ドライブ・マイ・カー | p・rhyth・m~映画を語る~

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英題:Drive My Car
監督:濱口竜介
キャスト:西島秀俊/三浦透子/霧島れいか
配給:ビターズ・エンド
公開:2021年8月
時間:179分




今夜は,一昨日発表された第45回・日本アカデミー賞で8冠を達成した『ドライブ・マイ・カー』を紹介。カンヌ国際映画祭で日本映画初となる脚本賞を受賞した他,海外の映画賞で高評価を集め,第94回アカデミー賞でも日本映画史上初となる作品賞をはじめ4部門でノミネートされたが,日本アカデミー賞でのこれほどの独占は正直予想外だった。

原作は,村上春樹の短編集『女のいない男たち』に収録されている短編。タイトルはビートルズの『ドライブ・マイ・カー』から付けられたという。短編集『女のいない男たち』に収録の『シェエラザード』『木野』の内容や,19世紀ロシアの作家アントン・チェーホフの戯曲『ワーニャ伯父さん』の台詞を織り交ぜた新しい物語として構成し,監督したのが商業映画3作目となる濱口竜介。

舞台俳優で演出家の家福悠介(西島秀俊)は,妻の音(霧島れいか)と穏やかで満ち足りた日々を送っていた。かつて幼い子を亡くした夫婦の間には,2人だけの習慣があった。ひとつは,音が相手役の台詞部分だけを録音したカセットテープを家福が愛車“サーブ900ターボ”で流し,自分の台詞を合わせながら台本を身に染みこませること。もうひとつの習慣は,夫婦のセックス中に音が語る物語を家福が書き留め,音の脚本作りに活かすことだった。

ある日,妻の情事を目にした家福だったが,そんな夫婦の生活を守ることを優先させ秘密にする。しかし,思いつめた様子で「帰宅したら話したいことがある」と言った音がその夜,クモ膜下出血で倒れ,帰らぬ人となるのだった。

2年後,国際演劇祭で『ワーニャ伯父さん』の演出を任された家福は広島へ向かい,寡黙な専属ドライバー渡利みさき(三浦透子)を雇うことに。やがて様々な国から集まったオーディション参加者の中に,かつて音から紹介されたことのある俳優・高槻耕史(岡田将生)の姿を見つける家福だったが…。

世界的にファンの多い村上春樹の原作から,物静かなトーンや,淡々とした語り口を引き継ぎつつ,表面的に穏やかでも水面下ではザワつく物語の味わいを,濱口監督独自の演出で魅せる。愛車と妻の声のテープが,心情や状況をなぞるように響き,そこに舞台『ワーニャ伯父さん』と高槻が絡んでいく。ドライバーのみさきが決して目立たず,家福の心に入り込み,彼を自らの運命に向き合わせていく。“ツウ好み”で“外国人ウケ”のする作品で,ドキュメンタリーとフィクションの関係や,コミュニケーションの真の意味をテーマとする傑作。

ただ,娯楽作品に飢えている日本人には,若干退屈で長いかな? と,日本アカデミー賞でこれほどの評価は想定していなかった。濱口竜介に初の最優秀脚本賞&最優秀監督賞,西島秀俊にも初の最優秀主演男優賞をもたらしたこの作品。本家アカデミー賞では『おくりびと』(2008年・松竹)以来となる国際長編映画賞を受賞した。


映画クタ評:★★★★


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