サロゲート | p・rhyth・m~映画を語る~

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原題:Surrogates
監督:ジョナサン・モストウ
キャスト:ブルース・ウィリス/ラダ・ミッチェル/ロザムンド・パイク
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ
公開:2010年1月
時間:89分




今夜は,近未来のアンドロイドものの映画の中でも,ちょっと変わったヒトとの関わり方を描く作品を紹介。身体的接触が希少になった世界の危うさを痛感させられるSFサスペンスの秀作。監督は『ターミネーター3』のジョナサン・モストウ。

人間の身代わりロボット“サロゲート”が普及し,その常用が不可欠となった近未来。人間は外出せず,サロゲートとの媒介となるスティムチェアーから遠隔操作することで,実生活の全てをサロゲートに委ねていた。一方でサロゲート排斥運動を指導する予言者(ヴィング・レイムス)ら反対派による独立区も生まれる中,サロゲートの採用で犯罪や伝染病,人種差別が激減し,人類は理想的な社会を実現したのだった。だがある時,ほぼ完璧に安全なはずのこの社会で殺人事件が発生する。2体のサロゲートが破壊されただけでなく,持ち主(オペレーター)までが変死したのだ。事件を担当するのは,FBI捜査官トム・グリアー(ブルース・ウィリス)とジェニファー・ピータース(ラダ・ミッチェル)。彼らもまた自分たちのサロゲートを駆使し,捜査にあたる。グリアーはやがて,犯人が隠し持っていた武器から,事件とサロゲートの最大手メーカーであるVSI社との関連性を突き止めるのだが…。

アメリカで最も歴史の古い街の1つであるボストン。通りを行き交う人々や車。一見普通に見える街の風景だが,何だか違和感がある。妙に完全な肌と左右対称すぎる表情。そう,動いているヒトは全てサロゲートで,ブルース・ウィリスも若々しい金髪の分身姿で登場する。そしてこのサロゲートのブルース・ウィリスに感情移入できないもどかしさが,冒頭の30分,見る者にストレスを与える。実はこのストレスこそが,その後の生身のブルース・ウィリスに,より強く感情移入させるためのモストウ監督の計算。

ソフトの解説でモストウ監督は語る。
「映画にスターが必要なのには理由がある。スターは観客が繋がりを感じられる存在で,ウィリスにはその資質がある」と。

謹慎処分を受け,サロゲートを使えずに捜査を始める生身のグリアー。傷つき疲れながら,ユートピアに隠された殺伐とした真実を露にする彼に,見る者の意識が重なる。だからこそ終盤ではPC操作だけのシーンでさえ緊迫を伝え…言葉がないのに圧巻で,不思議に癒されるエンディングへと導く。

細かい設定は最低限に抑えられ,多彩に実験的なシークエンスを詰め込んで凝縮された1本。短めなので,SFものが得意でない人も,お試し感覚でチャレンジしてみては…?


映画クタ評:★★★★★


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