産めないということは、その女性個人にとっては今では想像もつかない苦悩だったでしょう。そういう意味では自由になった社会で、本当はもっと自由に母性を考えればよいのに、古い規範や女としての本能や社会の目に女たちは縛られているのです。


14才で子どもをつくらないに越したことはない。その共通認識には賛成です。でもできてしまった以上、安全に産み、そして母親の家族を含めて力を合わせて育てられるのであれば、何も中絶する必要はないと思います。学校には戻ればいいし、経済的に許すなら高校にも大学にも通えば良いのです。子どもを育てながら働く母親は多いのですから、まだ若い自分の両親の支援があれば子育ての傍ら学業を続けることはできるはずです。いずれ自分の両親が年老いた時、義務教育も終えていない自分では改めて働こうとしても社会はなかなか受け入れてくれません。


しかしそれには14才の母のその両親が精神的に成長した生活力、人間力のある大人でなければなりません。このドラマもそういった点も重要なテーマになっているような気がします。第1回で描かれていた両親(生瀬勝久・田中美佐子)は、必ずしも大人とはいえません。今の両親ってこんな感じだろうな、と思える両親です。子どもをあまり叱らない、自分自身にもまだまだ生臭さや自信のなさがある、普通の両親像です。ここにはとてもリアリティがありました。

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僕の歩く道

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フジテレビで10月10日(火)22:00からスタートした、草彅剛主演のドラマ「僕の歩く道」 を観ました。


今クールは社会派ドラマ目白押しです。軽薄な連ドラへの視聴者のマンネリ感がようやく製作者やテレビ局に伝わったのでしょうか。このドラマもある種これまでタレントが主演するようなテレビドラマではタブーだったテーマに果敢に取り組んでいます。私はそれだけでも十分に評価されることのように思います。


人はさまざまな事情や病気を抱えて生きているのに、語ることや表に出すことが悪いことのように目くじらを立てる、事なかれ主義のテレビ界、それが象徴する日本の社会のそうした側面は好きではありませんでした。でも最近ではようやく心の病や今回の自閉症のような誤解を招きやすいテーマにも取り組むようになりました。私は身内がそうした悩みを持っているので、こういうことに敏感ですが、まったく悪いこととは思いません。


このドラマも、まだ初回だけなので内容の評価はできませんが、語り口は悪くない。そして草彅さんの演技もなかなか良いと感じました。人気タレントがやると美しくまとまりすぎて現実感がないのですが、彼の場合、どうもそうならないのは役者としては良いことでしょう。ドラマでは草彅さん演じる自閉症の31歳の青年・大竹輝明が幼なじみの獣医の女性・都古(香里奈)の紹介で動物園に就職します。そこで起こるさまざまな出来事が核となり、今後周辺のドラマも描かれるということでしょう。今のところ、特別意地悪な人も、特別善人も出てこない。そういう意味ではリアリティもあるように思います。あえて言えば、都古の存在がドラマ的ファンタジーのように思います。この人の役なくしては物語は成立しないのですが、ちょっと演技が下手すぎると思うのは私だけでしょうか?


全体としては丁寧に作られていると思います。落ち着いて観られるドラマです。来週以降が楽しみです。

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かもめ食堂

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かもめ食堂

DVDをリリースしていたので、さっそく借りてみました。


『かもめ食堂』  荻上直子監督・脚本 小林聡美/片桐はいり/もたいまさこ主演


最近地味だけど、しみじみとした良い作品をつくる若い女性監督が増えたような気がします。でも私は個人的にはここまでしみじみしていると、ちょっぴり退屈してしまいましたが…。私は「ゆれる」 の西川美和さんがいちばん好きです。


それはそうとして、この作品。それなりに楽しめました。何も特別な事件は起こらないけど、なんとなく目を離せない。何だか余韻ばかりが残って、結局何だったのだろうというのはあるけれど、ある程度歳を重ねた女性なら共感できるかもしれません。


主人公サチエ(小林聡美)は、フィンランドのヘルシンキで「かもめ食堂」という名の食堂をやっています。経緯は不明です。はじめたばかりなのか、なかなかお客さんが来ません。そんなある日、ひょんなことから出会った日本人旅行者ミドリ(片桐はいり)を家に宿泊させます。ミドリはツアー客とかそういうのではなく、世界地図を広げて指をさしたところがフィンランドだったので、来てしまったらしいです。私もやってみたいな…と本気で思いました。海の上とか、山の頂上を指しそうですけど。もう一人のマサコ(もたいまさこ)は、随分遅れてひょっこりやってきます。彼女は世話をしていた親を亡くしたばかりのようで、いちばん理由がはっきりしています。でも不思議ちゃんには違いない。そんな不思議ちゃん3人が切り盛りする「かもめ食堂」は、徐々にお客さんが入り始めて、最終的には結構繁盛します。だいたいそんな話で、明確な結論のようなものはなくて終わります。誰も日本に帰りません。


