キャスト:堺雅人/高畑充希/堤真一
配給:東宝
公開:2017年12月
時間:129分
今夜紹介するのは『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズでVFXを駆使し,昭和の懐かしい時代を完全再現した山崎貴監督が,同じ原作者・西岸良平の30年読み継がれる累計発行部数1000万部のベストセラー『鎌倉ものがたり』を実写化したハートフル・ファンタジー・コメディ。都合がつかず年末にようやく観ることができたので,ひと月遅れの紹介となってしまった。
鎌倉。ここは,魔界や黄泉の国の間で,生者と死者の思いが交錯する都。人間ばかりでなく,幽霊や物の怪,魔物に妖怪,神様,仏様,死神(安藤サクラ),貧乏神(田中泯)までもが住んでいる。そんな鎌倉に暮らすミステリー作家・一色正和(堺雅人)の元に,若い女性・亜紀子(高畑充希)が嫁いでくる。しかし亜紀子は,あちこちに人ならざる者がいるような,おかしな気配を感じていた。正和と亜紀子が道を歩いていると,その前を何かが通り過ぎる。ムジナか河童か? と驚く亜紀子に,正和は「鎌倉は何千年も昔から妖気が溜りに溜まっていろいろな怪奇現象が起こるけれども,ここでは普通のこと,すぐに慣れる」と言う。
執筆のかたわら,犯罪研究の腕も買われた正和は,迷宮入りしそうな事件が起きると,大仏署長(國村隼)の要請で稲荷刑事(要潤)ら警察の捜査にも協力していた。事件には魔物や幽霊までが関わっていて一筋縄ではいかなかったが,心霊捜査にも精通する正和は,名探偵でもあった。
一色家には,実年齢130歳(?)の家政婦・キン(中村玉緒),腐れ縁の編集担当・本田(堤真一),果ては貧乏神など,個性豊かな面々が次々に現れ騒がしい日々。亜紀子の理想とはちょっと違ったが,楽しい新婚生活が始まっていた。そんなある日,亜紀子が不慮の事故で亡くなり,魂が黄泉の国へと旅立ってしまう。正和は魔物に連れ去られた亜紀子を取り戻そうと,江ノ電に乗って自らも黄泉の国へと向かうのだったが…。
前半の,どこか懐かしいのに不思議な空気の漂う昭和40年辺り(?)の鎌倉はもちろん,後半の舞台となる,まるで『千と千尋の神隠し』の“神々の世界”を実写化したような黄泉の国の見事な描写には息を呑まされる。これまで和製ファンタジーを牽引してきたアニメの地位さえ危うくするほどの映像だ。もちろん,作品として成立するためには実写化されたキャラの魅力にかかる部分が大きくなるわけだが,ユーモラスで真っ直ぐな熱を持つ正和と亜紀子の夫婦を中心に描かれる様々な形の“愛”は,後半で明らかになる“DESTINY(運命)”の意味へと導き,一見ベタなストーリーに深みを与える。
共演は他に,ムロツヨシ,大倉孝二,鶴田真由,薬師丸ひろ子,吉行和子,橋爪功,三浦友和など豪華。また,古田新太もボイスキャストとして参加している。宇多田ヒカルの『あなた』が包み込むエンディングまで,飽きさせず充たしてくれる1本だ。
クタ評:★★★★☆
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