E.T. | p・rhyth・m~映画を語る~

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原題:E.T. The Extra-Terrestrial
監督:スティーヴン・スピルバーグ
キャスト:ディー・ウォレス/ヘンリー・トーマス/ロバート・マクノートン
配給:ユニバーサル映画/CIC
公開:1982年12月
時間:115分




舞台設定はハロウィンの頃なのだが,何だか年末が近くなると毎年見てしまう1本。今年の【くた★むび】納めに,そんな,せわしく,尖りがちな師走の心を洗濯し柔軟剤のように和らげる作品を紹介しようと思う。

ジュラシック・パーク』をはじめ,常に最新の特撮技術で多くの“夢”を観せてくれたスピルバーグ監督だが,どの作品も不思議と古さを感じさせない。この『E.T.』も,公開から34年を経て名作として褪せることがないのは,SFX映画として作られたものでないからだろう。ILM(Industrial Light & Magic=ジョージ・ルーカスが『スター・ウォーズ』を製作時に開設した特殊効果の制作会社)の当時の最新技術は使っているが,SFXを誇示するような撮り方はされていない。例えば,アンブリンのロゴとして有名な,主人公エリオットがE.T.を自転車の前カゴに乗せて空を飛ぶシーンの背景の月は本物。別撮りした自転車が合成されている。敢えて手間をかけて“本物”を使うことで,そこに“人の温もり”と“リアル”を感じさせる辺りが,他の監督との徹底的な感性の違いではないだろうか。

森の中に静かに降り立つ異星の船から現れる宇宙人たち。だが彼らの地球植物の調査は人間たちの追跡によって中断される。宇宙船は急いで空に舞い上がるが1人の異星人が取り残されていた。

森林にほど近い郊外に住む10歳の少年エリオット(ヘンリー・トーマス)は裏庭でその異星人と遭遇し,彼をかくまう事にする。兄のマイケル(ロバート・マクノートン)と妹のガーティ(ドリュー・バリモア)を巻き込んで,E.T.と名付けられたその異星人との交流が始まり,やがてエリオットはE.T.と心が通い合うようになる。言葉を覚え,通信機を作って故郷の星に連絡をとろうとするE.T.。しかし,E.T.の存在を知っているのはエリオットたちだけではなかった…。

「両親の離婚で悲しむ少年を,特別な友達が救ってくれる物語を描きたかった」と,自身の子供時代をエリオットに投影させ“夢”を映像にしたスピルバーグ監督。また「70年代半ばに作った『未知との遭遇』が,いわばオリジナルで『E.T.』は続編なんだ」とも語っていた。多少突飛な展開があっても,これらの思いが場面から伝わり,見る者のツボを刺激する。

様々な老人の顔をベースに作り込まれたE.T.の顔。動物も含め18種類の音を合成した声。機械的ではないこれらの作業によって画面上に生きるExtra-Terrestrial(地球外生命体)だからこそ,いつまでも親しまれるキャラであり続けるのだろう。

ハロウィンのシーンでは,盟友ジョージ・ルーカスの『スター・ウォーズ』からヨーダが友情出演。返礼とばかりに『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999年・20cフォックス)では,惑星コルサントの会議場に3人のE.T.が座っていた。インタビュー時に嬉しそうに「映画界では宇宙は狭いからね」と語っていたスピルバーグ監督のユーモア感覚も,彼の魅力のひとつ。


映画クタ評:★★★★


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