もちろん途中でお客さんや、前のオーナーとのかかわりやちょっとした事件は起こります。すぐに解決する、日常のなかのちょっとした事件です。フィンランドの人も日本人のように悩んでいるんだねと当たり前のことをミドリが言うシーンがありますが、本当に当たり前だけどちょっとしみじみしました。


とにかくサチエのキャラクターが素敵です。凛として美しく、あたたかく、そして自立している。その佇まいとヘルシンキの街並みがマッチしていて、そこがこの映画の醍醐味だと思います。ある意味、うらやましい人生のような気もします。もちろん彼女のような強さがなければ成り立たない人生だと思いますが…。


ストーリーを追うのではなく、たまに観てみたい。途中からでも途中で終わっても、あの雰囲気を観たい、そんな作品でした。

moshimo


絶対観た方が良いとか、観て本当に良かったな…と思うには、やや小品なのと、テーマが平凡なのが残念。あと、ラストのオチも正直いただけない感じ。全体としてはおもしろかったのだけど。


『もしも昨日が選べたら』  フランク・コラチ監督 アダム・サンドラー主演


ストーリーは、仕事優先の2児の父マイケル(アダム・サンドラー)がある日深夜のホームセンターで、怪しげな万能リモコンを手に入れる。そのリモコンは、電化製品だけでなく、他人や動物、自分の人生も操作できる。人生は出世し、金とある程度の自由を手にすることが幸せへの近道であり、家族も幸せにできると思い、生き急いでいる。だからそのリモコンを手に入れたマイケルは、深い考えなしにわずらわしい日常の細々としたことを早送りしてしまう。風邪をひいた時や、親族での食事会など、最初は短い時間のことだったが、徐々に仕事の成功や出世までの時間を早送りする。ところがこのリモコンは、巻き戻しはできないうえ、学習能力に優れていて、同じシチュエーションになると自動的に早送りしてしまう。例えばさらに風邪をひくと、また時間が飛んでしまう。だから時間が猛スピードで進んでいく。


ただ、それはあくまでマイケルだけに起こっていることで、他の人は普通の人生のスピードを送っている。だからマイケルの知らないことが勝手に起こっている。早送り中はマイケル自身も自動操縦で動いている。


結局は人生をおろそかに、人間関係は希薄に冷たくなり、自制心はなくなり、やがて家庭は壊れ、健康を害する。父親を冷たく突き放したまま、喪ってしまう。


テーマは明確だ。家族との時間、ふれあい、慈しみの大切さ。ムダな時間、わずらわしいことも含めて人生には濃密さが必要だということ。そして健康であることの価値、健康を守ることの責任。それは本当にストレートに伝わってくる。ただ、ちょっと主人公のキャラクター設定が子どもっぽすぎて、気持ちが入り込めない。後はラストのオチで気がそがれる。それでも概ね気軽にみられていい作品だと思うが、DVDで観ても良かったかなと思う。

名もなき毒

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宮部 みゆき
名もなき毒

宮部みゆきさん久々の現代ミステリーの刊行でよく売れているよう。


さすがの筆力と安定感は、いまの日本のミステリー作家のトップクラスには違いない。ちょっとどこかで読んだような印象があったのは、おそらく狂言回しとなる主人公(財閥のお嬢様をもらったけれど、なぜか役職にすらついていない社内報編集者)が何度か出ているからだと思う。


今回の作品は、無差別毒殺事件に端を発し、日常生活に転がっている社会の毒をテーマにストーリー展開したものだ。その毒の多くは、人間の心の中にある毒だが、土壌汚染の話もエッセンスとして交えられている。単なる謎解きではなく、人間の深層心理に迫った社会派ミステリーになっている。


おもしろくて一気に最後まで読んだので、基本的には批判する気持ちはないのだけど、人間描写に関してはもう少し優しさや救いがあっても良いのではないかと思う。特にトラブルを起こす女性アシスタントの描き方、犯人の描き方は、ちょっと気持ち悪くなってくる。確かに不幸だから、理由があるから、こういうことをするようになったという背景を描いていて、そういう意味では救いがないというのはちょっと違うと思うが、何だか同情ができない。つまり人間が弱すぎる。その弱い人間が反動で凶行に転じるというのが私の気持ちの中でうまくつながらない。それは自分に強さが残っているからかもしれないけれど…。


犯人と被害者の間に本当の人間関係や憎しみの伴わない犯罪は怖い。その怖さを感じたければ、この作品は秀逸だと思う。ただ、エンターテインメントとしては暗さ、後味の悪さも少し残ってしまう。これはもはや好き嫌いの範疇かもしれないが、私はもう少し作品に温かみがほしい気がする。もしかしたらそう感じる根っこは、この変な境遇の主人公にあるのかもしれない。私は彼に人間味を感じない。そもそも事件にかかわる必然性が希薄すぎる。この人を素人探偵として、シリーズ化しないほうが良いと思う。

ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
デスパレートな妻たち シーズン1 DVD Complete Box

