4月29日付英国BBCの報道“Turning point in battle against IS?”(Mark Urban記)によると、イスラム過激派組織ISが大きく変質しているらしい。
http://www.bbc.com/news/world-middle-east-36161110

 上記記事は、ロンドンで開催されたアスペン・安全保障フォラムに出席した米国とフランス当局の高官の話を引用しつつ、今年に入って、米国が、IS潰しに舵を切ったことが好結果を生んでいると報じている。これは、ある意味では、朗報である。
 
 実は、昨年11月このブログで「野心、慢 心、暗黒の世紀」と題し、
1.反ISを明確にしたロシアのプーチンは正しい。
2.何故なら、ISの非道は、シリアのアサド政権の圧政以上に悪であるから。
3.アサドとIS双方を敵とする米欧政府の姿勢では、焦点がぼけてしまう。
との3点を指摘している。
 米国が本気でIS潰しに舵を切り、いわば結果的にせよ、米露合作が実りつつあることは、世界がより安全になりつつあるということで、喜ばしい。
 とかく大国の動きは、舵を切るまでに時間がかかり、一旦舵が切られると、なかなかあとに戻らない傾向がある。米国の煮え切らなさには、イライラしてきたが、米国は、衰えたりとは言え、やはり唯一の超大国なのである。今回は、その良い面が反映されていると見てよいのであろう。兎に角、最も危険で複雑な状況に1年経ずしてポジティブな効果が出てきたわけで、歓迎さるべきこと間違いない。

 米国防省が先週公表した記事資料によると、イラクとシリアに入った外国人戦闘員の人数は、1年前の1,500人~2,000人/月から約200人/月に大幅に減少しているとしている。昨年の十分の一である。
 また、時々誤爆もあるようだが、重要人物の狙い撃ちや、彼らの財源(石油資源等)の破壊工作も或る程度効果を挙げているようである。
 
 しかし、これで、イスラム過激派が消滅するわけではあるまい。積年の怨念と不満は、潜在意識にまで浸透し、非合理な意識と行動とに結びついているから、簡単には解消すまいと思われるからだ。冒頭で「ある意味では」とことわったのは、そのためである。
 そうなると、かれらとしては、中東で手強い米露相手に闘うよりも、欧州のソフトターゲットに対して自爆テロを仕掛ける方を優先するかも知れない。また、イラクやシリアが駄目なら、他の不安定な地域に、根城を変える可能性もあろう。
 暗黒の世紀とは言わないまでも、暗黒の時代は、少なくとも5年や10年は、形を変えて続きそうである。