ミュンヘン | p・rhyth・m~映画を語る~

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原題:Munich
監督:スティーヴン・スピルバーグ
キャスト:エリック・バナ/ダニエル・クレイグ/キーラン・ハインズ
配給:ユニバーサル/アスミック・エース
公開:2006年2月
時間:164分




『シンドラーのリスト』(1993年・ユニバーサル)と『プライベート・ライアン』(1998年・パラマウント)で第二次世界大戦の側面を描いてみせたスピルバーグ監督。リアルな映像にするため,時にグロテスクな描写も厭わない。今夜紹介する『ミュンヘン』も,日本公開時にはPG-12のレイティングの付いた作品。原作はジョージ・ジョナスのノンフィクション小説『標的(ターゲット)は11人 モサド暗殺チームの記録』。

1972年9月5日未明,ミュンヘンオリンピックの開催中,武装したパレスチナのテロリスト集団“黒い九月”がイスラエルの選手村を襲撃。最終的に人質となったイスラエル選手団の11名全員が犠牲となる悲劇が起きた。これを受けてイスラエル政府は犠牲者数と同じ11名のパレスチナ幹部の暗殺を決定。諜報機関“モサッド”の精鋭5人による暗殺チームを秘密裏に組織する。

リーダーに任命されたのは,愛国心あふれるアヴナー(エリック・バナ)。妊娠中の妻にも事情を話せないまま,彼は命令に従うことを決める。上官エフライム(ジェフリー・ラッシュ)の指示のもと,アヴナーはヨーロッパに渡り,車輌スペシャリストのスティーヴ(ダニエル・クレイグ),後処理専門で年長者のカール(キーラン・ハインズ),爆弾製造のロバート(マチュー・カソヴィッツ),文書偽造専門のハンス(ハンス・ツィッシュラー)と共に,ヨーロッパ中に点在するターゲットを確実に仕留めるという冷酷な任務の遂行にあたるのだったが…。

スピルバーグ監督の実話系作品は,戦争やテロを国家や政治の視点で俯瞰的に見下ろすのではなく,主人公たちの視点で,ひとつひとつの死を見る者に生々しく体験させる。目を伏せたくなるようなシーンさえ,人間が犯してきた現実なのだと訴える。テロと報復の悪循環は,死と心の傷以外に何も残さないのだ。

後半の,モサッドとPLOメンバーが偶然に同じアジトで一夜を共にするシーンでラジオから流れるアル・グリーンの『Let's Stay Together」や,ラストにCG再現され,まるで墓標のように映し出される世界貿易センタービルが,スピルバーグ監督の静かなメッセージを伝えている。


映画クタ評:★★★★


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