蜜蜂と遠雷 | p・rhyth・m~映画を語る~

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監督:石川慶
キャスト:松岡茉優/松坂桃李/森崎ウィン
配給:東宝
公開:2019年10月
時間:118分




原作は,2017年に史上初となる直木賞&本屋大賞のW受賞を果たした恩田陸のベストセラー小説。構想から12年,取材11年,執筆7年とされる,ピアノコンクールを舞台に,人の才能と運命,そして音楽を描き切った累計発行部数134万部を超える青春群像小説だ。“文章で音の世界を表現した”と評価されるこの傑作の映画化には,個人的にかなり興味があった。監督は『愚行録』(2017年・ワーナー)の石川慶。

3年に一度開催され,若手ピアニストの登竜門として世界から注目を集める“芳ヶ江国際ピアノコンクール”。審査員には有名なピアニストの嵯峨三枝子(斉藤由貴)や,その元夫でマサル・カルロス・レヴィ・アナトール(森崎ウィン)の師匠出であるナサニエル・シルヴァーバーグ(アンジェイ・ヒラ)も顔を揃えている。ピアノの天才たちが集う予選会には,かつて天才少女と言われ,その将来を嘱望されていたが,7年前,母親の死をきっかけに表舞台から姿を消していた栄伝亜夜(松岡茉優)の姿もあった。再起をかけ,自分の音を探しにコンクールに挑む彼女はそこで,3人のコンテスタントと出会う。

岩手の楽器店で働くかたわら,夢を諦めず“生活者の音楽”を掲げ,年齢制限ギリギリで最後のコンクールに挑むサラリーマン奏者・高島明石(松坂桃李)。幼少の頃,亜夜と共にピアノを学び,今は名門“ジュリアード音楽院”に在学し,人気実力を兼ね備えた優勝大本命のマサル。そして,今は亡き“ピアノの神様”ホフマンの推薦状を持ち,突如として現れた謎の少年・風間塵(鈴鹿央士)。国際コンクールの熾烈な戦いを通し,ライバルたちと互いに刺激し合う中で,かつての自分の音楽と向き合うことになる亜夜だったが…。

ピアノ好きなら間違いなくハマる! 穏やかに進むストーリーと,演奏シーンでの激しい熱量の放出の対比が素晴らしい。4人の天才ピアニストたちの誰に感情移入するかによって,作品全体の景色が全く変わって見えてくるのも興味深い。

タイトルの『蜜蜂と遠雷』の意味は,実は小説を読んでも掴みにくいが,ソコもまた魅力の1つ。小説版では,野性的な演奏から,出場後に風間塵が“蜜蜂王子”と呼ばれるようになると触れられているので“遠雷”はホフマンを思わせるが,映画版では,英語のbee(蜜蜂)の持つ「競技会」の意味の比喩にもとれ,“遠雷”は作品テーマでもある,“世界(自然)の音を聴き,それを奏でる者”とも解釈できる。これもまた,見る者の愉しみの1つとなっていく。

共演は他に,臼田あさ美,ブルゾンちえみ,片桐はいり,光石研,平田満,鹿賀丈史 など。第43回日本アカデミー賞では最優秀録音賞を獲得している。


映画クタ評:★★★★


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