キャスト:吉岡秀隆/萩原聖人/南里侑香
配給:コミックス・ウェーブ
公開:2004年11月
時間:91分
4夜連続で,新海誠監督作品を紹介。大学卒業後,実家の営むゼネコンの4代目の座を断り,ゲーム会社に入社。その後退社し,2002年に,監督・脚本・演出・作画・美術・編集など,ほとんどの作業を1人で行った約25分のフルデジタルアニメ『ほしのこえ』(MANGAZOO.COM)が,下北沢のミニシアターで劇場公開される。その好評価を受けて,2004年に公開された,新海監督初の長編アニメ作品がこの『雲のむこう、約束の場所』。ボイスキャストとして吉岡秀隆や萩原聖人が参加している。
日本が南北に分断された,もう1つの戦後の世界。日本は津軽海峡を挟んで南北に分断されていた。米軍統治下の青森に暮らす2人の少年,藤沢浩紀(吉岡秀隆)と白川拓也(萩原聖人)は,同級生の沢渡佐由理(南里侑香)に憧れていた。彼らの瞳が見つめる先は彼女と,もうひとつ,津軽海峡を走る国境線の向こう側,共産国家群“ユニオン”占領下の北海道に建設された,謎の巨大な“塔”。視界にくっきりとそびえるその白い直線は,空に溶けるほどの高みまで遥かに続いていた。いつか自分たちの力であの“塔”まで飛ぼうと,軍の廃品を利用し,山中の廃駅跡で小型飛行機を組み立てる浩紀と拓也。佐由理も“塔”も,今はまだ手が届かないもの,しかしいつかは触れることのできるはずのものだと,2人の少年は信じていた。
ところが中学3年の夏,佐由理が突然東京に転校してしまう。虚脱感に襲われた2人は,いつしか飛行機作りも投げ出してしまい,高校進学を境に別々の道を歩み始める。3年後,拓也は政府諮問の研究施設に身を置き,佐由理への憧れを打ち消すように“塔”の研究に没頭していた。一方で目標を喪失したまま,言葉にできない孤独感に苛まれながら,東京で一人暮らしを送る浩紀は,いつからか頻繁に佐由理の夢を見るようになるのだった…。
少年少女の頃に誰もが感じていた“青春の夢”,そして成長と共に知る“喪失と再生”。そんな青春の光が,SF色の強いストーリーに浮かび上がる。限りなくリアルな風景を切り裂くような“塔”が,独特の世界を象徴する。近づくほどに広がる異次元は,終盤に怒濤のごとく押し寄せて,見る者を引き込んでゆく。
粗削りだが美しく,やがて『君の名は。』へと繋がる,初期の“新海ワールド”を創世し代表する1本と言える。
クタ評:★★★★☆
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