ツナグ | p・rhyth・m~映画を語る~

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監督:平川雄一朗
キャスト:松坂桃李/樹木希林/佐藤隆太
配給:東宝
公開:2012年10月
時間:129分




たった1度だけ,死者との再会が叶うとしたら,誰に会いたい? 言い残したこと,伝えきれなかったことを互いに交わせたとしたら,そこで昇華できるものって計り知れないのではないだろうか。

今夜はそんな死者との面会を繋ぐ,“使者(ツナグ)”と呼ばれる者と,仲介を依頼する3組の,切なく感動的な再会の物語を紹介。原作は辻村深月のベストセラー小説で,第32回吉川英治文学新人賞受賞作。監督は『ROOKIES -卒業-』(2009年・東宝)や『僕だけがいない街』の平川雄一朗。

“使者(ツナグ)”とは,たった1人と1度だけ,死者との再会を叶えてくれる案内人。そんな都市伝説のような噂にすがって依頼してきたのは,癌で亡くなった母・ツル(八千草薫)との再会を願う中年男性・畠田靖彦(遠藤憲一)。しかし彼の前に現われたのは,ごく普通の高校生・渋谷歩美(松坂桃李)。彼は,祖母のアイ子(樹木希林)から“ツナグ”を引き継ぐ途中の見習いだった。

そんな歩美のもとにはさらに,喧嘩別れしたまま事故死してしまった親友・御園奈津(大野いと)に会いたいという女子高生・嵐美砂(橋本愛),7年前に突然失踪してしまった恋人・日向キラリ(桐谷美玲)の安否を確かめたいサラリーマン・土谷功一(佐藤隆太)が依頼を持ち込んでくる。その過程で様々な疑問を抱く歩美。死者との再会を望むことは,生者の傲慢なのではないか? 会いたかった死者に会うことで,生きている人たちは救われるのか? やがてその疑問は,歩美の両親の不可解な死の真相にも向けられていくのだったが…。

生きている者にはいつか必ず“死”が訪れる。しかし,死んだからといって生きている者との繋りが無くなる訳ではなく,残された者は先立った者に“生かされ,見守られている”。宗教観ではなく人生観として,そう穏やかに語ってくれる1本。

エンドロールと共に樹木希林の朗読する1篇の詩は,上智大学学長も務めたヘルマン・ホイヴェルス神父(1890-1977)がドイツに帰国後,友人から贈られたもの。樹木希林の亡くなった今,一段と深く心に沁みてくるこの『最上のわざ』の朗読部分を,最後に紹介しておこう。

この世の最上のわざは何?
楽しい心で年をとり
働きたいけれども休み
喋りたいけれども黙り
失望しそうな時に希望し
従順に平静に己の十字架をになう

若者が元気一杯で
神の道を歩むのを見ても妬まず
人の為に働くよりも
謙虚に人の世話になり
弱って も早 人の為に役立たずとも
親切で柔和であること──

老いの重荷は神の賜物
古びた心に これで最後の磨きをかける
まことのふる里に行くために──



映画クタ評:★★★★


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