家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。 | p・rhyth・m~映画を語る~

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監督:李闘士男
キャスト:榮倉奈々/安田顕/大谷亮平
配給:KADOKAWA
公開:2018年6月
時間:115分




明治〜大正時代の文豪・夏目漱石が作家デビューする前,英語教師をしていた時に,“I love you.”を「我君を愛す」と訳した生徒に「“月が綺麗ですね”とロマンチックに訳せ」と教えたという逸話は有名だ。 この「月が綺麗ですね」とセットでよく紹介させるのが,同時期に活躍した二葉亭四迷が,ロシアの文豪ツルゲーネフの『片恋』を翻訳する際に用いた「死んでもいいわ」という応答。当時の日本人の奥ゆかしさが感じられて好きなエピソードだ。

さて,今夜紹介するのは“Yahoo!知恵袋”の投稿から生まれた話題のコミックエッセイを,榮倉奈々&安田顕の主演で映画化した『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』。漱石と四迷の文学ロマンを織り込みハートフル・コメディに仕上げたのが,ドラマ,アニメ,映画,舞台など,幅広いジャンルの脚本を手掛ける坪田文。監督は『デトロイト・メタル・シティ』(2008年・東宝)『神様はバリにいる』(2015年・ファントム)の李闘士男。

飲食店は,1年目でおよそ25%が潰れ,3年目で50%が駄目になるという。これは結婚にも似ていると思う中年サラリーマンの加賀美じゅん(安田顕)。前妻は,結婚3年目でいきなり家を出て,そのまま離婚。今の妻・ちえ(榮倉奈々)と再婚する時にじゅんは「3年が経ったら,これからも結婚生活を続けるか互いの意思を確認する」と決めていた。そんな結婚3年目が近づいてきているある日。

じゅんが仕事から帰宅すると,玄関でちえが血を流して倒れていた。じゅんはあわてて介抱するが,その血はケチャップで,ちえは死んだふりをしていただけだったのだ。理由は何も言わず,ただ笑うだけのちえ。それ以来,ワニに食われる,銃で撃たれる,頭に矢が刺さっているなど,毎日のように死んだふりをする妻に,じゅんは呆れながらも次第に不安を覚えるようになっていくのだったが…。

夫婦ってよく判らないけど,榮倉奈々が妻だったら仕事なんか行かないだろうし,ちえが妻だったら個人的にはノリまくるだろう。とにかく,ちえのキャラが素晴らしい。

2人の物語に,じゅんの後輩・佐野(大谷亮平)とその妻・由美子(野々すみ花),上司の蒲原(浅野和之),クリーニング店主・横山(品川徹)ら,作品を見るどの世代の既婚者にも当てはまる様々な夫婦の愛の形を絡ませながら,2人の距離を徐々に近づけていく構成が心憎いほど。

死んだふりをしている妻の理由,あなたはどう解釈する?


映画クタ評:★★★★


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