かぐや姫の物語 | p・rhyth・m~映画を語る~

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英題:The Tale of the Princess Kaguya
監督:高畑勲
キャスト:朝倉あき/高良健吾/地井武男
配給:東宝
公開:2013年11月
時間:137分




今月5日に82歳で他界した高畑勲監督を偲び,今夜は予定を変更して,監督としての遺作となった『かぐや姫の物語』を紹介。

1985年に宮崎駿にスタジオジブリ設立を提案したといぅ高畑勲。ジブリに所属しながらも一貫して“作り手”としてのスタンスを保ち,『火垂るの墓』(1988年・東宝),『おもひでぽろぽろ』(1991年・東宝)などの名作を世に出してきた。そんな高畑監督が,日本のアニメ映画としては破格ともいえる,企画から8年の歳月と50億円を超える製作費を投じて作り上げたのがこの作品。アニメーターの描いた線を生かした手書き風の“一枚絵が動く”ような独特の技法で,日本最古の物語文学『竹取物語』を描いた長編ファンタジー・アニメーションだ。

昔,山里に竹を取って暮らす翁(地井武男)と媼(宮本信子)がいた。早春のある日,翁は山で光り輝くタケノコの中に掌に収まるほどの姫を見つけ,自宅へ連れ帰る。姫はその日のうちに人間サイズの赤子の姿へと変わり,翁と媼によって“天からの授かりもの”として育てられる。赤子の姿になった直後から生育が速く,半年余りで少女へと成長した姫(朝倉あき)は,捨丸(高良健吾)ら村の子どもたちから“タケノコ”と呼ばれ,自然の中で遊びながら天真爛漫に育つ。

一方,光る竹から黄金や豪奢な衣を授かった翁は,“天が姫を立派に育てよと命じている”と考え,“高貴の姫君に育て貴公子に見初められることが姫の幸せ”だと,秋になると都に移り住み,宮中から女官の相模(高畑淳子)を招いて教育することに。そうして美しく成長した娘は“かぐや姫”と名付けられる。やがて姫の美しさを聞きつけ,車持皇子(橋爪功),石作皇子(上川隆也),阿部右大臣(伊集院光),大伴大納言(宇崎竜童),石上中納言(古城環)ら5人の求婚者が現われるのだったが…。

宮本信子による『竹取物語』の冒頭部分の朗読から始まるオープニングは,絵が動き出すのに従い,それぞれのキャラが自らの意思をもって紡ぐ物語へと移行してゆく。それは物語の挿し絵が,読み手の意識の中で動き出し,ストーリーを映すような感覚で,見る者を作品世界へと誘う。オリジナルに最大のリスペクトを払いながら,原作にはない姫の子供時代の暮らしなども,季節の変化を背景に生き生きと描かれてゆく。

かぐや姫は何のために地球にやって来て,なぜ月に帰るのか? という物語の核の中で明らかになるのは,地球に憧れてしまった姫の“罪”と,その姫が地上に下ろされた“罰”。しかしそこには同時に,純潔で清浄な月世界から見ると,感情や欲望などに満ちている人間界は“罪”だが,そこに住む人間にとってはかけがえのない世界で,その罪や穢れも含めて現世を肯定しようとする監督のメッセージが浮かび上がってくる。

なお,作品中で歌われる「わらべ唄」も高畑監督の作詞・作曲となるオリジナル。いつまでも脳裏を離れない,印象的でどこか懐かしく,心に沁みてくる唄だ。


映画クタ評:★★★★


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『かぐや姫の物語』
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