「臣従ルール」と並び「不如帰」の特徴としてよく取り上げられるのが「マスクデータ」です。

従来のシミュレーションゲームではデータの膨大さを誇るように表示され、それを駆使するのが当たり前でしたが、「不如帰」では多くのデータ、特に武将の能力データに関しては一切表にすることをやめました。
この仕様は開発が始まるまで明らかにしていなかったので、ある程度プログラムができてくると「武将の能力が分からないとゲームの進めようがないのでは?」などの不満の声も上がりましたが、幸いにも仕様改変に至ることはなく商品化にこぎつくことができました。

当時はファミコン全盛期で、メディア容量やハードの表現性から、いま考えると信じられないほど構造が簡単なゲームが普通で、だからこそひとつひとつのアイディアに注目され、「不如帰」の「マスクデータ」もそのひとつとして取り上げられたのかと思いますが、いまそれをそのまま採用するのはどうでしょうか。

新作での「マスクデータ」問題はずいぶん前に重要な協議対象となりましたが、結果的にはその概念を踏襲しつつも、まったく新しい表現手段を採用しています。詳細は後日に譲らせていただきたいのですが、より生々しい人事を体験できるシステムであることは確かだと思います。

ところで、シミュレーションゲーム、特に史実テーマのそれにおいて、プレイヤーに提供するデータをどう取り扱うかはゲームデザイナーの作家性があらわになるもっとも大きな要素のひとつだと思っています。シミュレーションゲームに限らず、昨今商品性重視のデジタルゲームにおいて、その中に制作者の作家性が薄ら見えるというのは実に興味深いもので、開発者として思うところ多々あるのですが、それについてもまた別の機会ということで。