大滝詠一の小ネタ | kkのブログ

大滝詠一の小ネタ

特にファンという訳でもないのですが、ちょっと話題に出したので謎に満ちたミュージシャン、大滝詠一のことを少々。


あれは、8年位前のことですが、仕事で八王子インターから中央高速で甲府に向かっていた時のこと。もともとのベースはアメリカ軍用車の「ハマー」だと思うのですが、そのハマーにパラボナアンテナやらTVアンテナやら、その他得体の知れない装備が天井に満載された車と出くわしたことがあります。TV局の中継車にしては変だし、アメリカ軍や自衛隊の車両にも見えない。操縦席を見ようと思ったけど、スモークが張ってありよく見えない。よくよく見ると、天井についているパラボナアンテナやTVアンテナのベースは全てリモコン旋回台になっており、車内からアンテナの向きが変えられるようになっている。個人所有にしてはいくらなんぼでもという感じで、その異様な車体をシゲシゲと眺めていたのでした。


それから、おおよそ1年位たった、ある土曜日の午後。ラジオを何気なく聴いていると山下達郎が出ており、軽快にトークを彼独特の薀蓄で進めている。番組はサタデーソングブック?その中で、大滝詠一の話題が・・・。

「あの人は、車でもオーディオでも普通の人が考える範疇を完全に超越してしまっていますね。熱狂的巨人ファンは有名だけど、車だって正気の沙汰ではないですね。なんせ大滝詠一の車の天井には無数のキノコが生えているんですから!ハマーっていうアメリカ軍ご用達の車を改造し、屋根に無数のアンテナを立て、車内には中継車真っ青の映像機器と無数のビデオデッキをいれて、各地に行ってはその地方だけでしかやっていない放送を録画したりしているんですよ。そのビデオの数がまた尋常ではないんですから・・・。」

こんな内容だったと思います。これって、私が見たあの車のことだ!直感しました。あれが大滝詠一の車だったんだ。山下達郎の放送を聴いていた人はまあ、仲間内で面白可笑しく喋っているくらいにしか聞こえなかったと思うのですが、実際に実物を見てしまった私には、山下達郎が言いたいことが痛いほど伝わってきた。山下達郎は続けます。

「よく、大滝詠一ってどんな人って聞かれるんですが、説明のしようがないんですね。仮に3日間を説明の時間として頂けるとして、3日3晩、大滝詠一のことを語り尽くせば、おおよその大滝詠一の概要は伝えることが出来ると思うのです。ただ、それを聞き終えた人は必ずこう言うのです。”そんな人間いるわけない”って。だけど、本当にそれ全てが大げさでなく事実なのが、大滝詠一なんです。誰も信じないけど、大滝詠一ってのは、そういう人間なのですから仕方が無い。話し尽くしても誰も信じてくれない。だから大滝詠一のことは喋らない。そう決めているんです。」


普通の人から見れば山下達郎だって、そのマニアックなコダワリでかなり特異な人ですが、その山下達郎が、「あれは人間じゃない」と敬意を込めて吐き捨てる、それが大滝詠一なのです。あまりにものミステリアスな存在で、数々の伝説があるため関係者の間では「福生の仙人」とも呼ばれているそうです(大滝詠一は福生の住人)。


ヘッドホンコンサートを開催したり、ポップスとはとメディアに質問された時に、「A LONG VACATION」(大滝詠一の代表的アルバム)を聴けばポップスの全ての要素がわかると答えたりとか・・・。何かと伝説の多い人です。


ちなみに、オーディオ的に聴いても、1981年頃の録音では、ポップスの中では最高品質の録音のように思います。再販されるたびに最新技術でリマスタリングされていますが、最近になってちょっと音そのもの鮮度が落ちてきたかなあと。これはマスターの劣化のようなモノでどうしようもない。ただ、25年以上たった今でも、音楽的には古臭くなっていない。アレンジとしても第一級のクオリティです。内容は何時聴いてもスバラシイ!!若い人にも、聴いてもらいたいですね。今の音楽で、25年後に陳腐化せず聴きなおすことができるのが、どれほど存在するか。そういう聴き方で自分の感性を鍛える。オーディオマニアの自慢であり楽しみですね。


インナーイヤーヘッドホンでMP3等の圧縮メディアばかり聴いている人は、アナログレコードやCDを久しぶりに聴いてみて下さい。新鮮な感じがすると思いますよ。その際に選ぶ音楽にも気を付けて。新鮮な感じと聴きたい音楽がピタリと一致したとき、オーディオという趣味に目覚める人が一人くらい居ても良いのではと。


地道ですが、オーディオの復権を願っています。