「SEX AND THE CITY」 の主婦版と言われて前評判が高かった『デスパレートな妻たち』 を観た。


描かれているスタイリッシュな世界観にとどまらず、サスペンスフルな展開が話題で、ここが肝という感じ。主要人物、4人中3人専業主婦だが、性格や背景の住み分けがしっかりしているので、誰に共感できるかということも興味深い。


郊外の閑静な住宅街が物語の舞台で、生活水準はみなさん高め。実業家の妻・ガブリエルは元モデルで、お手伝いさんや芝刈りを雇っていていちばん金持ち。普通の広告代理店の一般的な能力のだんなを持つリネットも、子どもたちがヤンチャすぎるのと本人が嫉妬深いのが災いしてなかなかうまくはいかないが、シッターを雇えるレベルにはお金持ち。あとは、完全主義者のカリスマ主婦的なブリー、離婚をして娘1人を育てている絵本作家のスーザン…。本当はもう一人の主婦メアリー・アリスの5人が仲良しだったのだが、シーズンⅠの冒頭でメアリーは自殺し、いきなり亡霊にようになってしまう。この事件をきっかけに、4人が真相を解明しながら、それぞれのドラマチックな生活を送っていくというもの。もちろん死ぬのはメアリーだけでなく、近所で放火やひき逃げ、殺人事件などが起こる。でもそれぞれの犯人は基本的にちゃんと描かれていて、そこにあまり謎はない。基本的には最初の自殺と、近所の口やかましいオバサンの死がつながっていて、この部分がこのドラマの大きな謎。これは一応シーズン1の最終エピソードで解明される。


最初ちょっとわかりにくい、面倒くさい話だなと思っていたが、個々の人物に思い入れが出てくるとおもしろさが増す。サスペンスとして観てもあまりおもしろくない。個人的にはガブリエルとスーザンは、いまひとつ魅力不足。おもしろいのはリネットとブリー。リネットは元キャリアウーマンなのに、結婚して子どもを4人も次々とつくり、奮闘しているのだが、驚異的に嫉妬深い。挙句に最後にはだんなを退職に追い込んでしまうのだから、並外れている。頭がいいので、策を弄するのだが、ちょっとずつズレた方向におさまってしまう。ブリーも完璧を求めすぎて家庭を崩壊させるのだが、それでもダンナの離婚の申し出を機に少しずつ変わっていく。ダンナの求めに応じてSM行為にマジメに取り組んでみたり彼女なりに必死だ。


とにかく気軽に観るには良い作品。24のように手に汗握る展開はなく、LOSTのようにシーズンⅠが終わった後の消化不良感もない。適当にシーズンⅡも観てみたいと思える程度の軽いつくりで、いかにも女性向けというのは否めないが、それが不快でない人にはおすすめです。

僕たちの戦争

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荻原 浩
僕たちの戦争

ドラマでもやっていましたが、文庫本になったのを機に読んでみました。著者の萩原浩さんは『明日の記憶』 での著者でもあります。元広告代理店ということが影響しているのでしょう。「明日の記憶」では主人公が、今度は現代描写のほうのお父さん・勝利が広告代理店勤務です。まあ、それはともかく、在職中はCMでもつくっていたのでしょうか?表現がやや映像的で、そして深みが少し足らない。これが前作と共通する欠点です。でも発想がわかりやすくておもしろい。あと戦争時代のことはよく調べられていると思います。もちろんマニアな人には物足りないかもしれないですが、普通の人には十分です。


ストーリーは昭和19年の若い軍人(飛行訓練生)・石場と、21世紀のフリーター・健太がある日突然タイムスリップで入れ替わる。姿かたちはそっくりなので、どちらの時代でもまわりに受け入れられます。石場はマジメな軍国少年。健太は今の時代だとわりと普通のフリーター。茨城県在住で居酒屋で働いたりしています。すぐ仕事をやめたりはするけれど、特別尖がっているわけでも、ニートに限りなく近いわけでもなく、しっかりミナミという短大生の彼女もいます。入れ替わりやすいギリギリの線の人物描写かもしれません。石場も健太もそれぞれの時代で戸惑い、元の時代に戻りたいという気持ちは同じです。でも時間と共に、それぞれの時代に溶けこんでいく。時代や環境が異なるだけで、人間そのものは普遍であるということでしょう。


そしてやがて終戦を迎えて、この小説は終わります。


ストーリーには隙がなく、またわかりやすいのであっという間に楽しく読めます。ただ、時代ごとの描写が表層的で、もう少し異なる時代に投げ出された二人の悲しみや戸惑いを知りたかった。19歳の男の子を主人公にしてしまったので、この程度かなと思わくもないけれど、確かにこれ以上歳をとると、時代変化を受け入れがたくて自殺してしまうかもしれません。そういう意味でも19歳男の子は絶妙の選択だったかも…。あとは書きぶりでしょうか?考えてみれば「明日の記憶」は、中高年層の話でしたが、それでもやっぱり軽めでした。深みのある小説の好きな方にはおすすめできませんが、普通の映画・ドラマファンがたまには小説も、という時には良いかもしれません。