ローマの休日 | p・rhyth・m~映画を語る~

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原題:Roman Holiday
監督:ウィリアム・ワイラー
キャスト:オードリー・ヘプバーン/グレゴリー・ペック/エディ・アルバート
配給:パラマウント映画
公開:1954年4月
時間:118分




時々ランチに行くイタリアンの店内モニターに,いつも無音で流されているこの作品。60年以上前のモノクロ作品なのに,妙にインパクトのあるキャストやシーンが,名作たる所以だろうか。フッと,そんなことを考え,ずいぶん前に買ったきり多分1度しか見たことのないソフトを探し出した。

ヨーロッパ最古の王室の王位継承者,アン王女(オードリー・ヘプバーン)は,ヨーロッパ各国を表敬訪問中だった。強行軍にもかかわらず,元気に任務をこなしていた王女だが,内心では分刻みのスケジュールと,用意されたスピーチを披露するだけのセレモニーにいささかうんざり気味。最後の滞在国であるイタリアのローマで,ついにアンはヒステリーを起こしてしまう。その夜,宿舎である宮殿を密かに抜けだした王女は,直前に打たれていた鎮静剤のせいで道端のベンチでうとうとし始める。

そこに通りかかったのが,アメリカ人新聞記者のジョー・ブラッドレー(グレゴリー・ペック)だった。見かねて介抱されるうち,ジョーのアパートまでついて来て寝てしまう王女。翌朝になってアンの素性に気づいたジョーは,王女の秘密のローマ体験という特ダネをモノにしようと,職業を偽り,友人のカメラマンであるアーヴィング(エディ・アルバート)を誘い,王女を連れ歩くことに成功する。

美容院で髪を短くし,スペイン広場でジェラートを食べ,ベスパに二人乗りしてローマ市内を廻り,真実の口を訪れ,テヴェレ川でのダンスパーティーに参加する王女。永遠の都・ローマで自由と休日を活き活きと満喫するアン王女とジョーの距離は次第に近づいていくのだった…。

原題の『Roman Holiday』とは,ローマ帝国で,休日の娯楽として奴隷戦士をライオンと戦わせたことからできた言葉で「他人の迷惑を楽しむ」とか「おもしろいスキャンダル」の意味。奔放な王女の秘密のローマ体験と「ローマでの王女の休日」をダブル・ミーニングにした原題・邦題をはじめ,全編を通して,主人公たちのちょっとした動作や台詞にも2つの意味があったり,見かけと実態が異なるというダブル・ミーニングが頻発する。この仕掛けこそが,いまだにファンやマニアを魅了する部分なのだろう。

オンタイムを知らない人生のヒヨっ子としては,残念ながらストーリーに面白味を見出だせず,断片的に見た時ほどのインパクトも感じられなかった。ただ,映画好きを公言する1人としては,作り手,見る者ともにまだ純粋であった時代を感じ取れたし,半世紀での映像技術と表現の進歩を改めて認識できた。比較対象として,50年後,100年後の“映画”に夢を馳せさせる作品ではあると思う。


映画クタ評:★★★☆☆


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